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sam & Dave_soul man

1960年代にソウル・デュオ、サム&デイヴ(Sam & Dave)の片割れとして多くのヒットを放ったレジェンド:サム・ムーアが、1月10日朝、米フロリダ州コーラルゲーブルズの自宅で死去。死因は何かの手術後に発症した合併症とのことで、詳細は不明。89歳だった。70年のサム&デイヴ解散後は不遇の期間が長く、06年のソロ作『OVERNIGHT SENATIONAL』で奇跡的な完全復活。テン年代いっぱいは来日を重ね、元気なステージを見せてくれたが、結局 作品リリースには恵まれないまま逝ってしまった。

サム・ムーアことサミュエル・デヴィッド・ムーアは、1935年、米フロリダ州マイアミ生まれ。20歳代前半の頃に、ジョージアの片田舎からやってきたデヴィッド・プレイターと知り合い、ゴスペルやレイ・チャールズ、ジャッキー・ウィルソンなど同じルーツを持つことから意気投合。すぐさまデュオを結成し、60年代に入ってすぐに地元レーベル:マーリンやルーレットからシングルを出し始めた。これらはヒットには縁がなかったが、後にダイナマイト・デュオと呼ばれるキッカケとなった熱狂的ライヴ・パフォーマンスはマイアミ界隈で既に話題に。そのライヴを観たジェリー・ウェクスラーがすぐ契約に動き、彼が籍を置くアトランティックが当時配給していたスタックスに彼らを紹介。アイザック・ヘイズ&デヴィッド・ポーターとの幸運な邂逅も手伝い、そこからサム&デイヴの快進撃が始まった。

だが評判とは裏腹に不仲が目立つようになってきた彼らは、人気絶頂の70年に解散。それぞれソロ活動に向かうが、サムがプロデューサーに立てたキング・カーティスが急死するなど不運が重なり、結局2人は断続的にデュオを再開。70年代終盤にはブルース・ブラザーズが人気を博し、<Soul Men>の元ネタ的にサム&デイヴにも注目が集まる。しかし彼ら自身の本格的復活には繋がらず、デヴィッド・プレイターは88年に交通事故死。92年には、サム&デイヴとしてロック殿堂入りを果たしている。残ったサムはベテラン同士の懐メロ的共演や、映画やTVに出演。『ブルース・ブラザーズ2000』では牧師役でアレサ・フランクリンと共演した。

それだけに、06年のサム復活は大歓迎された。ゼロ年代に入って、サム&デイヴ解散直後にレコーディングされた未発表アルバム『PLENTY GOOD LOVIN'』が日の目を見ていたものの、ランディ・ジャクソンがプロデュースした『OVERNIGHT SENATIONAL』はちょっと桁違いの豪華さで。何せゲストがブルース・スプリングスティーン、ジョン・ボン・ジョヴィ、スティーヴ・ウィンウッド、、ポール・ロジャース、エリック・クラプトン、スティング、マライヤ・キャリー、ビリー・ギボンズ(Z.Z.トップ)、シーラ・E.、ファンテイジアなど超多彩。収録曲もほとんどがカヴァー曲だが、そのセレクトが奮っていて、アン・ピープルズ、レイ・チャールズのように如何にも…な人たちから、トニー!トニー!トニー!のような後継者、ポール・キャラックのような白人ソウル・マン、そしてキワモノのミニ・バニリが取り上げたダイアン・ウォーレン楽曲まで、どれもニヤリとさせられた。そしてラストは、このアルバム発売前に亡くなったビリー・プレストンに捧げた<You Are So Beautiful>が締めている。

まぁ、当時からこの流れがずーっと続くとは思ってはいなかったけれど、コレが単発に終わり、その後は中途半端なインディ盤しか作れないまま逝っちゃうとは…。センセーショナルな復活だっただけに、そこだけがちょっと残念だったな。それでもサム&デイヴ時代の素晴らしい歌いっぷりは、永遠に語り継がれていくことだろう。

Rest in Peace...