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和久井光司さん責任編集『ビートルズ以後のモダン・ポップ完全版』。シッカリ読み込む時間が取れないので、目についた所からちょこちょこと拾い読みを重ねてきた。でもやっぱりこのシリーズ、面白いわ。ネットやSNSで目につく音楽記事のほとんどは、既成事実や意見の掘り返しや素人の感想文レヴェル。最近はレコード会社の元担当ディレクターによる著述本など、当時の現場からの興味深い話が出て来たりもしているけれど、ただノスタルジーに浸ったり、新たな裏話に興じるのではなく、そこから今に繋がる “音楽的鉱脈” を探り当てたいもの。この本には、そのモダン・ポップ的糸口が、アチコチに散らばっている。

そもそも、モダン・ポップといえば、その音楽性やイメージに拠って、洋楽の壱ジャンル or スタイルとして捉えるのが一般的。中でも英国流儀のヒネリの効いたポップスで、売れセンとはちょっと違った個性派を指す。そしてその “モダン” なセンスを活かす方法として、レコーディングの技術革新を武器にしていた。なのでシンセやプログラムが進化して、何でもできるようになってしまうと、リアリティを失ってしまう。そうした意味で、本書が取り上げた主要アーティストの近況までフォローしているのは、なかなか興味深く、しかもその現状が本質的なシンガー・ソングライターに向かったり、逆に最新テクノロジーに進んでいたり、はたまた趣味的活動に甘んじているなど、やはり時代との結び付きが大きかったジャンルなのだな、と再確認した。

当ブログの主軸であるAOR的観点で言うと、ホリーズ、ゾンビーズ(コリン・ブランストーン、ラス・バラード)、10cc、アラン・パーソンズ・プロジェクト、パイロット、シティ・ボーイ、スティーヴ・ハーレー、トッド・ラングレン等など、意外に多くの接点があるのだけれど、さすがにダイレクトではなく、間にワン・クッション挟んでいるのがミソと言えるか。82年に、アラン・パーソンズ<Eye In The Sky>がヒットして、「コレ、AORじゃね?」と周囲で言われ始めた時には違和感ビシバシだったけれど、当時の急速なAOR衰退ぶりを目の当たりにする中、広く大きく構えてみると、クリス・レインボーとかジョン・マイルズとか、関連人脈に相応の作品が少なくないコトに気づいた次第。ドクター・ストップでファイナル・ツアーを断念したジェフ・リンズ・ELOの現行バック・バンドも、米西海岸センス丸出しのビッグ・ホライゾン(詳細こちら)という別働隊を組んで、デビュー・アルバムを出したばかりだ。

今では この手のカリスマ的人気を誇るスパークスにしたって、L.A.録音した77年作『INTRODUCING...』のプロデュースを、ジミー・イエナーではなくデヴィッド・フォスターに依頼していたら、結構面白いモノができたと思うんだけどな。だって当時のフォスターは、アリス・クーパーやらホール&オーツ、チューブスなど、毒気のある人が得意だったんだから…。そういや、パイロットの<Magic>が、この7月から始まったフジテレビ系TVドラマ『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』の主題歌として流れているのも、最近のモダン・ポップ周辺では、かなりのブッ飛びネタ ヒットしてから、もう50年越えですからネ。

生成AIでチャチャッとヒット曲が作られかねない昨今だけど、この頃のモダン・ポップ勢のアイディアの豊富さ、発想の根源は、やはり人間ならではの感性だと。こうしたモノマネではない真のクリエイティヴティは、AIには無理だろう。

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