billy crockett

予定よりも遅れに遅れているけれど、一応進行しています、『AOR Light Mellow Premuium 03』。完結編の柱となるのは、『Premuium 02』に掲載した1983年以降のヒストリーに沿ったアルバム紹介と、90年代末以降のレア・グルーヴ/DJムーヴメントを機に新規発掘された作品群、そしてCCMとコンテンポラリー・ハワイアンあたり。おのずとレア盤が多くなるけれど、中には発掘されてから定番化していったジェイ・P・モーガンやアーチー・ジェイムス・カヴァナーなども。再訪盤群のミソはリリース年ではなく、発掘されてAORファンに広まったタイミングを捕らえているところかな。

ただし、DJ諸兄や廃盤専門店のバイヤーが主導している一部ディスク・ガイド本のように、レア盤自慢にはしたくない。だから、自分か相棒役の福田直木がLP or CDで所有していることを、セレクトの基本条件にしている。今ではネット上でキラー・チューンだけ聴けるケースが少なくないが、場を盛り上げればOKのDJとは違い、ホーム・リスニングでも楽しめる作品を対象にしたい。ならばレア・グル系のキラー・チューン一発屋は掲載に相応しいとは言えず、アルバム全体を抑えた上で複数の楽曲をリコメンドできる、とか、キラーはなくとも作品トータルでクオリティが安定している、などが条件となる。youtubeで聴いたら素晴らしい楽曲なので、必死こいて高値でアルバムを買ったところ、他の曲はまるでペケだった… そんな状況は避けたいのだ。重ねて言えば、その作品/アーティストの背景や簡単なキャリアも知りたい。それには、どうしたってアルバム入手が必要だ。

SNSのAORグループ界隈では、相変わらず、AORの定義問題が物議を醸している。そのボーダーラインは、個々の感性に任せれば良い。けれど重要なのは、グループ全体としてのバランス感かと。辺境モノはあくまでメインストリームに対するモノであって、本線ナシに脇道ばかりが増えれば、初心者や初級者は路頭に迷う。僅かな仲間でしか盛り上がれず、グループの過疎化が始まる。中級・上級者やマニアな方々には、単に自分の承認欲求を満たすだけでなく、その英知を存分に発揮して後継に繋げて欲しいと願うばかりだ。それがAORに対する恩返しではないのかな? 「いいね」の数が欲しいなら、普段はコメントもしてくれないようなサイレント・マジョリティーへの意識を忘れちゃいけないと思う。

CCMことコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックに関しては、そもそもがマニアックなジャンル。だけれど、80年代初頭に日本のAOR好きから注目され始めた頃を知っている世代と、90年代末以降の再評価期からCCMを聴き始めた世代では、感覚が違う。あの当時…、時に王道AORが急速に下降線を辿り始めた83~84年頃、CCMはAORフリークにとってオアシスのような存在だったはず。日本に入ってくる作品はかなり限られていたけれど、好きモノたちはレーベルや参加ミュージシャンを頼りに、良質なAORを探し当てようとアンテナを張り巡らせていた。それこそセレクト・ショップ的な直輸入レコードショップの店頭くらいしか、試聴のチャンスがなかった時代のハナシである。そんな経験も、コラムで何処かに盛り込みたいなぁ。

…というワケで、このCCMの好盤ビリー・クロケットの84年デビュー・アルバム『CARRIER』。若いながらもアコギの名手らしく、ジャケの通り、朝日を浴びているような、キラキラと爽快なアコースティック・ポップ・サウンドを披露する。1曲テリー・デザリオとのデュエットも。バックはギターのジョン・ゴーインら、ナッシュヴィルあたりの中堅実力派が中心。こういうの、きっとメジャーじゃ作れないよなぁ。

どんな音か気になる方は、動画サイトを検索するとフル・アルバムが聴けます。オフィシャルじゃないので、リンクは張りませんが…。ちなみに現在も活動を続けているようで、サブスクにも近作アリ。