レココレ 10

現在発売中のレコードコレクターズ誌10月号【AORの名曲ベスト100】、もうお読みいただけましたか? ライヴ続きでスッカリご紹介が遅くなってしまいましたが、筆者もランキングに参加し、総論『AORの現在地を考える』を執筆しています。ベスト100曲は、各選者が30曲選んで順位をつけ、1位なら30点、30位なら1点とポイントを与えて、それを編集部が集計したもの。レココレ誌ランキングのいつものパターンです。自分が100曲中レビューを担当したのは、ボビー・コールドウェル<What You Won't Do For Love(風のシルエット)>(2位)、ビル・ラバウンティ<Livin' It Up>(34位)、アース・ウインド&ファイアー< After The Love Is Gome>(53位)、ナイトフライト<If You Want It>(62位)の4曲。『選者からのもうひとつのおすすめ曲』なるコーナーでは、スティーリー・ダン<Do It Again>を選出。要はコレ、自分が提出した30選で名曲ランキング100曲から洩れた曲を編集部がセレクトしたもので、自分でチョイスしたらコレにはなりませんが…

既に発売から2週間近く。SNSでの反応を見ていると、ベスト100があまりAORっぽくない、そんな声が多い模様。でもレココレはAOR専門誌ではないから、AOR的な名曲/名盤でも、その筋のファン、とりわけリアルタイム派しか聴いていないようなモノは入ってこない。逆にウィルソン・ブラザーズ<Take Me To Your Heaven>(64位)のランクインに驚いたくらいで。ぶっちゃけコレは自分も、AOR名曲トップ10に入れたいくらい大好きな楽曲。だけれどそれは「私的評価」だからと今回は敢えて外し、世間的評価の高い楽曲、知名度とか影響力、カヴァーやサンプル例の多い楽曲を客観的に対象とした。『私にとってのAOR』というコーナーに、参加ライター陣の個別30選が掲載されているけれど、ホントに自分の私的フェイヴァリットを挙げたら、2/3は入れ替わってしまう。しかも順位なんて、その時の気分で変わってしまうし。

AORの専門家たる自分でもそうだから、参加ライター陣のAOR観なんて千差万別。そもそもレココレ執筆陣には各ジャンルの論客が多く、なおかつ今回はその中でも守備範囲が広い方々に声が掛かっているハズ。そういう意味で間口の広い広義AORが選択フィールドになっているワケで。クレイグ・ランクとかデヴィッド・ロバーツ、フランキー・ブルーみたいな、その筋のファンしか知らない名曲・名盤は入ってこない。

シャーデーとかスタイル・カウンシル、プリファブ・スプラウト、ブルー・ナイルあたりのランクインにも、違和感を持った人が多いようだ。それは自分もよく理解できるところだけど、これはおそらく世代的なモノではないかな? AORが廃れてきた頃にこの辺りを聴いて渇きを癒したAOR好きは少なくないと思うが、オンタイム的には “似て非なるモノ” のイメージ。しかし90年代以降の再評価世代は、全部ひと塊りで耳に入ってくるから、明確にカテゴライズされていない楽曲/アーティストは、「あぁ、コレもAORでいいんだNA」と思う。それを頭ごなしに否定したって意味はないけれど、積極的に興味を持っている若い方々には、そのあたりの流れを正確に掴んで欲しい。主軸というか、センターラインをしっかり定めるコトで、本流と傍流の違いの面白さが分かって、より深入りできるから。本来AORとは筋が異なるスターバックや10ccあたりの存在も、まさにソレ。

SNSのAORグループでも、いつも “コレはAOR?” と話題になるが、本来カテゴライズはナンセンスだと思う。だからと言って「音楽にはいい音楽と悪い音楽しかない」と極論しては話が先へ進まない。どうしたってカテゴリーは無くならないから、ある意味、必要悪として割り切るべきなんだな。

ずっと自分的に一番良くないと思っているのは、承認欲求の強いマニアによる情報垂れ流し。まさにカテゴライズの微妙なニッチなネタや、誰も知らないようなレア楽曲ばかりを、何の説明もナシにアップしてくる人たちだ。極論すれば、ボビー・コールドウェルもクリストファー・クロスもロクに知らないヒトに、RASAってメチャクチャ良いですねぇ〜、ってキラキラお目々で訴えられるようになっては困るのだ。ネットで何でも聴けるのは素晴らしいけど、知識を深めるには相応の順番や筋道があるワケで、ある程度の情報量が蓄積されたら、それを整理していかないと。初心者・初級者にそういう指針を示してあげられるのは、中級以上のファンしかいない。よって珍ネタをアップして自己主張するなら、短くてもちゃんとコメントして、そこまでやれよ、と思う。その方がよっぽど承認されるヨ。そのうえで定番・レアネタのバランスが取れたなら、良い形でSNSグループが盛り上がっていくと思う。

まぁ、こういう特集は、ああでもない・こうでもない、とか、自分の感覚と比べてどうこうと、話のネタにするのが楽しいモノ。そういえば、過去のレココレ・ランキングからベース・ドラム関連の特集をまとめた増刊号『この曲のドラム/ベースを聴け!』も発売中。筆者も全ランキングに参加してますので、ご興味のある方は是非。

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レコード・コレクターズ 2024年10月号
ミュージック・マガジン
2024-09-13

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この曲のドラム/ベースを聴け!
ミュージック・マガジン
2024-09-12

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