lo van gorp_works

スティーリー・ダン愛、ここに極まれり! 
マーティン&ガープ、ドーン・パトロールへの参加や、
パピック presents シー・ブリーズとの邂逅はダテじゃなかった。
待ち侘びた5年ぶりのソロ2作目は、都会の光と影をあぶり出し、
ガープ自身のインナー・ワールドへと踏み込んでいく。


急な訃報で1日空いてしまったが、筆者監修【Light Mellow Searches】on P-VINE からビッグ・ホライズンと同時リリースされるのが、先物買いのAORファンならご存知だろう、マーティン&ガープやドーン・パトロールで活躍したオランダのシンガー/サックス奏者ロー・ヴァン・ガープ、待望の第2作『THE WORKS』だ。パピックpresents シー・ブリーズにゲスト参加して歌っていたローをチェックした方も、少なくないかな? 

聴けばすぐに分かるけど、郷愁と切なさを漂わせるスモーキーな声質は、相変わらず魅力たっぷり。本国オランダでのローはセッション・シンガーとしてそれなりに名が通っていて、チャカ・カーンやアル・ジャロウ、ポール・キャラック、ロジャー・ホジソン、ジェイコブ・コリアーなどと共演してきた。最初のソロ・アルバム『TRUE FRIENDS』は、21年初頭に【Light Mellow Searches】で日本先行リリース。タイミングとしてはマーティン&ガープとドーン・パトロールの間。でも当のオランダでのリリースは1年以上遅れてのことだった。

それにしても、ココまでスティーリー・ダン色が濃厚になるとは…。もちろんマーティン&ガープやドーン・パトロールでもそのインフルエンスを感じさせる楽曲があったが、今作はカナダのモンキー・ハウスにも劣らぬほどの傾倒ぶりで、ちょっと驚く。
「僕とっては『THE NIGHTFLY』こそが出発点。レイドバックして聴き心地のいい音楽なのに、その裏には途轍もない複雑さが隠されている。そこを愛してるんだ」
そう語ってくれたのは、『TRUE FRIENDS』のメール取材時。でもローのフェイヴァリットは『GAUCHO』『AJA』 『THE ROYAL SCAM(幻想の摩天楼)』の3枚だったはずなのに、この新作はむしろそれ以前、初期〜中期のスティーリー・ダンを髣髴させる。
「ワォ! それは素晴らしい耳を持っているね! 確かにこのアルバムは、ちょっと“オールド・スクール”に聞こえるかもしれない。けれどそれは意図的なものではなく、結果的にそうなっただけなんだ」

プロデューサーは、前作と同じパトリック・ドレイブ。彼がローにたくさんのインスピレーションを与え、『TRUE FRIENDS』にも参加していたバンド・メンバーたちが、素晴らしいアイデアを共有してくれたそうだ。1年半の間に6回ほどセッションし、その後ホーンやヴォーカル、ゲストのダビング。その中にはオランダのスターで、日本にも紹介されたことがあるトレインチャ(オーステルハウス)が参加している。
「パトリックは共通のテーマを持った多くの曲を書き上げてね。彼の人生に深い影響を与えた経験や人物をテーマにしていて、それが僕の心にも深く響いた。だから僕が空白を埋め、楽曲にソウルを加えたんだ。音楽、歌詞の両面でね」

そのため、作品イメージは内省的で、アルバム全体としてコンセプチュアルな仕上がりになっている。でも耳触りはヘヴィではなく、少し繊細でナイーブに感じる程度。それが、光りと影を描き出すようなスティーリー・ダン風スタイルに、完璧にマッチしている。その奥深さを、ジックリ堪能してほしい。なお国内盤CDは、2曲ライヴ・ヴァージョンをボーナス収録しています。

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ザ・ワークス【監修・解説:金澤寿和(Light Mellow)】
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Pヴァイン・レコード
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