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稀代の名R&Bシンガー:ルーサー・ヴァンドロスのドキュメンタリー映画が、昨年11月から全米公開。年が変わってからは、CNNなどで配信されているそうだ。現時点では日本公開の予定はないようだが、これに合わせて新しい2枚組ベスト盤『NEVER TOO MUCH:GREATEST HITS』がUSリリース。89年にレコーディングされたビートルズ名曲<Michelle>の未発表カヴァーがハイライトになっている。個人的にはルーサーのアルバムはすべてリアルタイムで押さえてきたし、ベスト盤も複数手元に。なのでこの1曲のためにまた編集盤を買うつもりはないなぁ…。でもルーサーが話題となれば気もそぞろ。久々にオリジナル・アルバムをいくつか引っ張り出して、聴いてしまったりして。

自分にとってのルーサー・ヴァンドロスは、もう何と言われたようと初期作品群に尽きる。特にソロ・デビュー・アルバム『NEVER TOO MUCH』(81年)は、チェンジで歌っていたシンガーがデビューした!とすぐに飛びつき、メチャメチャ聴き倒した。今までの自分の音楽人生で聴いた数多のロイク系作品で、一番聴き込んだのがこの『NEVER TOO MUCH』だろう。若いのにオーセンティックなスタイルで、シルキーな歌声にディープな質感を宿す。まだディスコ全盛の余韻が残る時期だったから、それがすごく新鮮に映った。クワイエット・ストームとかも、マーヴィン・ゲイの死やルーサー人気以降の出来事だしね。マーカス・ミラーのベースにしても、それ以前からフュージョン系のスタイリッシュなスラップ名手として知っていたものの、こういうR&Bもイケるんだと驚いた覚えがある。

とにかく1st『NEVER TOO MUCH』がダントツに好き。けれど後続『FOREVER, FOR ALWAYS, FOR LOVE』『BUSY BODY』も愛聴して。<Since I Lost My Baby>とか、カーペンターズのカヴァー<Superstar>とかサイコーだったな。 80年代後半の4作目『THE NIGHT I FELL IN LOVE』になると、少しマーケットへの目配せが強くなってくるけど、まだ全然OK。その次の『GIVE ME A REASON』での激ヤセぶりにはビックリしたが、やっぱりこの辺りからルーサーの意識が変わりつつあったんだ、と今にして思う。音楽や歌より、今度のルーサーは何ポンド?なんてコトが話題になるようじゃあダメでしょ? マライア・キャリー、ジャネット・ジャクソン、そしてビヨンセまで、数々の大物デュエット共演も、出来自体は良くても、結構あざとさが目立っていたような…。だから自分にとってのルーサーは、これ以前の初期4枚、と言っていい。

ちょうど『GIVE ME A REASON』あたりから打ち込みも幅を利かせるようになって、それも物足りなさを助長した。ルーサーにはあのヴェルヴェット・ヴォイスがあり、群を抜く歌唱力も備えている。なので良い曲に恵まれれば、バラードは素晴らしいモノができてくる。そこで問題になるのはアップ系だ。なのにココで積極的に打ち込みを使うことは、自ら進んで流行にまみれていくに等しい。それこそルーサーらしさが削がれていくようにも感じていた。当時の自分は打ち込み否定派ではないものの、プログラムを使うなら使うなりの理由、必然性を表現してよ、と考えていたクチ。ソロ・デビュー直後のルーサーは研ぎ澄まされたバンド・アンサンブルが素晴らしかったのだから、それを犠牲にする意味が見つからなかった。この辺り、いつからルーサーにハマったか、世代によって違うとは思うが…。

実際のところルーサーには、<Never Too Much>や<She's A Super Lady>に匹敵する磁場の強いビート・チューンは生まれなかった。あの歌声が一番映えるのがスロウやバラードなのは疑う余地などないけれど、スターになりたい、白人マーケットでも成功したいと強く望んでいた彼は、悪戦苦闘を続けるうち、徐々に大事な何かを見失っていった。そんな気がしている。このドキュメンタリーには、そんなルーサーの内面の変化まで描かれているのかな…?



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