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順調に続いてきているサンタナの、クアドラフォニック〜SA-CDマルチ・ハイブリッド・エディション・シリーズ。世の中の音楽ファンの間では 5.1chマルチさえあまり普及していないのに、オーディオ業界やCD再発市場では、ちょっとしたリスニング・ルームの改装工事が必要なドルビー・アトモスへの流れが加速していて…。こりゃあどうにも一般音楽リスナーは置いてけぼりだな…、と悲しい気持ちになっている昨今だ。システム自体はPCやスマホで使えたり、サブスクで音源が供給されていても、空間オーディオと呼ばれるくらいで、相応のリスニング環境が整わないとあまり意味がないんじゃないの、知らんけど…(苦笑

さて、そこで74年のサンタナ『不死蝶(BORBOLETTA)』のマルチ・ハイブリッド・エディション。作品的には、急速にスピリチュアルになった『キャラヴァンサライ(CARAVANSERAI)』と続編『WELCOME』、そしてジャパン・ライヴの金字塔『ロータスの伝説(LOTUS)』に続くもの、になる。この時期カルロスは前後して、ジョン・マクラフリンやアリス・コルトレーンとの共演作も矢継ぎ早に送り出して、霊的インスピレーションに突き動かされている感があって、この『BORBOLETTA』はその最終章とも。一方で、サンタナとしての看板曲<哀愁のヨーロッパ (Europe)>を生んだ76年の大ヒット作『AMIGOS』への架け橋にもなっており、精神性と大衆性を併せ持ったユニークなアルバムと言える。

この頃はメンバーの出入りも激しく、マイケル・シュリーヴとレオン・ンドゥグ・チャンクラーという新旧ドラマーが参加。ベースはダグ・ローチが抜けて、デヴィッド・ブラウンが出戻った。『CARAVANSERAI』からカルロスの音楽的参謀となったトム・コスターは絶好調。サックスは引き続きボズ・スキャッグスとも演っていたジュールズ・ブルサード。そしてヴォーカル& キーボードに、CCM方面で活躍するレオン・パティーロが新加入。彼の黒人らしからぬ軽やかな歌声は、AOR色濃厚なフュージョン系ヴォーカル・チューン<Life Is Anew>や<One With The Sun>あたりで存分に楽しめる。シングル・カットされたのは、よりラテン色の濃いミッド・ファンク<Give And Take>だったけれど、それはサンタナのラテン・ロック看板を意識してのこと。楽曲的なヒット・ポテンシャルは、<Life Is Anew>の方がずっと高かったと思う。

ちなみにゲスト・ミュージシャンには、アイアート・モレイラ&フローラ・プリム夫妻、そしてスタンリー・クラークというリターン・トゥ・フォーエヴァー勢。彼らはアルバム終盤を占める<Flor de Canela>〜< Promise of a Fisherman>〜<Borboletta>の長尺メドレーで、俄然を存在感を発揮する。クアドラ・ミックス的な楽しみも、こうした音数が多くパーカッションが縦横無尽にチャカポコと賑やかっだたり。ギターや鍵盤系が浮遊感を醸し出すようなナンバー。マルチ・チャンネル環境をお持ちの方は、是非トライを。

《amaon》
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