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実は先週後半からしばし自宅を離れ、1週間の予定で、あまりWi-Fi環境の良くない某所で隠遁生活。いろいろライヴのお誘いも頂戴していたのだが、コレばっかりは仕方がない。特に残念だったのは、6年ぶりのフルバンド・ライヴだった国分友里恵さん@ブルースアレイ『Relief 2024』に行けなかったこと。『Relief 72 Hours』のCDリイシューで特典解説を書いて以降、フルバンド・ライヴは全部観てきたのになぁ…。そこで取り敢えずは先週リリースされたばかり、彼女のキャリア初の2枚組ベスト盤をご紹介しておこう。

今でこそシティポップ・ブームでの再評価が著しく、実力派女性シンガーとして認識されている国分友里恵だけれど。でも83年のソロ・デビュー盤、87年の2nd『STEPS』と充実の内容だったのに、当時はほとんどマーケットにスルーされた状態。神保彰&櫻井哲夫のSHAMBARAのフロントに抜擢されたり、山下達郎のツアー・バンドでコーラスを務めたりと、業界内の評価は高かったのに、それ以上の展開はなかった。90年代半ばになって、中山美穂に楽曲提供した<ただ泣きたくなるの>がミリオン・セラーを記録し、多少は空気が変わったけれど、彼女自身は浮き立つことなく、自分のペースで地道に活動を展開していた感がある。

今回の初のベスト・アルバムにしても、レーベルの垣根を超えて7枚のアルバムを網羅。そこにシングル・オンリーの楽曲や、野力奏一(kyd)率いる NORIKIでの人気ヴォーカル・チューン<YOU NEED ME ><DO WHAT YOU DO>を追加した全32曲のヴォリューミーな内容になっている。

今回のセレクトは、友里恵嬢&プロデューサー/アレンジャー/ご主人/の岩本正樹氏監修の下、そもそもの企画を立ち上げたソニーの担当ディレクターに拠るものだそう。こういうベスト盤って、アーティスト本人の思い入れが強いセレクトが収められると、時にリスナーが「何故にこの曲?」と頭を悩ませてしまうリスクが発生するが、このベスト盤のチョイスは実に適確。今のシティポップ・ファンが知りたい、聴きたい楽曲をシッカリと選りすぐり、なおかつ、ベスト盤とは思えぬような統一感のあるトータル・イメージを貫いている。

もちろんオリジナル・アルバムを聴けば、移籍を挟んで多少のギア・チェンジは感じられるし、彼女を取り巻いたポップ・シーンの変化も伝わる。でもプロデュース&アレンジを主導する人が変わらなかったのは、大変ラッキー。その一環した音楽的ベクトルを、今作担当氏が上手にすくい上げた。

『Relief 72 Hours』『STEPS』に3rdの『SILENT MOON』(90年)、カシーフが関わった『RESERVATIONS FOR TWO』(97年)あたりはチャンとアルバムごとに聴いて欲しいが、手っ取り早く彼女のキャリアを掴みたい方には、格好の手引きとなるだろう。角松敏生とデュエットした<It's Hard To Say Good-Bye〜さよならは愛の言葉>の友里恵ヴァージョン(duet with 羽場仁志)も収録。初めてにしてパーフェクトな充実ベスト、さすがに全7作は買えないなぁ、という方に。

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国分友里恵 ベスト・コレクション
国分友里恵
ソニー・ミュージックレーベルズ
2024-10-09

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