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今回はアーティスト・ガイドのご紹介。ミュージシャンでもある和久井光司氏責任編集シリーズ】の最新刊『レッド・ツェッペリン完全版』を。和久井氏が展開している完全本シリーズは、いくつか持っているけれど、誰が書いても同じようになるヒストリーとディスク・ガイド中心の構成から逸脱。基本は押さえつつも、そこから氏とそのお仲間ならではの視点、スタンスが反映されていくような興味深い内容になっている。ZEPPに関しちゃコチラも50年間、一応ファンをやってきたからね。並みのガイド本じゃ、到底満足できないのよ。

でも氏のガイド本は、彼の自分史とアーティストとの関係性から考察されていくことが多い。これに対して「オレの知りたいのはZEPP。オメエのことなんてどうでもイイよ」という考え方もある。でも自分の目線、立ち位置を説明する上で、実体験を書くこと以上に説得力のある文言はまずないはず。それを理解して読むと、書き手の姿が見えないガイド本よりも俄然面白くなる。SNSでは時折過激な発言も飛び出すけれど、あの人は計算づくでやっているのだ。

今回もいきなり家賃の話から始まって面喰らったけど、読み進めればちゃんと繋がる。アーティストを紹介するとき、その音楽がどういうルーツを持っているかを解説したり、アーティストの成長プロセスを紹介するのはごく普通。でも音楽面のみならず、それを時代・社会・経済・文化などの背景を俯瞰し、横軸と縦軸をシンクロさせていくと、一気に視野が広がる。自分は大学で社会学を学んだせいか、そういう音楽の向こう側に見え隠れするモノを探し、それがアーティストにどんな影響やアイディアを与えたかと考えるのが好きなのだ。

ZEPPのディスコグラフィーに関しても、ロック名盤の代表格『IV』や、ブルース進化系としてのハード・ロック傑作『II』に対するスタンスは結構クール。一応の評価はしてるけれど、そんなのドコでもやっているからね。で、最大級の評価を与えられているのが、ナンと『HOUSES OF THE HOLLY(聖なる館)』。コレ、思わず笑っちゃいました。だって自分が心密かに ZEPPの裏名盤として愛して来たのが、まさに『聖なる館』なのだから。初めてフルで聴いたZEPPが、当時発売直後だった『PHYSICAL GRAFFITI』だったので、アチラに対する思い入れも深いのだけれど、2枚組C/D面から2曲ぐらい選んでA/B面に加え、シングル・アルバムとして出していたら…、という思いは強い。その反動もあってか、『PRESENCE』は鋼のようなハード・ロック・アルバムになったと思う。自分にとってのZEPPは、このあたりがピーク。最近はコンプライアンス的問題意識から、ヒプノシスのジャケが掲載NGになったりする『聖なる館』だけど、このアルバムの多様性に心躍るZEPPファンは、この本、必読でしょう。

ZEPPが影響を与えたと思しきパンク〜グランジ世代の名盤選というのも、かなりユニーク。ヘヴィ・メタ、ハード・ロック系後継者を掬い上げるんじゃ当たり前過ぎるとはいえ、これはやはり和久井本ならでは。自分的には縁の薄いフィールドなので、なるほどねぇ、なんて…。逆にチャンと聴き直そうと思ったのは、ロバート・プラントのソロ作品群。グラミーを受けたアリソン・クラウゼとの共演盤は当時よく聴いたけれど、「なんだかなぁ〜」と思って遠ざけてしまったアルバムもあるんだよなぁ…。

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レッド・ツェッペリン完全版
河出書房新社
2025-01-28

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