ある筋からお誘いいただいて、離婚伝説 2024 ONEMAN TOUR『そっと強く抱きしめて』@EX THEATER ROPPONGI へ。御多分に洩れず<愛が一層メロウ>で注目したクチで、マーヴィン・ゲイから頂戴した “離婚伝説” というユニット名に、最初は「何だかなぁ…」と思った。けれどアルバムを聴いて納得。その後はサブスクで数回聴いた程度だったけれど、こりゃあウケるよなぁ〜、と。逆に、以前からよく知るA&R氏が彼らを発掘し、メジャー・デビューに導いたと知ってビックリ。でもそのA&R氏の嗜好を知っているからこそ、このユニットへの興味が増した感もあり、これはライヴを観なくてはと…。
メンバーはヴォーカルの松田歩、ギター/コーラスの別府純で、いわゆる2メン・ユニット。それをドラム、ベース、キーボード、ギター/コーラス/マニピュレートの4ピース・バンドがサポートする。活動開始は2022年からで、その当初からこのメンバーでライヴ活動をしていたらしい。最近アップされたシングル曲では、 佐野康夫 / 伊吹文裕 (ds)、千ヶ崎学 / 山本連 (b) といった中堅〜若手の実力派ミュージシャンを起用しているようだけれど。
開演ギリギリに着いたら、オール・スタンディングのステージ・フロアは立錐の余地もないほどの大入り満員。やっぱり勢いのあるバンドはスゴイね。オーディエンスは主に20代後半〜30歳代とお見受けしたが、その中にポツポツとエルダー層の方もいて、若手リスナーと同じように腕をフリフリ。名前に反応して聴いてみたら音も良くて、年甲斐もなく夢中になった、というパターンですかね? こういうの、ある意味ひとつの理想形かと。
ステージで見る彼らは、アイヴォリーのスーツでキメた20代の頃の角松敏生もどきと、ジミ・ヘンドリクスを意識したような黒づくめのギタリスト、というフォルム。メンバー後方に演奏機材とスポットライト数本を置いただけのシンプルなステージ・セットが、60〜70年代初期のライトショウを思わせたりしてカッコ良い。<愛が一層メロウ>のイメージから、メロウさもあるファンキー・ポップ・ロック、今でいうならグルーヴ感の強いシティポップ系パフォーマンスを想像していたけれど、基本はもっとゴリッとしたファンク・ロックのようで。特に別府のギターはクラシック・ロックの艶っぽさを湛えていて。スキル的にはもっと上手い若手ギタリストはゴマンといるが、彼ほどエロいトーンを奏でるギター弾きはあまりいないんじゃないかな?
そしてフロントの松田は、ホント、華奢な体型といい、髪型やファッションといい、立ち居振る舞いといい、若い頃の角松ソックリでビックリ。終演後に「意識してるの?」と訊いてみたら、「イヤ全然。よく言われるんですけどね。もちろん音楽は大好きですが…」との答え。でも彼についての最大の収穫は、ファルセットの歌声の方だ。もちろんR&B系シンガーのような強靭さや卓越したヴォーカル・スキルはなく、むしろ繊細でナイーヴな歌声が特徴。だからライヴでは何処まで演れるの?、と心もとなく思っていたら、案外ツルッと最後まで軽快に走り抜けてしまった。ドッシリとした安定感こそないものの、むしろそのソフトさがファン惹きつけるのだろう。そして相方から「キザ〜」と言われる仕草がまた、女性ファンの心を鷲掴みにする。指パッチンを合図にすべてのライトが落ち、背後からゆっくりピン・スポットが当たってシルエットが浮かび上がると、おもむろに詞を朗読し始めるなんて、耳年増のおっさんライターから見れば「ようやるわァ〜」という感じ。でもその半ばクサい演出が、若いリスナーに刺さるようだ。
セットリスト的には、アルバムと配信シングルを網羅しての約90分。MCは必要最低限で、矢継ぎ早に曲を繰り出していくのも新鮮だ。シック<Good Times>のカヴァーするのか、と思ったら、それがナンと<愛が一層メロウ>のイントロだったり、クリスマス・ソング<グリン・グリーンレッド>の冒頭にマライア・キャリーの定番X'masソングを持ってきたり、はたまたどの曲か忘れたがジョージ・ベンソン<Give Me The Night>を導入したり。アルバムにもバリー・ホワイトの引用があったように、40歳代以上の音楽ファンにとっては、流線形にも似たネタ感満載の楽しさ・面白さがある。でもそれをライヴ・ステージでガッツリ聴かせられるのが、離婚伝説の美味しいところ。一部同期は使っていても、ほとんど生演奏でアルバムを再現できる、そういう磨き抜かれたバンド・アンサンブルを自前で構築しているのが大きい。昨今登場してくるシティポップ系ニュー・カマーには、シッカリしたライヴができないのが多いようだから、この点ひとつ取っても、離婚伝説には大きなアドヴァンテージがある。
70〜80年代のメロディや歌詞を今にアップデイトしているのは、自分が新作にライナーノーツを寄せたGood Bye April ともイメージが重なるところ。年末の『rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 2425』を筆頭に、大規模フェスへの参加も増えているようなので、これからの飛躍を楽しみにしたい。
《amazon》
《Tower Records はココから》
開演ギリギリに着いたら、オール・スタンディングのステージ・フロアは立錐の余地もないほどの大入り満員。やっぱり勢いのあるバンドはスゴイね。オーディエンスは主に20代後半〜30歳代とお見受けしたが、その中にポツポツとエルダー層の方もいて、若手リスナーと同じように腕をフリフリ。名前に反応して聴いてみたら音も良くて、年甲斐もなく夢中になった、というパターンですかね? こういうの、ある意味ひとつの理想形かと。
ステージで見る彼らは、アイヴォリーのスーツでキメた20代の頃の角松敏生もどきと、ジミ・ヘンドリクスを意識したような黒づくめのギタリスト、というフォルム。メンバー後方に演奏機材とスポットライト数本を置いただけのシンプルなステージ・セットが、60〜70年代初期のライトショウを思わせたりしてカッコ良い。<愛が一層メロウ>のイメージから、メロウさもあるファンキー・ポップ・ロック、今でいうならグルーヴ感の強いシティポップ系パフォーマンスを想像していたけれど、基本はもっとゴリッとしたファンク・ロックのようで。特に別府のギターはクラシック・ロックの艶っぽさを湛えていて。スキル的にはもっと上手い若手ギタリストはゴマンといるが、彼ほどエロいトーンを奏でるギター弾きはあまりいないんじゃないかな?
そしてフロントの松田は、ホント、華奢な体型といい、髪型やファッションといい、立ち居振る舞いといい、若い頃の角松ソックリでビックリ。終演後に「意識してるの?」と訊いてみたら、「イヤ全然。よく言われるんですけどね。もちろん音楽は大好きですが…」との答え。でも彼についての最大の収穫は、ファルセットの歌声の方だ。もちろんR&B系シンガーのような強靭さや卓越したヴォーカル・スキルはなく、むしろ繊細でナイーヴな歌声が特徴。だからライヴでは何処まで演れるの?、と心もとなく思っていたら、案外ツルッと最後まで軽快に走り抜けてしまった。ドッシリとした安定感こそないものの、むしろそのソフトさがファン惹きつけるのだろう。そして相方から「キザ〜」と言われる仕草がまた、女性ファンの心を鷲掴みにする。指パッチンを合図にすべてのライトが落ち、背後からゆっくりピン・スポットが当たってシルエットが浮かび上がると、おもむろに詞を朗読し始めるなんて、耳年増のおっさんライターから見れば「ようやるわァ〜」という感じ。でもその半ばクサい演出が、若いリスナーに刺さるようだ。
セットリスト的には、アルバムと配信シングルを網羅しての約90分。MCは必要最低限で、矢継ぎ早に曲を繰り出していくのも新鮮だ。シック<Good Times>のカヴァーするのか、と思ったら、それがナンと<愛が一層メロウ>のイントロだったり、クリスマス・ソング<グリン・グリーンレッド>の冒頭にマライア・キャリーの定番X'masソングを持ってきたり、はたまたどの曲か忘れたがジョージ・ベンソン<Give Me The Night>を導入したり。アルバムにもバリー・ホワイトの引用があったように、40歳代以上の音楽ファンにとっては、流線形にも似たネタ感満載の楽しさ・面白さがある。でもそれをライヴ・ステージでガッツリ聴かせられるのが、離婚伝説の美味しいところ。一部同期は使っていても、ほとんど生演奏でアルバムを再現できる、そういう磨き抜かれたバンド・アンサンブルを自前で構築しているのが大きい。昨今登場してくるシティポップ系ニュー・カマーには、シッカリしたライヴができないのが多いようだから、この点ひとつ取っても、離婚伝説には大きなアドヴァンテージがある。
70〜80年代のメロディや歌詞を今にアップデイトしているのは、自分が新作にライナーノーツを寄せたGood Bye April ともイメージが重なるところ。年末の『rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 2425』を筆頭に、大規模フェスへの参加も増えているようなので、これからの飛躍を楽しみにしたい。
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