peter allen_not the boy

デヴィッド・フォスターのプロデュース、ジェイ・グレイドンやスティーヴ・ルカサーの参加もあって、AOR名盤としてチョクチョク取り上げられる80年作『BI-COASTAL』。それに対して、次に出たアリスタ移籍第1弾の83年盤『NOT THE BOY NEXT DOOR』は、充実した内容の割にどうも扱いが軽い。確かにエアプレイ〜TOTO系勢揃い、とはいかなかったが、アレンジが山下達郎でもお馴染みの巨匠チャーリー・カレロ。多忙のためか、プロデュースから外れたデヴィッド・フォスターも、1曲アレンと共作してピアノを弾いているのにね。

キャバレー・スタイルのエンターテイナーとして人気が高く、カーネギー・ホールあたりでコンサートを打てば、1週間〜10日間公演がいっぱいになる。ソングライターとして評価が高く、オリヴィア・ニュートン・ジョン<I Honestly Love You(愛の告白)>で全米No.1ヒットとグラミー獲得。メリサ・マンチェスターやリタ・クーリッジで知られる<Don't Cry Out Loud(あなたしか見えない)>、パブロ・クルーズ<I Go To Rio>でもペンを取る。フォスターと共作して竹内まりやに贈った<Fly Away>は、『BI-COASTAL』にも収められた。なのにソロ・アルバムはセールス面で苦戦続きで、ヒット曲も出ない。それでもバート・バカラック夫妻らと共作したクリストファー・クロス<Arthur's Theme(ニューヨーク・シティ・セレナーデ)>が大ヒットしてアカデミー主題歌賞に輝き、ニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールでは自身の10夜連続公演を大成功させるなど、アレン人気は上げ潮状態。それを駆ってのアリスタ入りだった。

プロデュースは旧知のリチャード・ランディス。元々はシンガー・ソングライターとしてアルバムを出していたが、成功せず、制作畑に転身。前後してニールセン=ピアソン、ジュース・ニュートン、ヴァン・スティーヴンソンなどを手掛けているので、AORフリークならご存知だろう。アレンとの共作者に名を連ねるのは、フォスターのほか、定例コンビであるキャロル・ベイヤー・セイガーに、前作から組んでいる<Footloose>のディーン・ピッチフォード、トム・キーン。つまり、プロデューサーが交替しても、基本路線は前作踏襲なワケだ。そしてソングライターに目が利くクライヴ・デイヴィスの息が掛かった現場らしく、トム・スノウとエリック・カズの共作、ディック・セント・ニクラウスの提供曲が投入された。ちなみにトム・スノウは、この前年にアリスタから3rdソロ『HUNGRY NIGHTS』を発表。エリック・カズと書いた軽めのポップ・ソング<You Haven't Heard The Last Of Me>が本作からの1stカットに選ばれ、アダルト・コンテンポラリー・チャート15位まで上昇している。

参加ミュージシャンも興味深く、メキメキ頭角を現してきた頃のヴィニー・カリウタとニール・ステューベンハウスをボトムに固定。ギターには元ペイジスのチャールス・イカルス・ジョンソンやフレッド・タケット、サックスに名手トム・スコットらをキャスティングしている。まぁ、確かに『BI-COASTAL』のレヴェルには届かなかったかもしれない。が、若手をうまく使ったチャーリー・カレロの采配が見事で、前作にはない溌剌感、エネルギッシュなフィーリングが漂っている。

ゲイだろうとLGBTだろうと、イイ音楽に性別は関係ない。しっかし、アレンが死してもう33年。コレも廉価盤があるうちに買っとけ、だな〜。

《amazon》

《Tower Records はココから》