garth hudson800x_image
bob dylan & the bandthe band_music fromthe band
the band_cahootsthe band_southern crossthe band _jericho

訃報の連鎖が今日も続く。日付が変わって変わって間もなく飛び込んで来たのは、ザ・バンド最後の生き残り、ガース・ハドソン逝く、の報だった。ウッドストックにある介護施設に入居していたらしく、現地時間1月21日朝、眠るように安らかに息を引き取ったという。享年87。

ザ・バンドについては今さら書くコトはないけれど、キーボード/オルガンを弾き、時にはサックスを吹くなどして、マルチ・インストゥルメンタリストとして活躍したガース・ハドソンに関しては、よく分かっていない人も多いんじゃないかと思う。しかしメンバーからはマッド・プロフェッサーと呼ばれ、彼らが音楽的に煮詰まったり、コードやハーモニーで疑問が湧くと、それをいつも解決してくれる、そんな頼れる存在だったそうだ。寡黙で、いつも黙々と演奏していたそうだが、「ガースがいたから、オレたちもプロらしい音が出せるようになった」と生前のレヴォン・ヘルム。

ガキの頃はボブ・ディランが好きになれず、ザ・バンドとの出会いもスッカリ遠回りをした自分だけれど、ザ・バンドをザ・バンドたらしめていたのは、実はレヴォンでもロビー・ロバートソンでもなく、最後に音を被せるガースだった、というのは分かる気がする。

上掲の『THE SEA TO THE NORTH』は、邦題『ガースの世界』として01年に発売されたソロ・アルバム。プロジェクトを主導した作品は他にもあるらしいが、純然たるソロ・アルバムとしては、結局これが唯一の存在といっていい。訃報を聞いて久々に引っ張り出してみたけれど、アタマで理解しようとしても不可能な、ある種独特な世界観を持った作品。ロック、ジャズ、フォーク、カントリーなど、ボーダーレスな音を構築している意味ではクロスオーヴァーに違いないけど、即興性、自由度が高く、そのクセ緊張感とは無縁のゆったりした時間が流れていく。楽曲によってはクラシカルだったり、トラディショナルだったり、あるいはウェザー・リポートが酔っ払ってグズグズに演奏しているようなナンバーも…。

参加ミュージシャンにはレヴォン・ヘルム、ウィリー・ウィークス、作詞でエリック・アンダーソン、そして奥様モードが時折ヴォーカルで。そんな中、ガースはサックス、ピアノ、オルガン、アコーディオン、シンセサイザーなどをプレイ。まるで田舎のロード・ムービーのサウンドトラックを聴いてるような、ルーズだけれど安心できる感覚を醸し出す。これはもしかして、アートワークのドリーミーな別世界への誘い(いざない)…? かくしてガースは白い鷲(?)の背中に跨ったまま、星空の向こうへと旅立っていった…

Rest in Peace...