takanaka seychells

クルマで出かける所用アリで、久々に高中『SEYCHELLS』。76年に発表した1stソロ。サディスティック・ミカ・バンド突然の解散によって、フロント抜きで始動したサディスティックス(高中、高橋幸宏、後藤次利、今井裕)からの初作品でもあり、サディスティックスのアルバムより1年早く発売された。自分的には、ミカ・バンドは『黒船』からオンタイムで聴いていたが、高中ソロを購入したのは『TAKANAKA II』が初めてで、この『SEYCHELLS』は、最初は友人からレコードを借りて録音したカセットテープで聴いていた記憶がある。

ソロ・デビュー盤にして、高中のやりたいこと、曲作りの上手さ、トロピカル・クロスオーヴァー路線は早くもシッカリ打ち出されていて。高中自身が歌う曲があるのも、今からしたら意外なところ。でも井上陽水やTAN TAN(=大空はるみ)のコーラスをメチャクチャ効果的に織り交ぜているし、ストリングスの涼やかな鳴りも的確。まだ若かった高中が、これらを全部アレンジして仕切ったとは思えないんだけど、そこは陽水の後ろ盾である星勝あたりがアドヴァイスしていたのだろうか? こうしたリゾート路線を打ち出したのも、南佳孝とほぼ同時で、ユーミンや鈴木茂より少しだけ早かったようだ。

バックの基本フォーマットは、サディスティックス勢+斎藤ノブ、浜口茂外也、ジェイク・H・コンセプションといったところで、ドラムは林立夫。幸宏は作詞で貢献している。最初だからか、ミカ・バンドからの伝統とも言えるギャグ・センスは控えめだけど、それは次の『TAKANAKA II』で爆裂。あの凄まじい推進力に繋がった。その分、親しみやすいメロディ・センスがノーブルに表現されている。高中が参考にしていたであろうカルロス・サンタナの弟ホルヘ・サンタナ(元マロ)が、78年の初リーダー作で<Oh Tengo Suerte>をカヴァー(当時は<Seychelles>として演っていた)したのは、きっと高中を大いに喜ばせたに違いない。

…にしても、最近の海外発信による日本のフュージョン再評価。こうした現象自体は大いに歓迎しているけれど、どうも不可解な点が多くて。アルファ期のカシオペアと共に、高中のキティ時代がダントツ人気なのは分かる。でも一番人気が本作『SEYCHELLES』で、楽曲単位だとその<Oh Tengo Suerte>、それを追いかけるのが歌モノの<トーキョー・レギー>なのよね。従来だと<Ready To Fly>がトップで、<Blue Lagoon>が追いかける構図だけど、spotifyあたりの再生回数を見る限り、<Ready To Fly>はようやく上位10曲に入るかどうか。海外で絶大な人気を誇る初期ベスト『ALL OF ME』に未収の<Blue Lagoon>なんて、箸にも棒にも引っ掛からない。これは今の若いインバウンドの感性というより、単純に、AIのアルゴリズムによるオススメ曲に上がってこない、というコトなんだろう。

何れにせよ、ポップなギター・インストとして大人気の初期高中作品にあって、もっともナチュラル、かつしなやかで柔軟に作られているのが、この初作品『SEYCHELLES』。タイトル曲<Seychells>や大曲<Tropic Birds>を筆頭に、名曲揃いでライヴ定番曲が多いのは言うまでもない。けれどその一方で、極めて真っ当、ストレート。そこが他のアルバムにはないテイストなんだよなぁ。

そういや、自分が2001年に選曲・監修した和モノ〜シティポップ系コンピ ・シリーズ『Light Mellow 〜 City Breeze From East』のユニバーサル編にセレクトしたのも、『TAKANAKA II』からの<Sweet Agness>と、本作からの<サヨナラ…FUJIさん>。大橋純子や石川セリ、センチメンタル・シティ・ロマンスや林哲司と一緒に、高中やプリズムの楽曲を選んでいたのだから、シティポップからフュージョンへと拡散している昨今の流れを25年先取りしていたことになるか…。ま、逆に言えば、そこからずーっと進歩がないまま、とも言えるのだが…

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高中正義
Universal Music
2013-06-26

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