whitney houston live

唐突に現れたホイットニー・ヒューストンのライヴ・アルバム。よくある出所が怪しいハーフ・オフィシャル盤ではなく、れっきとしたアリスタ発の公式作品。94年に南アフリカで行なった歴史的コンサートのライヴで、『THE CONCERT FOR A NEW SOUTH AFRICA (Durban)』というライヴ映像作の音源ヴァージョンとのことだ。この時のホイットニーは、ネルソン・マンデラが大統領になったアパルトヘイト後の南アフリカで、初めてコンサートを行なった西側のメジャー・アーティストという特別な存在。故にその30周年を記念し、前述ライヴ映像を4Kリマスター化。10月末に海外でシアター公開されたのに合わせ、音盤でもリリースされたのである。

様々なトラブルに見舞われて急死に至るなど、晩節を汚してしまった感の強いホイットニー。でも94年といえば、サントラ『THE BODYGUARD』及び<I Will Always Love You>でグラミー主要2部門を受賞。大いに乗っていた時期だ。調子を崩す前の適当な時にライヴ作品を出しはぐってしまった感があるだけに、なかなか貴重な作品である。

バンド・メンバーも、バンマスのリッキー・マイナー (b)中心に、ポール・ジャクソンJr.(g), ウェイン・リンゼイ (kyd), カーク・ウェイラム (sax), ゲイリー・バイアス(sax), マイケル・パッチェス・スチュワート (tr), ジョージ・ボハノン (tb)、オスカー・ブラッシャー (tr), マイケル・ベイカー (ds), バシリ・ジョンソン (perc), アルフィ・サイラス (cho) など、普段はスタジオ・セッションで活躍しているような一流どころを揃えていて。ホイットニーの歌もバックの演奏も、ソツなくまとまったパッケージ化されたライヴ・パフォーマンスを展開する。正直デビュー当初の彼女は、もっとスゴ味のあるゴスペル・シンギングを聴かせていた気がするけど、ココでのホイットニーも、まぁ悪くはない。

でもコレはやっぱり、映像から起こしたライヴ・アルバム。映像が「ある」と「ない」では、コチラも意識も持っていくところが違うのだよ。おそらく映像作品で見聞きすれば素直に楽しめるトコロも、ちょっと今イチ盛り上がれない。決して悪くはないけど、フォーカスすべきところがズレている、というか。これは映像作品から起こしたライヴ・アルバムの宿命。

最近はめっきり、音だけのライヴ・アルバムが減ってしまったけれど、こうしたステージ演出が多い大物アーティストの場合、ライヴ・アルバムを録るのとライヴ映像を撮るのでは、そもそもパフォーマンスを変えてひたすら演奏に集中するぐらいじゃないと、本当に良い作品はできない。このホイットニーのライヴも、映画を見るか(現時点で日本での公開予定ナシ)、DVD / Blu-rayでも観ない限り、本当の魅力は分からないかな…。

なおCDには、<Love Is (2024 Mix)>のボーナス収録があります。








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The Concert For A New South Africa (Durban)
Whitney Houston
Arista/Legacy
2024-11-08

《Tower Records はココから》

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