ガイスターとして知られるガエル・ベンヤミンと、かつてナイトシフトというAORユニットを組んでいたフランスのミュージシャン、ジェローム・ブーレ。彼は昨年6月に亡くなっているが、その追悼プロジェクト第2弾として、ジェロームのワンマン・プロジェクト:ルイス・レイクの9年ぶり2作目『INTO THE LENS』が国内リリースされた。輸入盤国内仕様で、解説は筆者が担当している。
ジェロームの追悼プロジェクト第1弾は、ナイトシフトの17年ぶり2nd『THE FLYBUSTER』。09年に2人で共同制作した2曲分のベーシック・デモを元に、ガエルが大きくアイディアを膨らませて完成させ、ジェロームの一周忌にリリースした。対してこのルイス・レイク2作目は、ジェロームの闘病生活が始まった20年から制作し始めた模様。入院してすぐに進行性のガンが発見され、余命幾ばくもないと宣告されたらしいが、治療がうまくいったのか、病状が小康状態の時にコツコツとレコーディングを進めていたらしい。そして旅立つ数日前に、ジェローム自身が “新作『INTO THE LENS』を完成させたい”と最後の望みを吐露。その音源が盟友ガエルに委ねられた。
クレジットを確認すると、作編曲、プロデュース、録音、そしてサックスを除くすべてのパフォーマンスをジェローム自身が手掛けたことになっている。ガエルの役割は、マスタリングとアートワークだけだ。でもこれはどうにも信じ難く、実際はナイトシフトの時と同様、デモ音源からジェロームの音を抜き出し、ガエルが再構築したのではないかと思う。元来ひたすらポップなガエルに比べ、ジェロームの音の方がAOR寄りで叙情的。このアルバムもサウンド的にジェロームらしいところもあれば、むしろガイスターっぽい箇所もある。
ルイス・レイクとしてデビューした時には何も聞かされなかったが、ナイトシフトの1作目『FULL MOON』完成後のジェロームは、パリを離れてフランス東部の故郷ブサンソンに戻り、セラピストとしての勉強を開始。やがて家族と一緒に修道院を購入し、精神疾患を持つ人や地元コミュニティのため、13年にセラピストとして起業した。その一環で音楽療法を用いることもあったそうだが、それとは別に自分の音楽表現を進化させるために立ち上げたのが、このルイス・レイクだった。16年の1st『TALES FROM THE MAGIC SUN』を聴くと、その音はとてもイマジネイティヴで、スピリチュアルな要素が強かったと感じる。つまりそれは、ジェロームという人間を形成する音楽以外の面を投影したものでもあったのだと、今にして気づかされるのだ。そしてそれが、闘病しながら創ったこの遺作の原動力にもなったのだろう。
わずか50歳で早世したジェロームは、音楽的に何か特別大きな仕事を成し遂げたワケではない。でも本作のブックレットには、20ページ以上に渡って彼への追悼文や賛辞が掲載されている。ヒトの価値を決めるのは、名声や地位ではないのだな。
《Tower Records で購入》
クレジットを確認すると、作編曲、プロデュース、録音、そしてサックスを除くすべてのパフォーマンスをジェローム自身が手掛けたことになっている。ガエルの役割は、マスタリングとアートワークだけだ。でもこれはどうにも信じ難く、実際はナイトシフトの時と同様、デモ音源からジェロームの音を抜き出し、ガエルが再構築したのではないかと思う。元来ひたすらポップなガエルに比べ、ジェロームの音の方がAOR寄りで叙情的。このアルバムもサウンド的にジェロームらしいところもあれば、むしろガイスターっぽい箇所もある。
ルイス・レイクとしてデビューした時には何も聞かされなかったが、ナイトシフトの1作目『FULL MOON』完成後のジェロームは、パリを離れてフランス東部の故郷ブサンソンに戻り、セラピストとしての勉強を開始。やがて家族と一緒に修道院を購入し、精神疾患を持つ人や地元コミュニティのため、13年にセラピストとして起業した。その一環で音楽療法を用いることもあったそうだが、それとは別に自分の音楽表現を進化させるために立ち上げたのが、このルイス・レイクだった。16年の1st『TALES FROM THE MAGIC SUN』を聴くと、その音はとてもイマジネイティヴで、スピリチュアルな要素が強かったと感じる。つまりそれは、ジェロームという人間を形成する音楽以外の面を投影したものでもあったのだと、今にして気づかされるのだ。そしてそれが、闘病しながら創ったこの遺作の原動力にもなったのだろう。
わずか50歳で早世したジェロームは、音楽的に何か特別大きな仕事を成し遂げたワケではない。でも本作のブックレットには、20ページ以上に渡って彼への追悼文や賛辞が掲載されている。ヒトの価値を決めるのは、名声や地位ではないのだな。
《Tower Records で購入》