diana ross_baby it's me (1)

書きモノの都合で久々にコレ、ダイアナ・ロスの77年作『BABY IT'S ME』。サントラ盤やマーヴィン・ゲイとの共演作、ライヴ盤を除くオリジナル・ソロ・アルバムとしては7作目に当たる。プロデュースはリチャード・ペリーがフル稼働。ダイアナ的にはマイケル・マッサーやハル・デイヴィス、ボブ・ゴーディオあたりを曲ごとに、というアルバムが続いていたから、ひと組のプロデューサーに制作を丸投げしたのは、70年の1stソロ『DIANA ROSS(エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ)』と71年の3rd『SURRENDER』を手掛けたアシュフォード&シンプソン以来。それだけリチャード・ペリーを信頼し、期待を掛けていた、というコトなのだろう。

73年に<Touch Me In The Morning>が全米No.1になって以来、マイケル・マッサーのバラードを中心に作品発表を組み立てていた印象を受けるが、そろそろそのパターンを変えて行きたい、そんな意識がこのアルバムには漂う。リチャード・ペリーといえば、カーリー・サイモンやバーブラ・ストライサンドなどの女性シンガーを得意にしてきたし、リンゴ・スターやアート・ガーファンクルでもヒットを出してきた。この前後ではレオ・セイヤーやマンハッタン・トランスファーも手掛けている。ダイアナはペリーに対し、そういうオールラウンドの手腕、ベテランと若手ミュージシャンをミックスしたキャスティングの巧みさに大きな可能性を見出したのではないか。

直近の大ヒット・バラードを意識してか、スティーヴィー・ワンダーから<Too Shy To Say>をカヴァー。ビル・ウィザーズ作品からも<The Same Love That Made Me Laugh>をチョイスしている。ベテラン:ジェリー・ラガヴォイ、当時新進ソングライターとして頭角を現わしつつあったトム・スノウは、それぞれ新曲と思しき2曲を提供。また人気急上昇中だったメリサ・マンチェスターのアルバムから、同時期にキャプテン&テニールも歌った<Come In From The Rain>(キャロル・ベイヤー・セイガーとの共作)をピックアップし、<Confide In Me>の書き下ろしも歌っている。

またミュージシャンにしても、まだデビュー準備中のTOTOから、スティーヴ・ポーカロを除く5人を起用。特にリズム隊のプレイが良くて、ジェフ・ポーカロのドラムが好きな人は必聴と言える。ファンキーな<Your Love Is So Good For Me>では、ジェフに加えてレイ・パーカーJr.がギター、ベースの両刀使いで頑張って、ベースがブンブン。コレ、言わば一人シックのようで…。この曲があったからこそ、ダイアナは後年シックと手を組んだのだ、と思ってしまうな。ストリングス・アレンジもジーン・ペイジ、ラー・バンドのリチャード・ヒューソン、デヴィッド・フォスター、デル・ニューマンらを併用。そうした数々のチャレンジのテーブルを用意したのが、他ならぬリチャード・ペリーだったと思う。

他にもマイケル・オマーティアン/ジェイムス・ニュートン・ハワード (kyd), リー・リトナー (g), スコット・エドワーズ (b), エド・グリーン (ds), レニー・カストロ/オリー・E・ブラウン (perc) と、豪華メンバーが参加。でもダイアナ自身がそれに歌い負けしていないのが、大きなポイントなのだ。ダイアナでAOR寄りのアルバムというと、ドナルド・フェイゲンやマイケル・マクドナルドが参加した83年作『ROSS』を思い出すが、アレは楽曲によって方向性がバラバラで…。でもこの『BABY IT'S ME』は、アルバムとしてのまとまりがあり、ダイアナもシッカリ楽曲を昇華している。チャート・アクションはもうひとつ伸び悩んだけれど、その後のダイアナを占う上でも、なかなか重要なポジションにある作品だと思うな。

なおサブスクには、CDで聴けない未発表曲/未発表テイク満載の2014ミックス入りエクスパンデッド・エディションが上がっているので、興味のある方は是非チェックを。

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ベイビー・イッツ・ミー
ダイアナ・ロス
ユニバーサル ミュージック
2014-12-03

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