ew&f_gratitude

アース・ウインド&ファイアー、絶賛ジャパン・ツアー中。自分は今回はチケットを買わずにスルーしたので、仕事の合間にこの上昇期のライヴ盤『GRATITUDE(灼熱の狂宴)』を聴いている。喜んでライナーを書かせてもらうほど愛してきたグループだし、今も相変わらず大好きだけれど、前回8年前のライヴ・パフォーマンスを観た時に、グループとしての限界を強く感じてしまい…。なので今回の来日は、足を運んだところでお約束・想定以上のモノは期待できんなぁ、と考えたりして…。

ツアー開始後のSNSから届くのは、「行って良かったぁ〜」という声がほとんど。けれど自分は、行かずとも不思議と後悔はなく。そのアーティスト、そのライヴ・パフォーマンスを観るタイミングによって、そこに求めるモノは多少なりとも変わってくる。自分にしてみれば、E.W.& F.は80年代の活動再開直後の来日から断続的に観てきたので、どうしても近年の彼らには物足りなさを禁じ得ない。今更「モーリス・ホワイトがいないE.W.& F. なんて…」とは言わないが、往年の彼らはブラック・ミュージックのトップ・ランナーとして凄まじいほどの影響力を持っていただけに、現行バンドのような、定番ヒット連発でオーディエンスを躍らせるエンターテイメント・ショウでは納得できず…。だったら分派であるアル・マッケイ・オールスターズの方が、オリジナルに忠実なアレンジを再現してくれる分、ストレートにシンパシーを感じる。でもそのアル・マッケイ自体、コロナ明け以降、来日してないようだけれど…。

一方で、前回来日で感じてしまった若いサポート・メンバーたちが持ち込んだであろうヒップホップ・テイストのライヴ・アレンジも、自分には素直に受け入れがたいモノがあった。もちろんその前向きなスタンスは評価できる。でも今回は、そのあたりがどうなっていたか、チョッと気になるな。

それでも今回の来日公演のチケットは、関係者筋も驚くほど売れ行き好調で、早々にソールド・アウトになったらしい。招聘側としては、一抹の不安があったからこそナイル・ロジャース&シックをゲストに乗せたのだろうけど、要らぬ杞憂だったようである。多少はダブル・ビルで心が動いた人もいらっしゃると思うが、シックは去年もBlueNote Jazz Festivalで来たばかりだし、自分はその前にもライヴ・ヴェニューで何度も観ているので、特に食指は動かなかった。

それより、一時はホール公演でさえ動員に苦戦していたE.W.& F.が、今回は何故にこれほど好調だったか? 関係筋の話だと、それはどうもご新規ファンが動いたから、らしい。CM効果かどうかは定かじゃないが、「今回が初E.W.& F.」とか「2度目」とか、そういう比較的 歴の浅いファンが足を運んでいるそうだ。それこそ「モーリスって誰?」というような…。こうした層にはバンドの中身とかメンバー交代とか、全盛期メンバーが2人しかいない(ヴァーダイン・ホワイトは直前病欠)なんて、一切関係ない。E.W.& F.の看板を掲げた集団が、ベスト盤に入っている<September>や<Boogie Wonderland>、<Let's Groove>など、自分が知っているダンス・クラシックを相応のクオリティで演ってくれて、それに合わせて踊ったり空間を共有して盛り上がれれば、それで納得するのだ。「モーリスがいないE.W.& F. なんて…」というセリフは、もはやジジババの戯言。そこをわきまえなくてイケない。もちろんエルダー層でも、シンプルに踊って楽しむオーディエンスはいる。でも、どうしてもクリティカルな耳で捉えがちな自分には、「進化するのは大いに結構だけど、往年のアレンジを越えられないなら、下手に変えてくれるな!」という思いが先に立ってしまう。

E.W.& F.の大きな魅力のひとつ、フィリップ・ベイリーの天空を舞うファルセットにしても、「よく声が出ていた」という書き込みが多いようだ。でも実際はどうなんでしょ? 寄る年波を考えたら大したモンだろうけど、既に8年前、サポート・メンバーの息子たちにアレコレ振っている印象があったんだけど。

そうしたコトを含めて、四の五の言わず、素直に今のE.W.& F.を受け入れられる方々が、この来日を観に行っているのだろう。だから、すぐにハスに構えて見てしまう自分は、家で全盛期のカタログ作品や、派手な演出もなしに演奏だけで真っ向勝負していた頃の映像を楽しむとします。でもヴァーダインには元気に復活して欲しいものよ…。


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