
これはAOR的には、なかなかのビッグ・ニュース。<Maniac>の大ヒットで知られるマイケル・センベロの86年2nd『WITHOUT WALLS』(A&M) が、3週間ほど前にこっそりCD再発されている。復刻させたのはオランダの再発レーベル:Music on CD。自分もこれまでA&Mの権利を持つユニバーサルで再発プロジェクトに参加する度にリクエストを出してきたが、今まで許諾が下りた試しがなく、あぁヤラレちゃったな、という感じ…。日本ではリリース直後にA&Mの配給契約が変わったため、短期間で2度CDが出たが、それ以降、基本的にリイシューされたことはない。しかも日本以外では未CD化で、ヨーロッパではブートCDが出回ったほど。オフィシャル再発はもちろん世界初で、オリジナルから38年ぶりのリイシューになる。
映画『FLASHDANCE』の挿入歌で全米No.1ヒットになった<Maniac>を含むソロ1作目『BOSSA NOVA HOTEL』から、レーベル移籍を挟んでおよそ3年。この『WITHOUT WALLS』は、センベロの偏執狂的サウンド・クリエイターぶりを存分に発揮した、俄然凝りまくった計算尽くしの高密度アルバムになった。基本はギタリストでありながら、キーボードやシンセ、プログラムも自分でこなしてしまうマルチ・タレント。もちろん『BOSSA NOVA HOTEL』でもその片鱗を露わにしていたが、<Maniac>の成功が彼を追い込んだか、あるいは機材の進化が彼を駆り立てたのか。とにかくそのサウンドメイクは何処までも緻密で、隙のないモノになっている。
ただ個人的には、アルバムのスターター<What You Really Want>や<Last To Know>を聴いて、ちょっと違和感を抱いたのを思い出す。『BOSSA NOVA HOTEL』が大好きだったから、センベロ特有のメロディ使いにはニヤニヤしたが、ちょっと詰め込みすぎで息苦しいというか、凝りすぎて空気が澱んでいる、というか。ソロ・デビューするまではスティーヴィー・ワンダーやセルジオ・メンデスにも重用された人だから、元から曲作りの才能やギターの腕前は確か。でも今作は、チョイといろいろ考えすぎちゃうんか? そんな印象を持った。随所にしゃしゃり出てくるトリッキーなギター・ソロは、AORというよりは、エディ・ヴァン・ヘイレンやスティーヴ・ヴァイなどを髣髴とさせるヘヴィ・メタ流儀に近いし、<Tear Down The Walls>で登場する壮大なクワイアも、トゥ・マッチ感アリアリで。
親しい関係だったボビー・コールドウェル、プロデューサーのリチャード・ルドルフ(故ミニー・リパートンの元旦那)と共作した<Funkabilly Swing>は、アナログの4ビートをデジタル・サウンドっぽく聴かせるモノで、まさにこのアルバムのパラノイアぶりを象徴している。ちなみにボビーは本作に大きな貢献を果たしていて、なんと5曲をセンベロ他と共作。シンセやバック・ヴォーカルでも参加している。中でも<Is This The Way To Paradise>の畳み掛けるダンス・ビートとか、カッコ良いんだけどな。
他の参加メンバーは、ヴィニー・カリウタ/カルロス・ヴェガ (ds), スティーヴ・ポーカロ (syn), ランディ・ウォルドマン (kyd), ホーン・セクションでラリー・ウィリアムスやデヴィッド・ボラフ、チャック・フィンドレーなど。コーラス陣にはタタ・ヴェガ、マリリン・スコットや笠井紀美子(後にルドルフと再婚)の名も。そして何より、かつてのボス:スティーヴィーがハーモニカとバック・ヴォーカルで、A&Mの御大ハーブ・アルパートがトランペットで参加している。それだけ周囲から期待されていた、というコトだろう。他に奥様クルーズ、兄弟のダニー、ジョンなど、センベロ・ファミリーのヘルプも手厚く。個人的には、弟ダニーと書いた哀愁バラードでストリングスが涼やかな<Wonder Where You Are>が、一番サラッと聴けて好きだなぁ。
ちなみにこのアルバム、USファースト・プレスのアナログ盤オリジナルは全10曲入りらしい。ところがそこから<Angelina><The Picture><Hysterical>がオミットされ、<Wonder Where You Are><Tear Down The Walls>に差し替え。<Gravity>もダンス・ミックス・ヴァージョンに入れ替えられた。つまりUS盤アナログ盤には、収録曲の違う2タイプが存在するようだ。実際はサンプル盤の身のプレスで、市場に出回ったかどうかは不確かだけど…。ただし、唯一CDリリースされた日本では、<Angelina>と<The Picture>がボーナス的に収録(最後に追加ではなく、完全にアルバム収録曲と同列)。それでも<Hysterical>だけは、未だに聴けないまま。今回の再発CDも当時の日本盤CDに準じていて、<Hysterical>は未収録だ。うーん、惜しいなぁ、自分が再発に関わっていたら、追加収録を進言したのに…。
とはいえ、今となってはセンベロのソロ・キャリアの分岐点とも言えそうな貴重なアルバム。時代が時代だけに、誰もが想像するAORサウンドではないけれど、ジノ・ヴァネリやMr.ミスター同様、80年代後半にこういうベクトルに進むクリエイター指向の強いAORアーティストは、確かに存在していたのだ。
《Tower Records はココから》
ただ個人的には、アルバムのスターター<What You Really Want>や<Last To Know>を聴いて、ちょっと違和感を抱いたのを思い出す。『BOSSA NOVA HOTEL』が大好きだったから、センベロ特有のメロディ使いにはニヤニヤしたが、ちょっと詰め込みすぎで息苦しいというか、凝りすぎて空気が澱んでいる、というか。ソロ・デビューするまではスティーヴィー・ワンダーやセルジオ・メンデスにも重用された人だから、元から曲作りの才能やギターの腕前は確か。でも今作は、チョイといろいろ考えすぎちゃうんか? そんな印象を持った。随所にしゃしゃり出てくるトリッキーなギター・ソロは、AORというよりは、エディ・ヴァン・ヘイレンやスティーヴ・ヴァイなどを髣髴とさせるヘヴィ・メタ流儀に近いし、<Tear Down The Walls>で登場する壮大なクワイアも、トゥ・マッチ感アリアリで。
親しい関係だったボビー・コールドウェル、プロデューサーのリチャード・ルドルフ(故ミニー・リパートンの元旦那)と共作した<Funkabilly Swing>は、アナログの4ビートをデジタル・サウンドっぽく聴かせるモノで、まさにこのアルバムのパラノイアぶりを象徴している。ちなみにボビーは本作に大きな貢献を果たしていて、なんと5曲をセンベロ他と共作。シンセやバック・ヴォーカルでも参加している。中でも<Is This The Way To Paradise>の畳み掛けるダンス・ビートとか、カッコ良いんだけどな。
他の参加メンバーは、ヴィニー・カリウタ/カルロス・ヴェガ (ds), スティーヴ・ポーカロ (syn), ランディ・ウォルドマン (kyd), ホーン・セクションでラリー・ウィリアムスやデヴィッド・ボラフ、チャック・フィンドレーなど。コーラス陣にはタタ・ヴェガ、マリリン・スコットや笠井紀美子(後にルドルフと再婚)の名も。そして何より、かつてのボス:スティーヴィーがハーモニカとバック・ヴォーカルで、A&Mの御大ハーブ・アルパートがトランペットで参加している。それだけ周囲から期待されていた、というコトだろう。他に奥様クルーズ、兄弟のダニー、ジョンなど、センベロ・ファミリーのヘルプも手厚く。個人的には、弟ダニーと書いた哀愁バラードでストリングスが涼やかな<Wonder Where You Are>が、一番サラッと聴けて好きだなぁ。
ちなみにこのアルバム、USファースト・プレスのアナログ盤オリジナルは全10曲入りらしい。ところがそこから<Angelina><The Picture><Hysterical>がオミットされ、<Wonder Where You Are><Tear Down The Walls>に差し替え。<Gravity>もダンス・ミックス・ヴァージョンに入れ替えられた。つまりUS盤アナログ盤には、収録曲の違う2タイプが存在するようだ。実際はサンプル盤の身のプレスで、市場に出回ったかどうかは不確かだけど…。ただし、唯一CDリリースされた日本では、<Angelina>と<The Picture>がボーナス的に収録(最後に追加ではなく、完全にアルバム収録曲と同列)。それでも<Hysterical>だけは、未だに聴けないまま。今回の再発CDも当時の日本盤CDに準じていて、<Hysterical>は未収録だ。うーん、惜しいなぁ、自分が再発に関わっていたら、追加収録を進言したのに…。
とはいえ、今となってはセンベロのソロ・キャリアの分岐点とも言えそうな貴重なアルバム。時代が時代だけに、誰もが想像するAORサウンドではないけれど、ジノ・ヴァネリやMr.ミスター同様、80年代後半にこういうベクトルに進むクリエイター指向の強いAORアーティストは、確かに存在していたのだ。
発表当時、アナログで聴いていたのですが、懐かしいです♪