yellowjackets_fasten up

70~80年代のJ-Fusion再評価がドンドン進む一方で、完全に置いてけぼりを喰らっている体なのが、現行の洋楽フュージョン。スムーズ・ジャズが飽きられたのは然もありなん、だと思うが、このご時世、外タレ・フュージョンのCDが日本発売されることはほとんどないし、そもそも情報自体入ってこない。元気なのは、スナーキー・パピーやカマシ・ワシントンらに代表されるニュー・ジャズ系、Vulfpeckやコリー・ウォンのインスト・ジャズ・ファンク周辺くらいか。ベテランがBlueNoteやBillboard Liveあたりに来てくれても、アルバムは出ていないことが多いので、どうしても散発的になってしまう。

このイエロージャケッツの新作『FASTEN UP』も、2月にはリリースされていて。自分がそれを知ったのは4月になってからで、「いつの間に…」という感じ。ロベン・フォードのバック・バンド的にデビューして約45年、通算で27作目。80年代後半はフュージョンの代表的グループに数えられたりしたけれど、いつしか、ディープでアコースティック寄りのコンテンポラリー・ジャズ・スタイルへシフト。すっかり地味な存在になってしまった。でも中核のピアニスト:ラッセル・フェランテが健在なので、大きくブレることはなく。10年代に入ってからは、Marc Avenueというジャズ系インディに足元を定め、2〜3年に一枚のペースでコンスタントにリリースを続ける。まさに信頼に足るグループだ。

現在のメンバーは、フェランテ以下、ボブ・ミンツァー (sax), ウィル・ケネディ (ds), デイン・アルダーソン (b) という顔ぶれ。ミンツァーはマーク・ルッソの後任として加入して、もう35年が経つ。ソロ活動、ビッグ・バンド・リーダー、そしてセッション・ワークといろいろな顔を持つ人なので、最初はあまり長続きしない気がしていたが、何とまぁ…。特に創設メンバーだったジミー・ハスリップ (b) が 11年作『TIMELINE』を最後にグループを離れて以降は、フェランテを強力サポート。この新作では、まさに双頭リーダー的活躍を見せる。サックスだけでなくバス・クラリネットやウインド・シンセを吹く一方、ビッグ・アンサンブルも得意としている知性派で、14年に独ケルンの名門ビッグ・バンドWDRの首席指揮者に就任。20年に出たイエロージャケッツとWDRの共演盤は、そのミンツァーの仕切りだったワケだ。

今作のウリは2点あって。まずはアルバム冒頭<Comin' Home Baby>のカヴァー。この曲は、50〜60年代のモダン・ジャズ黄金期に活躍したベース奏者ベン・タッカーの作品で、62年にハービー・マンが取り上げて人気に。更にボブ・ドロウがコレに詞を付け、メル・トーメの全米トップ40ヒットになっている。それをミンツァーの編曲で、ポップでノリノリにリメイク。またもう1曲の<The Lion>では、ラウル・ミドンのスキャットとギターをフィーチャー。かつてのパット・メセニー・グループの世界観に通じる、大自然の深遠さをイメージさせるサウンドが楽しめる。ライル・メイズが亡き今、メセニーがそういうサウンドに向かう可能性は低そうなので、コレはアリかもしれないな。

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Fasten Up
Yellowjackets
Mack Avenue
2025-02-21

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