paul carrack_greatest hits

英国を代表する職人ブルー・アイド・ソウル・シンガーのひとり:ポール・キャラックが、エースでのデビュー、及び名曲<How Long>のヒットから50年が経つを記念して、そのキャリアを網羅したベスト・アルバムをリリースした。その<How Long>や、マイク+ザ・メカニクスでのヒット<The Living Years><Over My Shoulder>、イーグルスに提供した<Love Will Keep Us Alive>など7曲は、今年レコーディングした新録ヴァージョンで収録している。

自分がポール・キャラックを知ったのは、ロキシー・ミュージック『MANIFESTO』(79年)が最初。でもそのヴォーカルの魅力に気づいたのは、マイク+ザ・メカニクスの1st (85年)で、W・ポール(ポール・キャラックと故ポール・ヤング)の素晴らしさにヤラれたがキッカケだった。だから3枚目のソロ作『ONE GOOD REASON』(87年)以降はずーっとオンタイムで聴いていて。だからエリック・クラプトンのサポートに抜擢された時は嬉しかったが、ホントはこんな所で燻っている人じゃないのになぁ…、という思いが強い。

しかもクラプトンのバック陣では、アンディ・フェアウェザー・ロウがポールと同じような立ち位置にいて、ソロ・アルバムを出しつつ、何度か来日してクラブ・ツアーに臨んでいる。だったらソロ作品数に勝るポールが何故来日しない? 英国では時々ソロ・ツアーをやっているのに。ずーっとそう思っていた。するとある時、想いを同じくするポール・ファンが某レコード会社にいて。そこで話が盛り上がり、彼のソロ・アルバムをシッカリ日本でリリースして(現在は輸入盤国内流通仕様どまり)、来日ライヴを実現させようと。ところが、その彼がいろいろ動いてポールとコンタクトを取るところまで辿り着いたのに、どうもポールには全くその気がないみたいで。まぁ、職人肌でビジネスに興味が薄いのは察していたけど、クラプトンに同行して、1曲ソロ・パートを貰うだけで終わりでは、ちょっと勿体ないなぁ〜。本人にその気がないなら仕方がないけど、「日本にだってアンタのはファンがいるんだヨ」と大声で教えてやりたい。うぅ〜、残念無念…。

そんな気持ちを共有できる人は、ひとまずコレ。ロキシー・ミュージックやスクイーズに籍を置いた頃から出し始めたソロ作は、既に20枚以上。ライヴ盤までカウントすると、25枚は優に超える。そんなロング・キャリアからバランス良くチョイスした全19曲。個人的には、ラスカルズ<Groovin'>やクラウデッド・ハウス<Don't Dream It's Over>、バディ・ホリー<Raining In My Heart>のナイス・カヴァーが入っているのが嬉しく、ポールの名唱が楽しめる。<I Don't Want To Hear Any More>ではドン・ヘンリーとティモシー・シュミットのバック・ヴォーカルをフィーチャー。

ちなみにイーグルスが『HELL FREEZES OVER』(94年)で取り上げた<Love Will Keep Us Alive>は、ポールと故ジム・キャパルディ他が共作し、イーグルス版ではティモシーがリード・ヴォーカルを取っている。ポールが最初に歌ったのは、96年作『BLUE VIEWS』。でも実際は、イーグルスが活動を再開する前に、ティモシー、ドン・フェルダー、ジム・キャパルディにポールが組んでいた幻のバンドで、既にレコーディングを終わらせていたらしい。それがお蔵入りしてしまったので、ティモシーとフェルダーがイーグルスに持ち込んだようだ。もしこのグループが正式に稼働していたら、ポールのキャリアも大きく転換していたかもしれないなぁ…

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