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朝、起き抜けに飛び込んできたのは、サミュエル・パーディーのドラマーとして活躍したバーニー・ハーレイの訃報。全然知らなかったが、彼はここ数年ガンと闘っていたそうで、15日に力尽きて旅立ってしまったらしい。グループは短命だったし、日本以外ではあまり注目されなかったが、バーニー自身はゼロ年代以降のAORシーンを代表するスポークスマン的存在になって、自分も何度かメールのやりとりをしたことがある。享年54、って、バーニー、あまりに若すぎるよ

サミュエル・パーディーは、初期ジャミロクワイと深い交流を持っていたギャヴィン・ドッズ(g,vo)とバーニー・ハーレイ(ds)から成る、英国のアシッド・ジャズ系ツー・メン・ユニット。共に学生時代を過ごしたブライトンで出会い、最初はジェームス・ブラウンやオーティス・レディングのカヴァーをやっていたとか。その後2人でロンドンへ出て活動していた92年、Acid Jazz Recordsからレコーディングのチャンスが舞い込み、タワー・オブ・パワー<Clever Girl>をカヴァーする。それがサミュエル・パーディーの始まり。この時はアルバム制作には至らなかったが、レーベルからのバックアップもあって、それぞれ別のタイミングでジャミロクワイに関わるようになっていった。サミュエル・パーディーとしてのワン&オンリー・アルバム『MUSICALLY ADRIFT』の日本リリースは、99年5月。シングル<Lucky Radio>はJ-WAVEの看板番組【TOKYO HOT 100】でトップ5を記録し、アルバムも好成績を収めた。その後このアルバムは、CDなりアナログなりで再発を繰り返しており、08年の最初のCD再発は筆者ライナーに拠る。バーニーとの交流も、その時のメール・インタビューが最初だった。

バーニーのフェイヴァリット・アルバムは、スティーリー・ダン『AJA』、ジョニ・ミッチェル『COURT AND SPARK』、ドゥービー・ブラザーズ『MINUTE BY MINUTE』、ボズ・スキャッグス『DOWN TWO THEN LEFT』、トム・スコット&ザ・L.A.エキスプレス『TOM CAT』 など。AOR度の濃いところでは、エアプレイ、ペイジスの3作目、ランディ・グッドラム『FOOL'S PARADISE』が愛聴盤だった。特にスティーリー・ダンとその周辺への愛情がメチャ深くて…。
「スニーカーのファーストに入っている<Jaymes>は、本当に好きなトラックなんだ。ロージー・ヴェラの<Magic Smile>もまた素晴らしい曲だね。ファー・クライは全部好き。これはエリオット・シェイナーによるプロデュースだし、素晴らしいミュージシャンシップが感じられる。もちろんゲイリー・カッツのプロダクションが好きだから、アイ・トゥ・アイは2枚とも持っているよ。特にセカンドに入っている<Jabberwokky>は、シーウインド・ホーンズのアレンジがスゴイんだ」

ヴォーカルに関しては、「ドナルド・マクドナルドこそパーフェクトなシンガーだ」と。つまりドナルド・フェイゲンとマイケル・マクドナルドを合体させたジョーク。ドラマーだけに、アイドルはジェフ・ポーカロだった。
「僕にとっては、彼こそ究極のドラマーさ。彼のフィーリングには本当にビックリする。他にもジョン・グェリンやブラッド・スウェット&ティアーズのボビー・コロムビーが好きだな。彼らはジャズを学び、ロックもプレイできる。そうしたミックスが好きなんだ」

サミュエル・パーディー消滅後はしばらく鳴りを潜めていたバーニーだが、2016年に立ち上げたプロジェクトがPower Blue Tux。リリースはシングル1枚だけなのに、これがもうスティーリー・ダン愛丸出しで、ジェイ・グレイドンがトリッキーなギター・ソロをキメたり、エリオット・ランドールがリード・ギターを弾いたり。A面曲を筆者監修コンピに収録したことがあるが、アルバムになっていれば日本でもCDリリースできたのに…と思うと、今も残念。近年はアパレル業で成功した兄の仕事を手伝いながら、趣味的な音楽活動を続けていたらしい。

Rest in Peace...

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