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連日ニュースや新聞紙面を賑わせているチャイナ(中国)だが、こちらのチャイナはほとんど忘れられた存在。廉価盤CDでの復刻から今年で9年が経つので、在庫があるうちにチェックしとき、というコトで。このチャイナは、カナダのAOR系3人組で、81年にアルバム『CHINA(夜明けのダンサー)』を1枚出したきり、瞬く間に消えてしまったグループ。でもその3人がそれぞれ70年代に味のあるソロ・アルバムを出していて、そのスジのマニアたちには忘れ難いポジションにいたのだ。

3人のメンバーで一番知られているのは、カナディアン・スワンパーとして70年代前半に3枚の好作を出しているクリストファー・キーニー(カーニー表記もあり)。中でも3rdアルバム『SWEETWATER』では、ドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカーの初期楽曲を取り上げていたり、2nd『PEMMICAN STASH』 にはカナダのザ・バンドと謳われたベアフット出身のドウェイン・フォードまで参加している。

リーダー的存在で唯一の米国人ビル・キング(kyd)は、リンダ・ロンシュタットやアンドリュー・ゴールドとの共演歴を持ち、ジャニス・ジョプリンのコズミック・ブルース・バンドにいた時期もあるとか。US〜カナダを行き来しながら、70年代前半にカナダ・キャピトルから2枚のリーダー作を発表。1stアルバムのタイトル曲<Goodbye Superbad>はカナダでトップ40入りし、カナダのグラミーと呼ばれるジュノー賞にノミネートされた。その後再びUSに戻り、マーサ・リーヴスやポインター・シスターズのツアーでミュージカル・ディレクターを務めている。

そのビルのアルバムでギターを弾いていたのが、カナダのブラス・ロック・グループ:ライトハウスのボブ・マクブライドの弟ダニー・マクブライド。ビルとは人気ミュージカル『JESUS CHRIST SUPERSTAR』のカナディアン・キャストとして知り合い、その後ロンドンでソロ作を制作。やはりUSを経てトロントへ戻ったところでビルと再会し、チャイナを結成している。

プロデュースは、ボブ・ディランやサイモン&ガーファンクル、ザ・バーズ、レナード・コーエンらを手掛けたボブ・ジョンストン。バックには、リー・リトナー/アルバート・リー/ジェフ・バクスター(g)、エイブラハム・ラボリエル(b)、アンディ・ニューマーク/マイケル・ベアード(ds)、マイケル・ボディッカー(syn)、ポウリーニョ・ダ・コスタ(perc)という有名どころがズラリ名を連ねる。曲はメンバー3人が持ち寄り、それをビル・キングとダニー・マクブライドがアレンジ。とりわけ目を引くのが、“Creative Arranging Consultant”とクレジットされたジェイ・グレイドンの存在だ。当人の後日談によると、「僕は何もしてない」そうなので、ヒョッとしたら誰かにテープを聴かされて軽くアドヴァイスした程度なのかも。…となると、コーディネイターにフランク・デカロ(ニック・デカロの兄)の名があるので、彼がキーパーソンだった可能性も…。

サウンド全体から沸々と湧き上がるのは、後期ドゥービー・ブラザーズやスティーリー・ダンからのインフルエンス。3人のメンバーが全員歌えるので、コーラス・ワークが心地よく、時折マイケル・マクドナルドにそっくりなスモーキー・ヴォイスが耳をくすぐる。楽曲によって多少の凸凹は感じるものの、当時のワン・ショット的AOR作品としてマニアは外せない一枚だろう。陰陽のシンボルで、後にサーフ・ショップのロゴにも使われた円形マークをあしらった色気のないオリジナル・アートワークから一転、ブラインド越しにヌードが見えるセクシー・ジャケも、日本での注目度をアップさせた。国内盤ジャケでは、その円形マークが透かしで浮かび上がるのもオシャレだったなぁ。

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