carole king_love makes

書きモノの流れでキャロル・キングの01年作『LOVE MAKES THE WORLD』。リリースからもう24年が経つワケだけど、気がつけば彼女はコレ以降、オリジナル・ソング中心の新作を出していないのだな。企画作としては11年にホリデイ・アルバムがあったし、本作を受けての『LIVING ROOM TOUR』やジェイムス・テイラーとの共演ツアー、更に往年の発掘ライヴなど、リリース自体はそれなりに多かった。キャロル自身がメディアの前に出てくることも、たまにはあった。けれどニュー・アルバムはスッカリ途絶えてしまっていたのだ。

かく言う自分も、このアルバムをスピンさせたのは久し振り。普段は「キャロル・キング聴こう!」と思っても、なかなかココへは行かないからな、やっぱし。発売当時は飛びついたし、頻繁に聴いていたから、なかなか日本盤が出ないことに憤ったりもした。けれどその後は立て続けに来日してくれて、シッカリ動く姿をナマで。今や80歳越えだから、第一線を退くのは仕方がないし、ジェイムス・テイラーとのワールド・ツアーは最後の顔見世興行的な意味合いがあったとされる。それでも噂された引退は否定し、その後もイベントに姿を見せたり、単発的なライヴを行なったり…。新曲を書いたりするかどうかは微妙だけれど、何かインスピレーションが下りてきたりすれば、可能性は全くゼロではない、と解釈している。

で、現時点での最後のオリジナル・アルバム『LOVE MAKES THE WORLD』。親しい友人である作詞家キャロル・ベイヤー・セイガーがエグゼクティヴ・プロデューサーとなって、集められた全12曲。遅れて登場した日本盤には。ボーナス・トラック1曲追加。更に07年に登場したデラックス・エディションは、未発表曲を含む4曲にMV2曲やメイキング映像などを収録した2枚組仕様で、アートワークも変更された。

でもやっぱり、本編がいいのよ。そりゃあ『TAPESTRY(つづれおり)』みたいにスタンダード化したアルバムとは比べるべくもない。でもその30年後の自分をありのまま、至って自然体で表現している。それでいて時代と乖離するでもなく…。その後のツアーが "LIVING ROOM TOUR" と命名されたのを知った時は、ホントに膝を打ったものだ。

プロダクト的には、大きく分けて3組のチームがあったよう。97年〜01年に書いた楽曲をメインにしているので、その制作時期によるものだろう。両キャロルが仕切った曲はそれぞれ、ベイビーフェイス、デヴィッド・フォスター、ジャズ・トランペットのウィントン・マルサリスをフィーチャーし、彼らの持ち味をふんだんに。元ハドソン・ブラザーズで、リンゴ・スターやエアロスミス、スコーピオンズ、シェール、ハンソンらのプロデュースで名を成したマーク・ハドソンとのコラボでは、彼の人脈にいるポール・ブレイディを巻き混み、セリーヌ・ディオンに提供した<The Reason>を本人ゲストでセルフ・カヴァー。ザ・ウィルソンズ(ブライアン・ウィルソンの娘たち/元ウィルソン=フィリップス)に書いた<Monday Without You>では、何とスティーヴン・タイラーがゲスト参加している。いずれもなかなか豪勢な作りになっているのダ。

でも一番シックリくるのは、やはりキャロル自身がイニシアチヴを握った楽曲で。呟くように歌うタイトル曲<Love Makes The World>、アルバム終盤を飾る3曲連続のバラード群は、まさにナチュラル・ウーマンの面目躍如。加えて2番目の夫だったチャールズ・ラーキーとは、アルバムのハイライトのひとつであるK.D.ラングとのデュエット<An Uncommon Love>、そして最初の夫ジェリー・ゴーフィンと64年に書いた<Oh No Not My Baby>を、キャロルのピアノとラーキーが弾くウッド・ベースだけで表現。この辺りが彼女の人間としての深みをさりげなくアピールしているようで、本当に素晴らしい。張り上げるとチョッピリしゃがれる人懐っこいう歌声も、ずーっとずーっと変わらない。

現時点では単体CDは中古を探すしかなく、一昨年出たアナログ盤か、70年代後半のキャピトル期4作にコレを足したCD5枚組廉価ボックスをゲットするパターンだけど、これ1枚でも充分価値がある。くれぐれも『TAPESTRY』だけで、シンガー・ソングライター/アーティストとしてのキャロル・キングを知っている気にはならぬよう…





ラヴ・メイクス・ザ・ワールド
k.d.ラング
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
2002-06-19



ラヴ・メイクス・ザ・ワールド<デラックス・エディション>
キャロル・キング
ビクターエンタテインメント
2008-10-22



Love Makes The World (MOV Pink Vinyl) [Analog]
Carole King
Music On Vinyl
2023-09-08



Carole King: Original Album Classics
KING, CAROLE
EPIC
2017-03-17