
山下達郎 活動50周年【TATSURO YAMASHITA MOON VINYL COLLECTION】第1弾の『MELODIES』、我が家へも早々に到着しています。買ったのは相方だけど…




基本的に、RCA / AIR 時代の、達郎サンが言う“16ビートのパターン・ミュージック”スタイルが大好きな自分なので、今となっては『MELODIES』を聴き直すことはあまり多くない。ニュー・アルバムとして聴いた当時も、結構戸惑ったのを思い出す。そのせいか、何処で買ったか、その時のレコード・ショップの様子や空気感もシッカリ記憶している。買いたいレコードを手にして、ワクワク感が止められない、そんな幸せな時代だった。
でも聴いて戸惑ったのは、「夏だ、海だ、タツローだ!」とキラキラしたリゾート・サウンドを創っていた氏が、ほとんどの歌詞を自作し、内省的で淡い色彩感のアルバム作りにシフトしたから。<メリー・ゴー・ラウンド>のようなファンク・チューンやソウル・テイストの小振りな楽曲はすぐに馴染んだけれど、多重録音のトラックが増え、バンド・アンサンブルの面白さをアピールする場面は少なくなった。当時はまだビーチ・ボーイズの再評価が始まる前。楽曲の耳馴染みの良さを肌身で感じつつ、何故このタイミングでオールディーズ志向の8ビート・アレンジに向かうのか、そこが謎で。レーベル移籍を挟んだとはいえ、この直前が極彩色の『FOR YOU』だから、そのギャップは大きかった。
日本のポップス史に残る名曲<クリスマス・イブ>にしても、広く注目されたのは、88年にJRのCMソングに採用されてから。翌年、牧瀬里穂の出演ヴァージョンが作られ、オリコンのシングル・ランキング首位。アルバム・リリースからは数年のブランクがあった。本来、アルバムの中でジックリと魅力を放つタイプの楽曲で、当時は「何故に今更…」と思ったけれど、そこはクリスマスを舞台にした悲喜交々のドラマ性と、逆に抑揚を抑えて普遍性を引き出した楽曲の魅力が最高のマッチングを演出。しかも2年連続のシーズン・タイアップという押しの一手で、広くお茶の間にまで浸透したワケだ。
そして今にして思うのは、この時のギア・チェンジが、現在の達郎さんのポジションを揺るぎないモノにした、ということ。ヒットを狙ったワケではなく、ある程度の批判は織り込み済み。その上で、“歌はひとたび世に出れば、もう作り手・歌い手のもとを離れ、お聞きになる方々の心を反映して別のモノになっていく” と言い放つ。それだけ強い信念、確信を持って、ひたすら音楽作りに専心しているワケだ。アーティストが不本意なカテゴライズを嫌う気持ちは理解できるし、達郎さんだってイメージの固定化を嫌ったが故のギア・チェンジだったけれど、そこで生じる風評には決して動じなかった。そういう覚悟や境地を持てないのなら、ベテランはただ堕ちていくだけだよ。
《Tower Records はココから》
でも聴いて戸惑ったのは、「夏だ、海だ、タツローだ!」とキラキラしたリゾート・サウンドを創っていた氏が、ほとんどの歌詞を自作し、内省的で淡い色彩感のアルバム作りにシフトしたから。<メリー・ゴー・ラウンド>のようなファンク・チューンやソウル・テイストの小振りな楽曲はすぐに馴染んだけれど、多重録音のトラックが増え、バンド・アンサンブルの面白さをアピールする場面は少なくなった。当時はまだビーチ・ボーイズの再評価が始まる前。楽曲の耳馴染みの良さを肌身で感じつつ、何故このタイミングでオールディーズ志向の8ビート・アレンジに向かうのか、そこが謎で。レーベル移籍を挟んだとはいえ、この直前が極彩色の『FOR YOU』だから、そのギャップは大きかった。
日本のポップス史に残る名曲<クリスマス・イブ>にしても、広く注目されたのは、88年にJRのCMソングに採用されてから。翌年、牧瀬里穂の出演ヴァージョンが作られ、オリコンのシングル・ランキング首位。アルバム・リリースからは数年のブランクがあった。本来、アルバムの中でジックリと魅力を放つタイプの楽曲で、当時は「何故に今更…」と思ったけれど、そこはクリスマスを舞台にした悲喜交々のドラマ性と、逆に抑揚を抑えて普遍性を引き出した楽曲の魅力が最高のマッチングを演出。しかも2年連続のシーズン・タイアップという押しの一手で、広くお茶の間にまで浸透したワケだ。
そして今にして思うのは、この時のギア・チェンジが、現在の達郎さんのポジションを揺るぎないモノにした、ということ。ヒットを狙ったワケではなく、ある程度の批判は織り込み済み。その上で、“歌はひとたび世に出れば、もう作り手・歌い手のもとを離れ、お聞きになる方々の心を反映して別のモノになっていく” と言い放つ。それだけ強い信念、確信を持って、ひたすら音楽作りに専心しているワケだ。アーティストが不本意なカテゴライズを嫌う気持ちは理解できるし、達郎さんだってイメージの固定化を嫌ったが故のギア・チェンジだったけれど、そこで生じる風評には決して動じなかった。そういう覚悟や境地を持てないのなら、ベテランはただ堕ちていくだけだよ。
山下達郎
ワーナーミュージック・ジャパン
2025-05-21
逆に言えば両方が楽しめるので好きなアルバムです。