
フェアウェル・ツアー日本公演を目前に控えたシンディ・ローパーの来日記念盤は、2023年の長編ドキュメンタリー映画『LET THE CANARY SING』の、事実上のサウンドトラック盤。このドキュメンタリーは、シンディのソロ・デビュー40周年を期して制作され、その同年6月のプレミア公開時に、このアルバムがアナログ盤限定でリリースされた。この世界初CD化がコレである。
自分にとってのシンディは圧倒的に初期の2枚、つまり『SHE'S SO UNUSUAL』(83年) と『TRUE COLORS』 (86年) 。その後も4作目あたりまでは積極的に聴いていたものの、90年代後半以降の作品からは耳が遠のいていた。再び興味を持ったのは、東日本大震災の逸話。多くのコンサートが中止を余儀なくされる中、ギリギリで日本の土を踏んだ彼女は、日本を励まそうとスケジュール通りにジャパン・ツアーを敢行した。それを機に、シンディが本国以上に日本で高い人気を維持してきたことを知り、極めて日本人好みのメンタリティを持つポップ・アーティストなのだと実感。チャート・アクションが厳しくなったらなったで、スタンダードやブルース、カントリーなどルーツ探訪的なアルバムを作るなど、そのアーティスティックなスタンスにも共感を持った。ちょっと天然にも見える個性派シンディだから、その真摯な想いが余計に際立った。
そんなシンディの新たなアンソロジーとなる、この『LET THE CANARY SING』。ソロ・デビュー前に在籍したブルー・エンジェル時代の楽曲から、初期メガヒットの数々、ルーツ回帰の楽曲もチョイス。デビュー・アルバムのオープニング<Money Changes Everything>のライヴ・ヴァージョンを敢えて2曲目(ブルー・エンジェルの次)に置いたのも、単にキャリア的な意味合いだけでなく、それがシンディの音楽活動のベースにあって、40余年が経過した現在もメッセージとして有効だからだろう。マイルス・デイヴィスほか多くのカヴァーを生んだ<Time After Time>は、もはやポップ・スタンダードの領域にあるし、名バラード<True Colors>はLGBTQ+のアンセムでも。<Girls Just Want To Have Fan>は世代を超越した女性賛歌になっている。久々に聴いた初期ヒットの多くは、アレンジこそ80年代当時のスタイルに則っているが、楽曲自体はまったく古臭くなっておらず、むしろ新鮮に響いたりして…。
チャートに上がっても記憶に残らない楽曲ばかりが横行している昨今だけど、ポップスの本質を広く伝播させているシンディは、もっと見直されて然るべき、だな。
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《Tower Records はココから》
そんなシンディの新たなアンソロジーとなる、この『LET THE CANARY SING』。ソロ・デビュー前に在籍したブルー・エンジェル時代の楽曲から、初期メガヒットの数々、ルーツ回帰の楽曲もチョイス。デビュー・アルバムのオープニング<Money Changes Everything>のライヴ・ヴァージョンを敢えて2曲目(ブルー・エンジェルの次)に置いたのも、単にキャリア的な意味合いだけでなく、それがシンディの音楽活動のベースにあって、40余年が経過した現在もメッセージとして有効だからだろう。マイルス・デイヴィスほか多くのカヴァーを生んだ<Time After Time>は、もはやポップ・スタンダードの領域にあるし、名バラード<True Colors>はLGBTQ+のアンセムでも。<Girls Just Want To Have Fan>は世代を超越した女性賛歌になっている。久々に聴いた初期ヒットの多くは、アレンジこそ80年代当時のスタイルに則っているが、楽曲自体はまったく古臭くなっておらず、むしろ新鮮に響いたりして…。
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