paul carrack_country side

英国きっての現役ブルー・アイド・ソウル・シンガー:ポール・キャラックの最新作は、キャリア初のカントリー・アルバム。コロナ禍にあって、ほとんど一人で作り上げた『ONE ON ONE』(21年)はともかく、その前後3作はドイツの名門:SWRビッグ・バンドとの共演作が続いていたので、その安定した内容とは裏腹に、もしかしてネタが切れたか!?、なんて要らぬ心配をしたりしていたけれど…。でもそんな懸念は他所に、ポールは「以前から作りたいと思っていた」というカントリー・アルバムに取り組んでいた。


日本でカントリーというと、決まって敬遠されてきた。でもテイラー・スウィフト効果か、最近はそうでもないらしい。もっとも自分より少し上の世代の洋楽ファン、70歳代に乗った洋楽ファンは、普通にカントリーを通ってきてるのよね。英国人のポールも、子供の頃にはチェット・アトキンスやハンク・ウィリアムス、エヴァリー・ブラザーズあたりを聴き漁っていたそうで、とりわけレイ・チャールズが大好きだったとか。日本じゃ、レイ・チャールズ=ソウル/R&Bという方程式だけれど、識者ならレイが素晴らしいカントリー・ソングを歌っていたことを御存知のはず。80年代にニック・ロウとバンドを組んでいた頃も、米国ツアーのバスの中では、いつもカントリーが鳴っていたそうだ。

そうはいっても、バンジョーやらペダル・スティール、ウォッシュボードなんかが賑やかに鳴り出したらどうしよう〜、なんてチョッピリ不安に思っていた筆者。でもさすがにそんなコトはなく…。むしろ、純朴かつオーガニックで、のほほ〜んとしたミディアム〜スロウ・ナンバーが多く、何にも考えずにリラックスしたい時にジャスト・フィット。それこそ、行き過ぎたシュガー・コーティングのバラードや、妙に気取ったジャズ・チューンなんかより、スンナリと何の違和感もなく耳に滑り込んできた。

収録曲には、マール・ハガード、ハンク・ウィリアムズ、レイ・チャールズあたりを除くと、日本ではあまりポピュラーではないカントリー・ヒット多め。でもその中に、ポール自身がクリス・ディフォード(スクイーズ)と共作した<In The Cold Light of Day>、ジム・キャパルディ/ピーター・ヴェイルと共作してイーグルスが取り上げた<Love Will Keep Us Alive>のリ・アレンジ版がある。

特に後者、イーグルス版はティモシー・シュミットのハイトーン・ヴォイスが印象だったが、このポールのカントリー・ヴァージョンは、ゆったり・まったり、イーグルスとはまた違ったハートフルな仕上がりで。以前にも書いたコトがあるけれど、この曲は本来、ポールとティモシー、ドン・フェルダー、ジム・キャパルディ、マックス・カールが組んだニュー・グループ用に書かれたもの。レコーディングは終わっていたらしいが、擦った揉んだするうちにイーグルス再編が決まり、そのまま棚上げになってしまったとされる。ポール自身、これまでに何度かレコーディングしてきたが、自分が知る限り、今回のヴァージョンが一番板についている気がするな。

聞く前とは打って変わって、今からVol.2 が楽しみになってきた。





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カントリー・サイド・オヴ・ポール・キャラック VOL.1(CD)
ポール・キャラック
ライス・レコード
2025-07-13

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