jon anderson_live

昨年リリースされた初アルバム『TRUE』を聴いて、「イエス以上にイエスしてる」と評したジョン・アンダーソン&ザ・バンド・ギークス。その彼らの23年のライヴ・レコーディングが、DVD / 2CD でリリースされた。結論から言っちゃうと、これがもう、こっちがご本家でイイんじゃないって言いたくなっちゃうくらいの出来で。確かに看板自体の保有権はアチラにあるんだろうけど、ジョンが結成時の中心にいたのに対し、スティーヴ・ハウはあくまで加入した黄金期メンバーの一人。ジェフ・ダウンズは『DRAMA』に参加したに過ぎず(大大大好きだけど)、やはりクリス・スクワイア逝去後はジョン側に正当性がある気がしてしまう。

でもそれというのも、ジョンがバンド・ギークスと出会って本気になったから。旧メンバーを集めて、アンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウとか、アンダーソン・ラヴィン・ウェイクマンとか、お気軽に見てくれのイエスを組んだ時とは違って、これが最後と言わんばかりに、イエス・マンとしてのスピリットを一身に背負った。その辺りのことは、『TRUE』を聴いた時に詳しく書いたので、そのポストをお読みいただきたい(https://lightmellow.livedoor.biz/archives/52408050.html#more)

でもって、なぜジョンがそこまで気持ちを昂らせたのか、その答え合わせがこのライヴ・アルバムだという気がする。だって全10曲、すべてが70年代のイエス代表曲なのだ。それこそ、当時のライヴ・アルバム『YESSONGS』に、『RELAYER』からの<錯乱の扉(Gates Of Delirium)>と、『究極(GOING FOR THE ONE)』からの<Awaken>を追加したようなセットなのだ。オマケに、当時のメンバーよりも、はるかにスムーズに、軽々と難曲をこなしちゃっているのだ。

イヤイヤ、こなしちゃってる、ってなレヴェルじゃない。コーラスを取れるメンバーが3人いて、当時のイエスよりも遥かにシッカリしたヴォーカル・ハーモニーを披露。<Your Move 〜 I've Seen All Good People>あたりでは、全員歌っちゃったりもする。キーボードが2人いるからレイヤーも厚いし、しかも下手(しもて)の鍵盤奏者はギターだって弾ける。加えて12弦ギター/12弦マンドセロ(?)専門のサポート・メンバーが登場する場面も。おそらく演奏スキルだけを取ったら、誰も黄金期のメンバーに引けを取らないだろう。でもこういう時に問題なのは、ミュージシャン各々がどれだけオリジナルへの愛情やリスペクトを深く持って表現しているか、だ。譜面通り正確にプレイしたって、大して面白くならない、そういうメンタリティーの部分が重要なのだ。そこが音楽が生モノである所以。

だけどバンド・ギークスの面々は、そこを充分にクリアしている。映像を見ると、ベースはちゃんと往年のクリス・スクワイアーの愛器リッケンバーカーだし、ギターもセミアコがメイン。そして各メンバーが嬉々として楽器を操り、みんなでジョンを引き立てようとしているのがハッキリ分かる。だから、旧メンバーを集めただけの模擬イエスでは今イチ求心力を発揮できなかったジョンが、完全にバンド・リーダーとして堂々と振舞っている。歌声はずっと若々しさを保っていた彼だけど、バンド・ギークスといると、心底リフレッシュされるのだろう。ライヴ録音当時は78歳だったジョンなのに、このライヴの彼は、ホントに70年代の頃みたいに若々しいのだ。

ま、違和感があるとしたら、ジョンの両サイドにいるのが、揃ってスキン・ヘッドに髭ヅラというヴィジュアル面かな コンサート・ホールも本家に比べて少々小振りで、ステージ・セットもシンプル。けれど演奏の素晴らしさが、それを補って余りある。90年代後半以降のイエスは、ツアーごとにライヴ・アルバムを出している感があるが、全盛期の記録である『YESSONGS』に次いでイエスらしいライヴ盤は、案外ジョンのコレと言えるかも。

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