summer of 1982波の数dvd

SNSでは中山美穂急死ショック覚めやらず。自分も時間的余裕があったら、彼女主演、AOR満載のホイチョイ映画『波の数だけ抱きしめて』のDVDを見直して追悼ムードに浸りたいところだが、仕事は待ってくれないので、久々にコレを引っ張り出して聴きながら…。筆者監修選曲・解説によるAOR系コンピレーション『SUMMER OF 1982 ~ Kiwi FM Playlist』。実はコレ、『波の数だけ抱きしめて』のトリビュート・コンピなのだ。

もう少し詳しく説明すると、映画『波の数だけ抱きしめて』の公開が91年。湘南・茅ヶ崎のビーチに作られたミニFM局を舞台にしたこの映画は、主題歌こそユーミンだったが、82年が設定なので劇中歌はすべて洋楽AOR系の楽曲で締められた。そしてそのサントラ盤も、AORのコンピ盤さながらで。ただし当時は許諾の関係で劇中歌すべてがサントラ盤に収録されたワケではなかった。

それが2010年の DVD / Blu-ray化に合わせて、最初は未収録だった3曲を追加収録、劇中の登場順に曲順を変更したサントラのコンプリート盤が復刻され、自分が楽曲解説を担当した。そしてその2ヶ月後、あとをうようにこのスピンオフ企画『SUMMER OF 1982 ~ Kiwi FM Playlist』がリリース。お気づきと思うが、Kiwi FMというのは、映画に登場するミニFM局のこと。そしてその看板DJが、大学4年の女子大生:田中真理子(=中山美穂)という設定だった。

『SUMMER OF 1982』のコンセプトは、そのKiwi FMでオンエアされていたであろう架空のプレイリストを作るもの。だから1982年夏限定の、2枚組36曲。それより少し前の夏の定番AORはチョイスしたが、サントラとのダブリは1曲もなく、3枚まとめて楽しめる。もちろんココでも許諾が下りずに使えなかった曲はあったが、映画のジングルを数カ所に差し込むことができたので、曲順がとてもスムーズにまとまった。サントラにもジョージ・デュークやシェロル・リンが入っていたので、コチラもAORだけに絞らず、当時のヒットやブラック系も適当に。サンタナ<Hold On>やポインター・シスターズ<Slow Hand>はまさにそうだが、ビーチ・サイドのFM局というテーマは貫いている。後で知ったが、ビーチ・パーティのイメージでチョイスしたJ・ガイルズ・バンド<Centerfold>は、映画製作時にリクエストしたものの使えなかった曲だったそうで、まさに我が意を得たり。

1982


このようにバックカヴァーもカセットのインデックス風。中の自分の解説はDJ風の口語体で書いている。そういうシャレの効いたコンピだったのだ。

70年代のFMといえば、全国で数局しかなく、音楽番組は1ヶ月以上前に選曲してそれをFM雑誌に掲載。真面目な音楽ファンはカセットを用意し、エアチェックするのが一般的だった。しかし79年に登場したウォークマンが、81年に新型のWM2になって加速度的に普及拡大。音楽が街やリゾートへと持ち出されていくと同じタイミングで、大型輸入レコードショップが各地に展開し始め、ミニFM局へのニーズも一気に高まった。洋楽がそれだけ身近な存在にな理、気分次第でチョイスできる時代になったのだ。この映画の中で、ミポリン演じる田中真理子は、Kiwi FMをこう説明する。
「晴れの日には晴れの曲を。雨の日には雨の曲を。ココはそういうラジオ局なんです」(大意)

まさに時代の変わり目、音楽の在り方が変わったタイミング。そして今またサブスクの普及で、音楽と人との接し方に変化が来している。ハマトラ・ファッションが眩しかったミポリンの急死は、ひとつの時代の終わりの始まりのようにも感じてしまうな。

ちなみに、82年に就職に悩む大学4年生という田中真理子の設定は、実は自分とまったく同じだった。当時自分は約半年の短期バイトで、渋谷公園通りにあったアメリカンなカフェ・バーで週1〜2度DJ(ディスクジョッキー)をしていて、ビルボード・トップ40を中心に流しながらていた。曲紹介の喋りを交えてね。だからこの映画、とても他人事に思えないのよ。

既にこの2枚組コンピやサントラCDは入手困難だけれど、映像はまだ間に合うかも。

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