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最近、精力的なリリースを続けているオーストラリアのAOR〜メロディック・ロック系再発レーベル、MelodicRock Classicsから、AOR系シンガー・ソングタイター:ヴァン・スティーヴンソンの代表作2作が復刻。その輸入盤国内流通仕様の解説を書かせていただいた。輸入盤自体はすでに流通し始めているようだが、帯と筆者解説付きの国内盤仕様は30日発売なので、ココで改めてご紹介を。

ヴァン・スティーヴンソンは、81年に『CHINE GIRL』というアルバムでデビューし、“ひとりイーグルス” なんて呼び声が高かったAOR系シンガー・ソングライター。後に職業ライターとして多くのアーティストに楽曲提供し、とりわけポップ・カントリー・シーンで確固たる地位を築いたが、2001年に47歳で逝去してしまった。自身のソロ・アルバムは3枚のみ。しかしMelodicRock Classicsが熱量のある発掘作業を行ない、『CHINE GIRL』の拡大版、発掘音源CD2枚組がナンと2セット、世に出ている。そして今回、遅れていた84年2nd『RIGHTEOUS ANGER』と86年3rd『SUSPICIOUS HEART』が、約30年ぶりにCD復刻された。

『CHINE GIRL』と違って日本発売がなかったこの2作は、共にリチャード・ランディスのプロデュース。この人は長年ジュース・ニュートンとのコラボを続けたことで知られるが、AOR的にはピーター・アレンの83年作『NOT THE BOY NEXT DOOR』、ニールセン=ピアソンの『NIELSEN / PEARSON』『BLIND LUCK』をプロデュースしている。ヴァン・ヘイレン<Jump>やケニー・ロギンス<Footloose>、スティーヴ・ペリー<Oh Sherry>、それにヒューイ・ルイス&ザ・ニュースらの人気が急上昇していたこの時期、そういうポップ・ロックとAORの中間的なサウンドに人気があった。それを実践したのが、この『RIGHTEOUS ANGER』と『SUSPICIOUS HEART』と言える。

2作品の方向性も一貫していて、シンプルかつソリッドにシェイプアップされたハーフ・ビターなポップ・ロック。TOTOの流れを組むハードAOR系からは、更にもう一歩、メロディック・ロックに擦り寄った路線だ。ただし、そこは売れっ子になっていくソングライター。そのメロディは、抒情性の強い欧州メロディアス・ハードよりも大衆的で、それがFM乗りの良いドライな音像によって支えられる。カテゴリーは必要悪と唱えながらも、メロディック・ロックではなくてAORサイドに置いておきたいと思わされるのは、スタイルより楽曲ファーストだからだろう。

主要メンバーも2作共通で、ダン・ハフ (g)、アラン・パスクァ (kyd)、デニス・ベルフィールド (b)、マイク・ベアード(ds) の4人は不動。しかも『RIGHTEOUS ANGER』の裏ジャケでは、ヴァンとその4人が同じサングラスを掛け、まるでバンドのような佇まいでニラミを利かせている。そういう一体感を演出したかったのだ。加えてバック・ヴォーカルでビル・チャンプリン、トム・ケリー、『SUSPICIOUS HEART』にはトム・ケリーにトミー・ファンダーバーク、ウォーターズ姉弟が参加している。また後者にはアディショナル・ミュージシャンとして、マイケル・ランドウやワディ・ワクテルもの名も。

そして前者からは、<Modern Day Delilah>が84年4月に全米チャートにランクインし、最高22位をマーク。ヴァンのソロ活動最大のヒットになった。スリル溢れるこの曲は、TOTO系のハードAORが好きな方には、マストの1曲だ。続いて<What The Big Girls Do>も全米45位まで上昇。前年スタン・ブッシュに提供したエピローグ<All American Boy>は、Y&Tにカヴァーされてシングルに選ばれている。

対して『SUSPICIOUS HEART』は、ブライアン・アダムスを髣髴とさせるシングル曲<We're Doing Alright>でスタート。当時の流行を反映してだろう、<Make It Glamorous>とブロック・ウォシュが書いた<No Secrets>の2曲は、どちらも映画のサントラに提供した楽曲だ。全曲ヴァンがペンを取って共作していた前作とは違って、コチラではニールセン=ピアソンの片割れリード・ニールセンが4曲に関与。タイトル曲<Suspicious Heart>と<Desperate Hours>をヴァンと共作、冒頭の<We're Doing Alright>と< (We Should Be) Together Tonight>は単独で書き下ろした。<We're Doing Alright>はケニー・ロジャースも歌っている。前作踏襲曲では、<Dancing With Danger>がイイ出来。ダン・ハフとの共作<Fist Full Of Heat>は、もしかして後のジャイアントのプロトタイプになったのでは?と思える節も。

その一方でヴァンは、レストレス・ハートに接近。<Never Enough Night>をデイヴ・イニスらと共作し、<Confidentially Yours>をイニスから授かった。この曲の演奏のみ、カントリー系ミュージシャンがサポートしている。なので少々策を弄し過ぎた印象はあるのだが、それ以上にプロモ不足が祟ったかチャート・リアクションは乏しく、ヴァンのソロ・キャリアはココで閉じられてしまった。職業ソングライターへの転身はお見事だったが、01年47歳での旅立ちは残念至極。本当なら、もっと活躍できたのは間違いないな。



van stepehson_righteousTower Records で国内仕様盤を購入
van stephenson_suspiciousTower Records で国内仕様盤を購入