al jarreau_glow

最近、各方面で、AORとは? フュージョンとは?と問われたり、考えさせられる機会がやたら多い。自分の中では、もう遠の昔に答えらしきモノが出ているけれど、そういう質問が増えているのは、何度目かの波が来ているからか、はたまたその手のSNSグループの混乱ゆえか。そこで真っ先に思い出すアーティストの一人が、このアル・ジャロウ。Wikiに拠ると、ジャズ、ポップ、R&Bの3部門でグラミーを獲得した最初のソロ・シンガーだそうで。チャート上でクロスオーヴァー・ヒットを飛ばした人なら他にもいそうだが、そこはグラミー、ハードルは相当に高そうだ。

当ブログでジャロウといえば、『THIS TIME』『BREAKIN' AWAY』『JARREAU』といったジェイ・グレイドンのプロデュース連作をまず思い浮かべるだろう。いわゆるAOR色の強い作品群で、その傾向は88年作『HEART'S HORIZON』(ジェイとジョージ・デュークが制作分担)まで続いた。でももしかしたら一番バランス良くクロスオーヴァーしていたのは、この76年の2作目『GLOW(輝き)』だったかも。しかも90年代以降はレア・グルーヴ〜フリーソウルの人気盤となり、ネクスト・ジェネレーションへのエントランスに。従来ファンとは違うタイプの若手リスナーに支持を広げた。

プロデュースはデビュー作を手掛けたアル・シュミットと、黒幕的存在だったトミー・リピューマが連名で。前作はジャロウのオリジナル曲ばかりだったが、2作目では自作曲を4曲に抑え、アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノヴァ・スタンダード<おいしい水 (Agua De Beber)>、エルトン・ジョン<Your Song>、ジェイムス・テイラー<Fire And Rain>、スライ&ザ・ファミリー・ストーン<Somebody's Watching You>と、ポピュラリティーの高いカヴァーを並べた。特に注目なのは、アルバムのスターターでクラブ・アンセムになったレオン・ラッセル<Rainbow In Your Eyes (瞳の中のレインボウ)>。朗らかながらもグルーヴィーなシティ・ソウル・チューンだ。

参加メンバーは、デビュー作に参加したバック・バンドのトム・カニング (kyd) やジョー・コーレロ(ds)、ポール・スタールワース(b / アティチューズ)らに加え、ジョー・サンプルやウィルトン・フェルダー、ラリー・カールトンらクルセイダーズ勢、ウィリー・ウィークス、ラルフ・マクドナルド、ラリー・ナッシュ(L.A.エキスプレス)など。こうしたミュージシャンのセレクト、カヴァー曲のチョイスは、まさにリピューマ・ワークス。ジョージ・ベンソン『BREEZIN'』『IN FLIGHT』、マイケル・フランクス『THE ART OF TEA』『SLEEPING GYPSY』などと併せ、リピューマの仕事の第1期ピークと言っていいと思う。

そしてインタビューでジャロウ本人が指摘していた一番のミソがこれ。
「実はジャズ・ソングが1曲も入ってないのです。それがユニークなところ。私にとって重要なのは、ジャズそのものではなく、ジャジーなアプローチを取ること。ロックン・ロールでもR&Bでも、ジャズの要素を取り入れる。それが大事だと考えています」

彼が逝ってから、来年2月で8年が経つ…

輝き(紙ジャケットSHM-CD)
アル・ジャロウ
ワーナーミュージック・ジャパン
2012-05-23