
約50年に及んだソロ・キャリアの最終作、スティーヴン・ビショップがそう銘打って世に出したアルバム『THIMK』が、ようやくCDの形で手元に。既に配信シングルが出たり、先行でサブスク解禁されたりで、作品内容は把握していたけれど、オジサンはやっぱりフィジカルで持ちたい。これがオリジナル・アルバムとしての最終作になるなら、尚更だ。ところがビッシュ自身は、このアルバムをどこかのレコード会社にライセンスするつもりはない、と早くから明言していて。それでも、自身のサイトでCD / LPを流通させる旨を明らかにしていたから、まぁ、そこで入手すればイイっか…と。
ところが、いざサイト経由でオーダーしようとしたら、CD自体は通常の価格なのに、日本からオーダーすると、送料が本体よりもはるかに高く設定されていて、合わせると倍以上の価格になる。もしLPを注文しようものなら、ちょっとした廃盤・レア盤がゲットできる価格に。もちろん事故保険込みの書留代金なのだろうけど、amazonのインポートならワンコイン程度だから、これには納得できず、即座にオーダー中断。ビッシュの自主盤の流通実績がある某ショップに相談し、何とか仕入れ交渉をまとめてもらった。
めちゃくちゃステキな曲を書くのに、当人はかなり気難しくて、奇人変人の誹りを免れないらしいビッシュ。ラスト・アルバムなのに、わざわざタイトルに『THIMK』(THINKのモジリ)と名付けちゃうヒネクレぶりもその一端だろう。ゼロ年代以降、極端な玉石混交のデモ・アルバムを連発したかと思えば、突如として極上のブラジリアン・アルバムを発表したりして、アーティストとしてのクオリティ・コントロールもままならない。それこそ、ちょっとした思いつきで、チャチャッとアルバムを作ってしまうようなヒト。ちゃんとアレンジャーを付ければ、とか、プロデューサーを立ててまとめてもらえば、もっともっと良くなるのに、なんて思ってしまう。シンガー・ソングライターとしてはある種の天才だけど、それ以外はまるでダメなタイプ。人を喰ったり困らせたりの変人ぶりは、きっと繊細さの裏返し、センシティヴな自分を守るための隠れ蓑だと思いたいんだけど…
で、このオリジナル最終作。73歳なので、まだ演れるんじゃ…、と思うが、持病である手の関節炎が進行しているため、納得できるモノを作れるウチに、というコトらしい。そんな渾身の作だから、当然デキは素晴らしく
でも豪華ゲストを迎えた割に、作りは極めてシンプルで、76年のデビュー作『CARELESS』を髣髴させるテイスト。それこそ弾き語りに最小限のリズム、コーラスが付いただけのフォーマットである。でも、そうかといって02年の弾き語りアルバム『YARDWORK』ほどのやっつけ感はなく、ビッシュの想いがタップリ注ぎ込まれているのがジワジワと伝わってくる。曲によっては、若干歌声が痩せてしまったと感じてしまうものの、それを補って余りある表現力がある。
先行配信されたスターター<Now That I've Hit The Big Time>は、70年代初頭に母親を想って書いた曲で、エリック・クラプトンとスティングが参加。2曲目<Only The Heart Within You>は、2nd『BISH』からのリメイクで、ビッシュが世に出るキッカケを作ったリア・カンケルとのデュエット。コーラスにはアート・ガーファンクルと友人ジェイムス・リー・スタンレーが参加している。当初この曲をカヴァーするつもりはなかったらしいが、昨年11月にリアが亡くなったことを受け、彼女自身がデモ録音していたヴァージョンから歌声を起こし、このデュエットに仕立てたらしい。
<The Money Girl>は80年作『RED CAB IN MANHATTAN』のアウトテイク。<Really Wanting You>は、しばしば一緒にツアーに出たりして良好な関係を築いているアメリカのジェリー・ベックリー&デューイ・バネルがコーラスに。やはりセルフ・カヴァーとなる<One More Night>は、マイケル・マクドナルド&デヴィッド・パックによる珠玉のハーモニーを添えたニュー・ヴァージョン。マイケルは鍵盤も弾いている。デヴィッド・ベノワのピアノをフィーチャーしたのは、哀しみの名曲<You Don't Need My Love>。映画『TOOTSIE(トッツィー)』主題歌で、ビッシュ代表曲のひとつ<It Might Me You>は、そのプロデューサーで作曲陣の一人(ビッシュは書いていない)であるデイヴ・グルーシンが奏でるピアノだけをバックに、心に沁みる歌を披露する。そして<Under The Rainbow>は、ビッシュには珍しい朗かなポップ・チューン。80年頃に同名映画のサントラに提供したらしいが、使われずに眠っていたそうだ。ここではクリストファー・クロスがギターで、ケニー・ロギンスとマリリン・マーティンがコーラスで参加している。
更にクロージングとして、ビッシュからのお別れメッセージが。ビッシュが喋っていると突然ノックの音が入り、奥様リズ(彼女に贈る曲も本作に)が「ゴミ出してきて、あなたが当番よ!」と。ま、何処の家も同じだな、と思いつつ、こういうユーモアを最後に挿し込んでくるあたりが、またビッシュらしくて…
そしてメッセージが終わると、親友ジミー・ウェッブがピアノで<On And On>を弾いてのエンディング。でも配信やサブスクはココまでだけど、CDやLPでは、このあと2曲のボーナス・トラックが入っていて、最後はシットリとした弾き語りでジ・エンド、となる。
今まで書いただけでも、ゲストはかなり豪華絢爛。だけど他にもグラハム・ナッシュ、ジャック・テンプチン、演奏陣にはスティーヴ・ガッド、リー・スクラー、ネイザン・イースト、グレッグ・フィリンゲインズ、スティーヴ・ポーカロ、ジェフ・ラーソン、ニック・コリンズ(フィル・コリンズの息子)など、ビッシュの仲間、友人たちが勢揃い。これを見事にまとめ上げたプロデューサーは、なんとスティーヴ・イートンの息子マーカス・イートンで、これまたビックリだ。彼はストーン・テンプル・パイロッツからロドリゴ・イ・オリヴェイラ、シール、デレク・トラックス、ニルス・ロフグレン、ボブ・ディランなど幅広い共演歴があり、とりわけ故デヴィッド・クロスビーに重用されてきた。このビッシュのラスト・スタジオ・アルバムも、彼のこれからのキャリアを支える一枚になるだろう。
でも、こういうアルバムの日本盤が出ない。それどころか、入手方法自体が極めて限られているのは至極残念。ただその一方で、最後となる渾身の一作をビジネスまみれにしたくない、という気持ちはよく分かる。音楽とは本来、そういう作り手のハートやスピリットを届けるもののはずだから。
めちゃくちゃステキな曲を書くのに、当人はかなり気難しくて、奇人変人の誹りを免れないらしいビッシュ。ラスト・アルバムなのに、わざわざタイトルに『THIMK』(THINKのモジリ)と名付けちゃうヒネクレぶりもその一端だろう。ゼロ年代以降、極端な玉石混交のデモ・アルバムを連発したかと思えば、突如として極上のブラジリアン・アルバムを発表したりして、アーティストとしてのクオリティ・コントロールもままならない。それこそ、ちょっとした思いつきで、チャチャッとアルバムを作ってしまうようなヒト。ちゃんとアレンジャーを付ければ、とか、プロデューサーを立ててまとめてもらえば、もっともっと良くなるのに、なんて思ってしまう。シンガー・ソングライターとしてはある種の天才だけど、それ以外はまるでダメなタイプ。人を喰ったり困らせたりの変人ぶりは、きっと繊細さの裏返し、センシティヴな自分を守るための隠れ蓑だと思いたいんだけど…

で、このオリジナル最終作。73歳なので、まだ演れるんじゃ…、と思うが、持病である手の関節炎が進行しているため、納得できるモノを作れるウチに、というコトらしい。そんな渾身の作だから、当然デキは素晴らしく
でも豪華ゲストを迎えた割に、作りは極めてシンプルで、76年のデビュー作『CARELESS』を髣髴させるテイスト。それこそ弾き語りに最小限のリズム、コーラスが付いただけのフォーマットである。でも、そうかといって02年の弾き語りアルバム『YARDWORK』ほどのやっつけ感はなく、ビッシュの想いがタップリ注ぎ込まれているのがジワジワと伝わってくる。曲によっては、若干歌声が痩せてしまったと感じてしまうものの、それを補って余りある表現力がある。先行配信されたスターター<Now That I've Hit The Big Time>は、70年代初頭に母親を想って書いた曲で、エリック・クラプトンとスティングが参加。2曲目<Only The Heart Within You>は、2nd『BISH』からのリメイクで、ビッシュが世に出るキッカケを作ったリア・カンケルとのデュエット。コーラスにはアート・ガーファンクルと友人ジェイムス・リー・スタンレーが参加している。当初この曲をカヴァーするつもりはなかったらしいが、昨年11月にリアが亡くなったことを受け、彼女自身がデモ録音していたヴァージョンから歌声を起こし、このデュエットに仕立てたらしい。
<The Money Girl>は80年作『RED CAB IN MANHATTAN』のアウトテイク。<Really Wanting You>は、しばしば一緒にツアーに出たりして良好な関係を築いているアメリカのジェリー・ベックリー&デューイ・バネルがコーラスに。やはりセルフ・カヴァーとなる<One More Night>は、マイケル・マクドナルド&デヴィッド・パックによる珠玉のハーモニーを添えたニュー・ヴァージョン。マイケルは鍵盤も弾いている。デヴィッド・ベノワのピアノをフィーチャーしたのは、哀しみの名曲<You Don't Need My Love>。映画『TOOTSIE(トッツィー)』主題歌で、ビッシュ代表曲のひとつ<It Might Me You>は、そのプロデューサーで作曲陣の一人(ビッシュは書いていない)であるデイヴ・グルーシンが奏でるピアノだけをバックに、心に沁みる歌を披露する。そして<Under The Rainbow>は、ビッシュには珍しい朗かなポップ・チューン。80年頃に同名映画のサントラに提供したらしいが、使われずに眠っていたそうだ。ここではクリストファー・クロスがギターで、ケニー・ロギンスとマリリン・マーティンがコーラスで参加している。
更にクロージングとして、ビッシュからのお別れメッセージが。ビッシュが喋っていると突然ノックの音が入り、奥様リズ(彼女に贈る曲も本作に)が「ゴミ出してきて、あなたが当番よ!」と。ま、何処の家も同じだな、と思いつつ、こういうユーモアを最後に挿し込んでくるあたりが、またビッシュらしくて…
そしてメッセージが終わると、親友ジミー・ウェッブがピアノで<On And On>を弾いてのエンディング。でも配信やサブスクはココまでだけど、CDやLPでは、このあと2曲のボーナス・トラックが入っていて、最後はシットリとした弾き語りでジ・エンド、となる。今まで書いただけでも、ゲストはかなり豪華絢爛。だけど他にもグラハム・ナッシュ、ジャック・テンプチン、演奏陣にはスティーヴ・ガッド、リー・スクラー、ネイザン・イースト、グレッグ・フィリンゲインズ、スティーヴ・ポーカロ、ジェフ・ラーソン、ニック・コリンズ(フィル・コリンズの息子)など、ビッシュの仲間、友人たちが勢揃い。これを見事にまとめ上げたプロデューサーは、なんとスティーヴ・イートンの息子マーカス・イートンで、これまたビックリだ。彼はストーン・テンプル・パイロッツからロドリゴ・イ・オリヴェイラ、シール、デレク・トラックス、ニルス・ロフグレン、ボブ・ディランなど幅広い共演歴があり、とりわけ故デヴィッド・クロスビーに重用されてきた。このビッシュのラスト・スタジオ・アルバムも、彼のこれからのキャリアを支える一枚になるだろう。
でも、こういうアルバムの日本盤が出ない。それどころか、入手方法自体が極めて限られているのは至極残念。ただその一方で、最後となる渾身の一作をビジネスまみれにしたくない、という気持ちはよく分かる。音楽とは本来、そういう作り手のハートやスピリットを届けるもののはずだから。
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まだチェックしてなかったんですが、そんな高いんですね。ビッシュ本人にもう少しファン目線が有ればなぁ、とぼやきたくなります。
ラストとは言いながら案外簡単に翻しそう。歓迎ですが。