vladimir cetkar 024

箱鳴りの余韻が心地良いギター、
シズル感たっぷりのグルーヴに、
躍動的なオーケストラが絡みつく。
ジャジーでアーベインなハイブリッド・ソウルが満載。
5年ぶりのヴラディミール・チェトカー、いま彼はキャリアの頂に立つ。


ヨーロッパはマケドニア(現・北マケドニア)出身、最近はニューヨークを拠点に活躍するリアル・クロスオーヴァー・アーティストの、5年ぶり、日本での3作目。基本は“歌えるジャズ・ギタリスト”で、指向性はR&B〜ジャズ・ファンク。わかりやすく言えば、ジョージ・ベンソンをベースに、ブラック・ミュージックやディスコ・サウンドを取り込みつつ、更に深くジャズ・フュージョン・スタイルを追求した、とでも言うか。

でも当人に言わせれば、5年ぶりというのは最初からの計画で、あらかじめ設定していた制作期間だったとか。彼はたった一人で、プロデューサー、ソングライター、アレンジャー/オーケストレイター、コンダクター、リード&バッキング・ヴォーカリスト、リード&リズム・ギタリストであり、同時にリズム、ホーン、ストリングス、各セクションといった多くのプレイヤーたちのスタジオ・プロダクツをコントロールしている。そのためとても時間と労力が掛かる、と言うのだ。今なら彼のようなマルチ・ミュージシャンは、プログラムでトラック制作するのが普通。でも彼はすべてを生演奏で構築する。

そのサウンドを特徴づけるのは、ベンソン風のギター・ワークと、ストリングスやホーン・セクションを配した優美なオーケストレーション。そこで自分が思い浮かべたのは、エウミール・デオダートやラロ・シフリン、ジーン・ペイジ、デヴィッド・マシューズ、そして誰よりクインシー・ジョーンズといった、ソウル・ミュージックの構築に長けたジャズ出身の敏腕アレンジャーからのインフルエンス。おそらく彼は、CTI / KUDU あたりの70年代フュージョンが大好きなのだろう。

聞けば、とりわけドン・セベスキーには、強い感銘を受けたとか。
「今回のオーケストラ・アレンジは、細部に至るまで信じられないほどの注意を払った。でもその一方で、ミュージシャンが互いにコミュニケーションできて、インスト・パートでも感情が溢れるイキイキとした演奏ができるようにと、思い描いていたんだ。それにサイモン・ヘイル(ジャミロクワイ)、パトリース・ラッシェン、マウロ・マラヴァシ(チェンジ)なども僕の人生の一部だよ」(ヴラディミール)

オーケストレイターであるだけでなく、ギターを弾いて歌うパフォーマー。だからすべてをトータライズして見ている。それでいて難しく聴こえないのは、初めて買ったレコードがマイケル・ジャクソン『OFF THE WALL』(79年)だと言う音楽観からか。まずはキャリア最高峰となるこのアルバム『LET US BE』を是非チェック。



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レット・アス・ビー [監修・解説:金澤寿和(Light Mellow)]
ヴラディミール・チェトカー
Pヴァイン・レコード
2024-10-09

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