tatsuro_treasures

SNSなどでも話題もちきり。山下達郎が5日のNHKホール公演を1時間半ほどで打ち切って中止とし、振替公演を行なうことにした。その直前に風邪を引き、11月26・27日の大宮公演を延期。前日4日のNHKホール公演でツアーを再開した矢先のトラブルだった。

酒も飲まず、ストイックな生活でコンディションをハイレヴェルに維持。声量もキーも絶好調だというが、さすがのタツローさんも71歳。こうしたコトは初めてではないものの、やはり以前と比べ、風邪を引きやすくなったり、ライヴの後の回復力が遅くなったり、そういう目に見えないところでの衰えはあるのだろう。おそらくオーディエンスは気づかない、イヤ、バンド・メンバーさえ気に留めないくらいの、ごく些細なコトなのだと思うけど。

MCでは最初から「風邪が完全には治っていない」と言っていたそうで、ステージ後半、「納得するパフォーマンスがお届けできない」と中止を決断したという。

それに対して詰め掛けていたファンも、ニュースで状況を知ったファンも、氏を攻めたりはしない。現場で中止を告げられたファンはスタンディング・オベーションでエールを送り、ホール内は温かい空気に包まれていたそうだ。コレ、普通のライヴなら怒号が飛び交っても不思議じゃないよ。

それはつまり、氏の音楽観や活動スタンス、ライヴ・パフォーマンスに対する考え方、ファンに対する誠実さが、自身のラジオ番組やインタビューなどを通じて、シッカリ伝わっているからに違いない。そりゃあアルバムを出せば多少の賛否は出てくるし、ジャニーズ問題のように違和感の残る発言だって時にはある。それでも「音楽至上主義」の姿勢は微動だにしないから、ファンのほとんどが「それはそれ」として静観しているのだ。基本的に政治的・社会的な主張をしないというのも、みんなが理解しているところ。大騒ぎしているのは、氏をあまり理解していない芸能メディアである。

もちろんこうしたリスナーとの厚い信頼関係は、一朝一夕のうちに生まれるはずもなく、長い年月を経てコツコツ積み上げてきたものだ。温かいファンが多い、のではなく、そういう理想的な関係を構築する努力を重ね、自分の思いや考えを広く発信して、良質なファンを育んできたのだ。単純に、自分のやることを受け入れてくれる、というのではなく、ファンの期待を裏切らない。音楽の方向性に多少のズレが発生したとしても、しっかり相手を納得させていく、それだけクオリティの高いものを創る、そういうコトを真摯に続けてきた人なのだ。

オーディエンスが気づかないほどの微細な不調でライヴを中断。これは穿った見方をすれば、客への迷惑を顧みない、わがままな所業とも言える。並みのアーティストなら、多少の不調を押してでも最後まで歌い通し、それを生き様のように鼓舞するだろう。こういう公演中止・振替のパターンだと、ご本人や事務所が被る損害も膨大だと思われる。でもタツロー氏はファン最優先で、誰にも文句を言わせないベスト・パフォーマンスを目指す。そして何より、自分自身にウソがつけない職人なのだ。

昨今、シティポップ・ブームで俄かにライヴが盛り上がっているアーティストはイロイロいるが、この期に及んで迷走中のヒトもいるし、それこそコロナ前から若いファンを着々と増やし続けているのは、タツローさんぐらいじゃないか。自分的にはコロナ以降タツロー・ライヴに行くことができていないけど、まずは体調を万全に整え、ツアーを完遂してほしいところである。

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