war live in japan

先週末にBlueNote Tokyoで行われた来日公演が大好評を呼んでいるウォー。少し前に代表曲<Why Can’t We Be Friends?>がビールのCMソングに採用されたり、ちょうど初来日から50周年ということで注目度が上がったようだけれど、ソールド・アウトとは驚いた。お陰で観に行くかどうか悩んでいた自分は諦めざるを得なくなったけれど、このライヴ盤を聴いて、改めてチョッと後悔しているところだ。

一般的にウォーといえば、ソウル〜ファンク・バンドと認識されることが多い。でも実際はラテンやジャズ、ロック、ポップスの要素も多分に混じっていて、クロスオーヴァーしたサウンド・スタイルを持っている。黒人メンバーの中に一人、デンマーク人のハーモニカ奏者リー・オスカーが入っているのがシンボリックだ。特に日本ではこのリー・オスカー人気が高く、70年代後半に出したソロ作群はどれもそこそそこヒット。CMに使われたり、日本映画のサントラ盤なども作っていた。かくいう自分も、ウォーに関しちゃラジオでヒットした<The Cisco Kid>を知っていたぐらい。ちゃんとアルバムを聴いたのは、それこそリー・オスカーのソロ経由だったか、ジョージ・ベンソン<The World Is A Ghetto>のカヴァーがキッカケだったか…。80年代半ばあたりからR&Bシーンの風景が変わり、ウォーも御多分に洩れず失速してしまったけれど、この74年の日本公演ライヴでは、まさに全盛期の彼らのパフォーマンスがたっぷり堪能できる。

今でこそ、ウォー=ジャム・バンドと認識され、このライヴ盤のキャッチ・コピーにもそう謳われているけれど、そもそもジャム・バンドという括りは、ゼロ年代に入った頃に人気急上昇したソウライヴなど、インスト系ジャズ・ファンク・バンドを形容する言葉として使われるようになった。そのルーツとして、グレイトフル・デッドやオールマン・ブラザーズ・バンドみたいな大御所に名が出てきたのだ。そして彼らのソウル〜ファンク版がウォー、というコトなのだろう。個人的にウォーの場合は、ジャム・バンドと呼ばれるより、ヴォーカリスト不在の歌えるジャズ・ファンク・バンドと表現した方がシックリ感がある。ルーズなファンキー・グルーヴに乗せてアドリブ・ソロを展開するところはクルセイダーズにも通じるし、初期アヴェレージ・ホワイト・バンドのインスト曲にも似ている。彼らもクルセイダーズをカヴァーしていたから、やっぱり何処か通じているな。

ウォーをヒット曲やスタジオ・アルバムでしか聴いたことがない人だと、このライヴ盤で「こんなにタップリ演奏を聴かせるグループなんだ」と驚くだろう。<The World Is A Ghetto>はアルバム・ヴァージョンからして10分越えの長尺だけれど、それがココではそれが15分。オリジナルが4分程度の人気曲<All Day Music>も、ゆったり10分以上に延びている。熱量は高いが、イケイケで攻め立てるダンス・ミュージックとしてのファンクではなく、ライヴの現場で鍛え上げられたミュージシャンたちが創るプレイ・スタイルとしてのファンク。その本領がこのライヴ盤に濃縮されているワケだ。

もちろん全盛期ウォーとしては、ひと足早く72年にライヴ盤『WAR LIVE』を出している。でも90年代初めにCD化されたものの、国内発売はナシ。探しても入手困難な状況が長く、若い世代は彼らの実態に触れる機会はなかった。ゼロ年代以降、何度か来日しているものの、今回のように話題になった記憶もない。おそらくこの日本公演ライヴの発源で、初めて全盛期ウォーの音に接する、そういう人が多いと思う。74年のライヴなので、人気盤『WHY CAN’T WE BE FRIENDS?』はまだ世に出てないが、そこから先行して3曲がお披露目されているのも嬉しいポイント。翌年全米トップ10入りする<Why Can’t We Be Friends?>は、この時のジャパン・ツアーで触れ合った日本のファンとの交流から発想を得た、という話もある。なるほど終盤に収められた<Shizuoka Chant>は、4分にも及ぶアンコール要求の拍手。こういうのを収めてしまうあたり、ウォーから日本への感謝の表れと言えるかもしれない。

今どき珍しいCD2枚組で、2時間近いフル・ライヴ。静岡公演を中心にしつつ、東京・大阪・神戸の音源も入っているそうで、どうやらワン・ステージを丸ごとパッケージしたモノではないらしい。けれど当時のコンサートの臨場感は、ビンビンとストレートに伝わってくる。今回の来日に合わせて発掘されたライヴ音源だけど、シッカリとワールドワイドに出るそうで、最近世に氾濫巣るハーフ・オフィシャルの流出ライヴ盤とはハナから作りが違っている。もっと言えば、これまた最近増えている映像作品から音だけ起こしたライヴ・アルバムとも、制作スタンスが異なる感覚。言わば普段着のままのライヴ・パフォーマンスを、何も盛らずにそのままオフィシャル作品化した、そういうハンドメイド感がいい。

今回来日した現行ウォーは、オリジナル・メンバーはロニー・ジョーダン (kyd) ただ一人。しかもワン・ステージ70分程度というライヴ・レストランでのパフォーマンスなので、何処までこのライヴ盤と共通していたかは分からない。でもココには、70年代の外タレ来日公演の空気感さえもパッケージされている気がするなぁ。



《amazon》
ライヴ・イン・ジャパン 1974 (特典なし)
ウォー
ワーナーミュージック・ジャパン
2025-01-29

《Tower Records はココから》
《amazon》

《Tower Records はココから》