johnny hammond_gambler's life

引き続きCTI モードで、今回はジョニー・ハモンドの75年作『GAMBLER'S LIFE』。今月発売された再発シリーズ『CTI ALLTIME COLLECTION』にちなんだレコードコレクターズ誌の次号特集では、ハモンドの他のアルバムをレビューしている筆者だけれど、コレ、いろんな意味で彼のキャリアのマイルストーンに当たるアルバムだったと思う。実際にマイルストーン・レーベルへ移籍するのは、この次のアルバムでクラブ・シーンでの再評価著しい『GEARS』から、なのだけど。

『GAMBLER'S LIFE』のリリースは、CTI傘下に新たに立ち上がったSalvationから。ココは、いわゆる CTI / KUDU 双方の路線から外れるようなプロダクツのために用意されたレーベルで、プロデュース&アレンジはスカイ・ハイ・プロダクションのラリー・マイゼル。参加メンバーも KUDU での従来作から一転、ジェリー・ピータース (pf), ワウワウ・ワトソン (g), ヘンリー・フランクリン (B), ハーヴィー・メイスン (ds) らの布陣に変わっている。そして何よりハモンドは、自身の看板楽器だったオルガンを封印。エレキ・ピアノとシンセサイザーだけを弾いているのだ。もっともサスガに名前は変えられず、ジョニー・“ハモンド”・スミスには戻さずに、ジョニー・ハモンドのままだけれど。

でもわずか半年前に、CTI御用達エンジニア:ルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで録った『HIGHER GROUND』との違いは歴然。前作がファンキーなソウル・ジャズの範疇にあるとしたら、コチラはもっとスタイリッシュなジャズ・ファンク、と言うか。ブルーノートのLA品番に於けるマイゼル・ブラザーズの貢献と手腕を知っていれば、その意味はすぐに分かるだろう。

でもその一方で、70年代半ば当時の日本のクロスオーヴァー/ジャズ・フュージョン好きの間で、ハモンドの名が取り沙汰されることは、あまりなかったと思う。CTI系ならボブ・ジェームスやデオダート、それ以外ならチック・コリアやハービー・ハンコック、ジョー・サンプルらに注目が集まって、オルガン奏者という古いイメージのハモンドは、若いファンに無視されてしまったようだ。素顔のハモンドは、結構新しモノ好きらしいんだけど。

そうした凝り固まったイメージを覆したのが、90年代から大きな動きが始まったレア・グルーヴ。実際 次の『GEARS』には及ばずとも、エリカ・バドゥやケンドリック・ラマー、Jazzzanova、ドラゴン・アッシュ(!)らがネタ化した曲がこのアルバムに入っていて、お愉しみ度は高い。だからずっと敬遠していた人は、そろそろちゃんと聴してみようよ、なんて思うのだな。

ギャンブラーズ・ライフ
ジョニー・ハモンド
キングレコード(株)
2025-03-12

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