milton + esperanza

クインシー・ジョーンズの訃報に触れて、彼のワークスや功績にいろいろ思いを巡らせる中、ふと気づいたのが、イヴァン・リンスの存在に目を向けさせてくれたのもクインシーだった、ということ。そこからの連鎖で、8月にリリースされたこのアルバム、ミルトン・ナシメントとエスペランサの共演盤。もちろん発売と同時にゲットしたけれど、その深〜い出来映えに、もう少しシッカリ聴き込もうを思いつつ、アッと言う間に3ヶ月…。

エスペランサ・スポルディングが2作目『ESPERANZA』で世界デビューを果たし、ジャズ界を震撼させたのは08年のこと。あれから早15年以上が経つワケだが、あのアルバムの冒頭を飾っていたのが、ウェイン・ショーターの75年名盤『NATIVE DANCER』からの<Ponta De Areia>。作曲はもちろんブラジルの巨匠ミルトン・ナシメント。それがあってか彼女とミルトンに交流が生まれ、3rdアルバム『CHAMBER MUSIC SOCIETY』(10年)にミルトンがゲスト参加。2人のデュエットが実現した。その後も彼らは機あるごとに共演を続け、このアルバムに至る。冠的には共演の形を取っているが、アレンジ&プロデュースなど、仕切り役はエスペランサ。彼女が自分のアルバムにミルトンを招き、敬意を以ってフィーチャーした、というのが正確なところである。しかも10分近い楽曲もあれば、インタルードというか、2人のダイアローグやミルトンのつぶやきみたいなトラックも随所に織り込まれ、彼らの交流をストーリーにして表現しているような趣き。

収録曲には、60~70年代のミルトン楽曲のリメイクもあれば、エスペランサの新曲もあり。例えば<Saudade Dos Avioes Da Panair (パネール航空の記憶)>は、75年の名盤『MINAS』のセルフ・リメイクだったり。ビートルズ<A Day In The Life>、ダイアン・リーヴスがゲスト参加したマイケル・ジャクソン<The Earth Song>なんて興味深いカヴァーもある。そうかと思えば、87年以来というミルトンとポール・サイモンのデュエットがあったりも。

そしてクロージングは、再びウェイン・ショーターの楽曲から、85年作『ATLANTIS』収録の<When You Dream>を壮大に。ここにはウェインの元夫人カロリーナ・ショーターも参加し、ミルトン、エスペランサと3人で、ディープなヒューマン・ヴォイスのタペストリーを披露している。

ふわ〜っと流していても気持ちよく聴けるアルバムだけど、ちょっと意識を傾けて聴くと、思わず内宇宙
へ吸い込まれそうに…。エスペランサにとっては夢を実現したモノだろうけど、やっぱりミルトンのような巨匠をその気にさせるコトができたのは、彼女の実力と才能、そして深遠な音楽愛あればこそ。何よりそこにこのアルバムの真骨頂がある気がするな。

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