don felder_the vault

元イーグルスのギタリストにして、かの<Hotel California>を書いたとされるドン・フェルダーのソロ4作目がリリース。再編イーグルスからのドタバタ解雇劇が2001年で、突然のソロ来日公演が2012年3月。その半年後、イーグルス解散期の83年作『AIRBORNE』以来29年ぶりの2ndソロ・アルバム『ROAD TO FOREVER』が出た。そして2016年に再来日。19年に3rdソロ『AMERICAN ROCK 'N' ROLL』を発表。それ以来6年ぶりのソロ4作目である。

12年にいきなりソロ・ライヴを観た時、ぶっちゃけ、新しいコトなんて何もやってないんだけど、イーグルス時代は脇を固める職人ギタリストというイメージだったから、フロントに立って一生懸命、でも屈託なく溌剌とイーグルス・ナンバーを歌うフェルダーを見て、何だかスゴく熱いモノを感じたのを覚えている。その後のアルバム2枚もそんな感じで、自分がフロントに立つタイプではないことを分かった上で、豪華ゲストを迎えながら、元イーグルスという看板に惑わされず、自分の身の丈に合ったド直球のウエストコースト・ロック・アルバムを作った。

この『THE VAULT』も、その流れを受け継ぐ豪放なアメリカン・ロック・チューン<Move On>で始まる。続いての<Free At Last>は少し翳りを孕んだコンテンポラリー・ドライヴ・チューン。そして<Hollywood Victim>はイーグルス『THE LONG RUN』にフィットしそうなミディアム・ナンバーで、ギター・ソロもまさにイーグルス風。でもアルバム全体を聴くと、少しニュアンスが違っていて。サブ・タイトルに『FIFTY YEARS OF MUSIC』とあるように、このアルバムは約50年間に書いた楽曲のデモを掘り起こし、使えそうなナンバーを再構成して新たにレコーディングしたモノなのだ。いま触れた楽曲も、<Move On>はイーグルス加入直後の74年に書いたもので、<Free At Last>が2024年の最新書き下ろし。良くも悪くも、そこに50年の時間差は感じない。<Hotel California>の原曲を書いたのがフェルダーといっても、曲を量産できるタイプのソングライターではないから、こういうカタチになってしまうのは仕方がないのかな…。

ただアルバムの中には、デモの作風にこだわったのか、妙に80年代を感じさせるトラックもいくつかあって、もう少し思い切ってアレンジすればもっと良くなるのに…、と思ってしまう。唯一、81年に提供した映画サントラ主題歌<Heavy Metal>を再録しているものの、コレもあまりアレンジ変わらずで、せっかくの機会なのに少々勿体無い。まぁ、そこも含めて実直なフェルダーらしいのだが…(苦笑) なお日本盤のみのボーナス・トラックとして、『ROAD TO FOREVER』<Over You>のアコースティック・ヴァージョンが入っている。

前作・前々作と違って豪華ゲストの参加はなく、TOTOのメンバー(スティーヴ・ルカサー、デヴィッド・ペイチ、ジョセフ・ウィリアムス、グレッグ・フィリンゲインズ)にネイザン・イースト、レニー・カストロ、マット&グレッグ・ビソネットといった面々が実務的サポート。<Let Me Down Easy>のみ、ニナ・ウインターという女性シンガーがリード・ヴォーカルを取る。フェルダーのギターがアチコチで活躍しているのは当然だが、しっとりバラード<Together Forever>のジョージ・ハリスン風スライドがちょっと意外で耳に残った。

大物ぶって型にハマり、結果的にライヴしかできない現行イーグルスに比べ、B級だけど心意気を感じさせるフェルダー。本家は放っておいても安泰だろうから、自分はどうしてもフィルダー贔屓になっちゃうな。

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The Vault - Fifty Years of Music
Don Felder
ワードレコーズ
2025-05-30

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