chicago 13

『AOR Light Mellow Premium 03』の打ち合わせを兼ねて、執筆の相方:福田直木がレギュラーを務めるDJイベント:環七AORへ。久々に行ってみれば、常連客に混じって遠方からの旧知の方の顔があり、うれしい再会。その後はいろんなお客様と、AOR定義の話からレア盤談義、シティポップ談義まで、いろいろ盛り上がった。当方クルマ移動のため、アルコールは頂けなかったが…

福田が最初のセットで回していたからか、お客さんの間で話題になっていた『CHICAGO 13 』(79年)。マルコス・ヴァーリがニュー・アルバム『TUNEL ACUSTICO』の中で、シカゴと共作した<Life Is What It Is>をセルフ・カヴァーしていることも手伝って、のコトだろう、最近急に話題になるコトが増えた。9月にシカゴ旧作がまとめてCD再発されていたのは、スッカリ忘れていたけれど…。

『13』といえば、テリー・キャスの事故死があって、ギターがドニー・デイカスに変わった『HOT STREET』の次作。でも心機一転が受け入れられた前作とは違って、往年のブラス・ロック期のファンには総じて不評だ。でもこの時期は、キャスの穴をメンバー一丸となってリカヴァーしようという意気込みが感じられ、ピーター・セテラのポップ志向や、デヴィッド・ホーク・ウォリンスキー(マデュラ〜ルーファス)を伴ってのダニー・セラフィンのリズム志向がより前面に押し出された。そして『VIII』から加入したブラジル人パーカッション奏者ロウディ・ヂ・オリヴェイラ(元セルジオ・メンセス&ブラジル'77)のカラーが反映されたのが、『13』に収録された<Life Is What It Is>だった。

しかし、オデッセイやスティーヴン・スティルスに重用されたドニーは、オトナの集団シカゴではやんちゃぶりが際立って他のメンバーに総スカンを喰らい、このアルバムで馘首。ダニーとホーク主導で軽やかなディスコ・スタイルにアプローチし、メイナード・ファーガソン(tr) やアイアート・モレイラ (perc) をゲストに呼んで奮闘した<Street Player>も、当時のファンに受け入れてもらえなかった。結局このアルバムからは大したヒットが出ず、バンド凋落を第一歩を刻むことに。『CHICAGO 13』が再評価されるようになっ たのは、何と、レア・グルーヴ方面から新しい評価の斬り口が出てきた90年代後半以降になってから、という気がする。

でも、ハイブリッドなクロスオーヴァー的感覚を宿していた音楽ファンなら、『CHICAGO 16』のAOR的復活前から、『HOT STREET』や『CHICAGO 13』の面白さは、多少なりとも感じていたはず。初期のブラス・ロック期とも、デヴィッド・フォスターと絡んだ王道AOR期とも異なるエッセンスが、この時のシカゴにはあった。

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2024-09-04

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