america_albi

ウエストコースト・シーンを代表するヴォーカル・トリオとしてヒットを連発した70年代。ラス・バラードの曲を歌ってポップに、かつAOR寄りにシフトして見せた80年代。しかしその中間期に当たるデュオになってばかりの頃のアメリカは、過渡期として軽視されがちだ。でもメンバー以外の楽曲を取り上げ始めたのは、実はこの時期。次の82年作『VIEW FROM THE GROUND(風のマジック)』ばかりが注目されるけれど、ラス・バラードの楽曲は、早くもこのデュオ2作目『ALIBI』で取り上げていた。

セレクトされたラス・バラード作品は、アージェント在籍時に書いた<I Don't Believe In Miracles>。初出はコリン・ブランストーン『ENNISMORE』(72年)で、シングルとしてUKチャート31位。その後アージェントのライヴ盤『ENCORE』(74年)で自作曲として披露し、ピアノでイントロを弾き始めただけで拍手を受けるほどの人気を得ている。それを最後にソロに転じたバラードは、独立後のソロ第1弾『RUSS BALLARD』でも再びこの曲をピックアップ。きっと彼自身お気に入りのスロウ・ナンバーなのだろう。

この『ALIBI』では他にも、イングランド・ダン・シールズとの競作になったジョン・バドロフ(元シルヴァー)作<You Could've Been The One>、ペイジス<I Do Believe In You>なんてあたりをチョイス。ダン・ピークが抜けた穴を、外からの楽曲で補う姿勢を見せている。サスガにペイジスのコレはフィットしてない感があるけれど、どうせ彼らの曲を演るなら、もっとアメリカに似合う曲があるのにな。

オリジナルではジェリー・ベックリーの頑張りが効いていて、スターターの好曲<Survival>を筆頭に、ややロック寄りの<Right Back To Me>、ジェリーらしく甘酸っぱい<Coastline>、切ないバラード< One In A Million>とイイ曲が多い。デューイ・バネルの提供では、ハーモニーが美しい<Might Be Your Love>と、ハーモニカが印象的な<Catch That Train>あたりかな。

長く続いたジョージ・マーティンからプロデュースを引き継いだのは、フレッド・モーリン&マシュー・マッコウリーの名コンビ。アルバムとしては確かに多少の迷走を感じるものの、従来のアメリカとは違ったトライアルを行ない、その中からジェリーとデューイが次に繋がるモノを取捨選択していったのだろう。そうした意味では、低迷期とか過渡期とか言われる中に光明を見い出した、ターニング・ポイントに当たるアルバムだと思う。

参加ミュージシャンは、コーラス陣にJDサウザー、ティモシー・シュミット、トム・ケリーにリチャード・ペイジ。演奏にはスティーヴ・ルカサー/ディーン・パークス/ワディ・ワクテル (g), リー・スクラー (b), マイク・ベアード (ds), ジェイムス・ニュートン・ハワード/ジェイ・ウィンディング (kyd) など。ヒットが出ずに不遇を託ったアルバムなので、CDはあるうちに。

《amazon》
SILENT LETTER/ALIBI
AMERICA
BGO
2006-11-24

《Tower Records はココから》

《amazon》
Alibi
America
EMI Import
2002-02-26