A Shout Out

活況を呈すスウェーデンのAORシーンから、
カイ・バックマンとマッツ・ヨハンソン主導のプロジェクトBJATOが
約4年ぶり第3作を発表。
前作から参加の “Mr.北欧ヴォイス” ことヨラン・エドマンに加え、
LAVAのエジル・エルドアンがヴォーカルで、
トミ・マルムが作曲で参加。
今回も北欧産らしい、シャープなAORサウンドを聴かせる。
バックマン=ヨハンソン&ジ・アザーズ、略してBJATO。彼らが日本で出してきた3枚のアルバムは、すべて筆者監修【Light Mellow Searches】@ P-Vine から発売されている。でも最初のアルバムが出た時は、この間に合わせ的ネーミングから、完全なワン・ショット・プロジェクトだと思っていた。それが今、こうして3枚目のアルバムを出す。しかもその内容は、これまででサイコー。最初に聴いた時は自分もチョッと驚いたが、一番ドギマギしているのは、どうやら首謀者のカイ・バックマンとマッツ・ヨハンソンらしい。

「この実験的プロジェクトが、3枚の充実したアルバムを花開かせたなんて信じられません。僕たち自身、今後の展開が楽しみで、この音楽の旅を続けるのが待ち切れないのです」
「本当にワクワクしています! 僕らの曲が世界中で反響を呼び、良い雰囲気が広がっていることを、とても光栄に思っています」

その背景には、当然ヨーロッパにおけるヨット・ロックの隆盛がある。特にこの3作目では、北欧を中心としたミュージシャンの横の輪が繋がり、リスナーの裾野を大きく拡大させる可能性が出てきた。共にTOTOのデビュー盤に感銘を受け、エアプレイ(デヴィッド・フォスター&ジェイ・グレイドン)に強く影響を受けた2人だから、BJATOのサウンドはどうしてもメロディック・ロック/産業ロック寄りに見られがちになる。だがこの新作を俯瞰すると、従来イメージよりもライトだったり、爽やかだったり、というトラックが幅を利かせる。ヨット・ロックの動向を視野に入れたことで、多彩さやバラエティ感が色濃くなったのだ。アートワークの開放感も、それを表している。

特に目についたのは、10人ものリード・シンガーを迎えた点。もっとも前2作でも7〜8人が歌っていたから、そう驚くことではないのだが、実はその新顔の中に、“ノルウェーのTOTO” との呼び声高いLAVAのエジル・エルドアン、ラスヴェガスを本拠に活動するベテラン・ライヴ・バンド:サンタ・フェ&ザ・ファット・シティ・ホーンズを率いるジェリー・ロペス、そして【Light Mellow Searches】から『THE MISSING PAGES』を出したばかりのマルコ・タジアスコのお抱えシンガー:ダミアーノ・リビアンキがいるのだ。そしてヨラン・エドマン、ヨハン・ボーディング、マウリッツォ・ソロンが3作連続の参加になる。

トラックメイクのほとんどは、カイのキーボード、マッツのギター/キーボード、そして両人のプログラムで制作。そこにトミ・マルム、オーレ・ブールド・バンドのラーズ・エリック・ダール (b)、LAVA最新作でベースを弾くジョニー・ショー、ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス周辺で活躍するホーン・ハウスの2人、トム・ウォルシュ(tr)とニコル・トムソン(tb)などが参加。BAJTOが得意とするビッグ・アレンジに貢献する。

オーレ・ブールド、ステイト・カウズに次ぐ北欧AORアクトの第3ポジション。それをBJATOが獲得するのは、そんな遠いことではなさそうだな。

《amazon》
ア・シャウト・アウト[監修・解説:金澤寿和(Light Mellow)]
バックマン=ヨハンソン&ジ・アザーズ
Pヴァイン・レコード
2025-03-26

《Tower Records はココから》