big horizon

コイツはヨット・ロックなんて軽いモンじゃないッ! 
ジェフ・リンズELO、10cc、テイク・ザットなどをサポートしてきた
実力派ミュージシャンたちが集った、
リアルでキャッチーな英国産アダルト・コンテンポラリー。
爽やかだけど骨太なサウンドが、聴く人の感性を問う


来週、筆者監修【Light Mellow Searches】on P-VINE からリリースされる、英国の実力派セッション・ミュージシャンが集まった大型新人バンド、ビッグ・ホライゾンをご紹介。

いろいろと世界中に害を及ぼしたコロナ・パンデミックだけれど、音楽シーンに関していえば、必ずしも悪いコトばかりではなかったようで…。このビッグ・ホライズンが結成されたのも、大物アーティストたちのサポートを生業としていたミュージシャンたちが、コロナでツアーに出られず、自宅に足止めを喰らってしまったコトに端を発する。

メンバーはリーダー作のマイク・スティーヴンス(sax, g, kyd,vo) を中心に、リー・ポメロイ (b)、ドノヴァン・ヘップバーン (ds) 、イアン・ホーネル (vo,kyd), ジョー・ウェッブ (g,kyd) の5人。マイクは80年代からミーシャ・パリス、デヴィッド・グラント、ルビー・ターナー、ジュリア・ロバーツ(元ワーキング・ウィーク)、シャカタク、デレゲイション、ティナ・ターナーらのレコーディングに参加し、92年からテイク・ザットにツアーに招集。翌年から音楽監督を任された。アニー・レノックスやマーク・アーモンド、元10ccのグレアム・グールドマンとの信頼関係も厚く、ジェイムス・モリソンやジョス・ストーン、ミーカら、若手アーティストのバックアップも行なっている。ELOの14年、17年ツアーでもミュージカル・ディレクターを務めた。80〜90年代に3枚のソロ作あり。

リー・ポメロイはサウスポーのベース奏者。テイク・ザットやELOと併行して、リック・ウェイクマン、スティーヴ・ハケット、ゲイリー・バーロウ、イエス feat.アンダーソン・ラビン・ウェイクマン、再編キャラヴァンでもプレイしてきた。バンドのアンサンブルに、若干プログレ寄りの重量感を持ち込むのが、この人の役割。

ドラムのドンヴァンはゴスペル出身。テイク・ザットやELO、ジェームス・モリソンに加え、トム・ジョーンズ、ロビー・ウィリアムズ、アデルなどとの共演歴を持つ。

バンドで一番の西海岸サウンド好きというヴォーカルのイアンは、ELOの17年ハイドパーク・コンサートが初の大仕事。そこで信頼を獲得し、ジョー・ウェッブと共にマーク・アーモンド、グレアム・グールドマン及び10cc、現ディープ・パープルのサイモン・マクブライド (g) をサポートしつつ、2枚のソロを自主制作している。そのプロデューサーでもあるジョーは、ロバート・プラント、ボニー・タイラー、ドン・フェルダー(イーグルス)、ヒューイ・ルイス、ルー・グラム(フォリナー)、ピーター・コックス(ゴー・ウェスト)、ニック・カーショウ、マーティン・フライ(ABC)、ニック・ヘイワード、キム・ワイルド、ベリンダ・カーライルといった多彩な顔ぶれとステージを重ねてきた。

そんな5人が目指すのは、かなり直球の70年代ウエストコースト・ロックだ。しかも5人中4人が歌えるため、ヴォーカル・ハーモニーが厚いうえに、マルチ・プレイヤー揃いでもあるから、フォーメーションが自由自在。アース・ウインド&ファイアーの音、スティーリー・ダンの音、どれも再現できると豪語する。実際、曲によってイーグルスやリチャード・マークスを髣髴させたりも。

レコーディングの一部は、南ウェールズにある伝説的レコーディング・スタジオ、ロックフィールド・スタジオでの録音だ。ココはクイーンが<Bohemian Rhapsody>及び『オペラ座の夜(THE NIGHT AT THE OPERA)』(75年)を制作したところで、他にも数々の名盤が産み落とされた。彼らはそこがイタく気に入り、後にPV制作でも再訪している。
「ロックフィールドには魔法がある。特にアコースティック・リヴァーブ・ルームは独特のサウンドを持っていて、大好きになった」(マイク・スティーヴンス)

メンバー全員が長いバンドマン稼業の中で、一度は日本を訪れたことがあるそう。マイクに至っては、学生時代にサディスティック・ミカ・バンドを愛聴していたらしい。この7月に行われるELOのフェアウェル・ツアーでも、ビッグ・ホライズンの5人全員が、ハイドパークのステージに立っているはずだ。

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イン・ザ・ビギニング【監修・解説:金澤寿和(Light Mellow)】
ビッグ・ホライズン
Pヴァイン・レコード
2025-06-04

《Tower Records はココから》