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ようやく実現!と狂喜乱舞したルーサー・ヴァンドロスの初期グループ:ルーサー2作の奇跡の復刻は、期待とは裏腹に黒人音楽好きの間だけの話題に止まってしまったけれど、その時に久々に聴き返し、先日またシシー・ヒューストンの訃報で手に取ったのが、彼の81年のソロ・デビュー作『NEVER TOO MUCH』。自分にとっては、AORに於けるエアプレイのような存在で、ソウル/R&B系で最もハマったアルバムだ。もちろんそれ以前からアース・ウインド&ファイヤーやらスティービー・ワンダーやら、いろいろ聴いてはいたけれど、そうしたソウル/R&Bの深みにドップリ浸かるキッカケになったのがルーサーだったのだ。
何よりそのヴェルヴェット・ヴォイスが素晴らしかったし、オーセンティックなヴォーカル・スタイルと巧みに時代性を捕まえたセンスの良さ、その柔軟な歌のスキルに魅了された。バックの演奏陣もこの上なく上質で、ソリッドかつパワフル。それでいてスロウ・チューンでは情感もたっぷりに、的確に心のスウィート・スポットを突いてくる。

ベース&ドラムはマーカス・ミラーとバディ・ウィリアムスのコンビ。GRPとかのフュージョン系セッションではお馴染みのチームだったけど、マーカスなんてまたホンの駆け出しだったから、こんなソウル寄りの抑えたプレイも出来るんだ!と驚いた。だからバカラックのペンになる〈A House Is Not A Home〉では、アンソニー・ジャクソンがベースを弾いていたのも至極納得。おそらくマーカスは相当に悔しかったはずで、これをバネにプレイヤーとして成長し、プロデューサーという仕事に開眼していったのではないか?と思っているのだが、買いかぶりすぎだろうか。鍵盤のナット・アダレイ Jrは コレで知ったが、ゴスペル臭を抜いたリチャード・ティーみたいで、これまたお気に入りに。かのキャノンボール・アダレイの甥っ子というサラブレッドでもあったけど、彼はあまり他のスタジオ・セッションには参加せず、ルーサー回りの仕事に徹した感がある。ギターのジョージ・ワデニアスはこの頃からニューヨーク界隈のセッション・シーンに顔を出すようになったが、元々は北欧の人で、Made in Sweedenなるグループで活動していた実力派だった。

コーラス隊も前述シシー・ヒューストンの他、シック周辺のフォンジ・ソーントン、ノーマ・ジーン・ライト、リヴェレイションのフィリップ・バロウ、エムトゥーメイのタワサ・エイジー等などと、ニューヨークのスタジオ・シンガー勢揃いで。今でこそデヴィッド・ボウイのNYセッションから身を立てたのが有名だけど、それから着々と人脈を広げ、信頼を勝ち取っていったプロセスがよく分かる。

その後も亡くなるまで数多くのヒット作・人気盤を出し続けたルーサーだけど、自分にとってはこのデビュー作に勝るものナシ。少し甘めに見積もっても、4枚目くらいまでなんだよな、聴きたくなるのは・・・

ネヴァー・トゥー・マッチ(期間生産限定盤)
ルーサー・ヴァンドロス
SMJ
2018-03-21



Original Album Classics
Luther Vandross
Sony Legacy
2013-06-25