dunn huff

ダン・ハフの名前を自分の頭にインプットしたのは、確か、82年春に出たグレッグ・ギドリー『OVER THE LINE』が最初。デヴィッド・サンボーンやデヴィッド・ハンゲイトら著名ミュージシャンが並ぶ中、全編一人でギターを弾いていたのが彼だった。それからダン・シールズ、ルー・ロウルズ、ランディ・クロフォード、ロバータ・フラック&ピーボ・ブライソン、メリサ・マンチェスター、チャカ・カーンなどで彼の名を発見。85年には、デヴィッド・フォスターがケニー・ロジャースで、モーリス・ホワイトがバーブラ・ストライサンドで、彼を起用した。

ダンが頭角を現わす最初の場となったCCM(Contemporary Christian Music)、自分がそのジャンルを積極的に追いかけ始めたのも、ほぼ同じ頃。でもダンはもう出身バンドのホワイトハートから離れていて…。それでも先物買いのAORファンの間では、マイケル・ランドウに次ぐ “ポスト・スティーヴ・ルカサー” の2番手候補に彼の名が挙がっていたっけ。

そこからジョージ・ベンソン、ホイットニー・ヒューストン、パティ・ラベル、マドンナ、ニール・ダイアモンド、テンプテーションズ、コモドアーズ、マイケル・ジャクソン、ドナ・サマ―、ブライアン・フェリーなど、錚々たる顔ぶれに貢献。ホワイトスネイクの全米No.1ヒット<Here We Go Again>(87年)のプレイが語り草に。ブルージーな82年オリジナル・テイクから一転、FMでのエアプレイを意識したUSラジオ・ミックスのリメイク版ギター・ソロで大評判に取ったのだ。

おそらくこの経験と、80年代半ばに参加したヴァン・スティーヴンソン『RIGHTEOUS ANGER』『SUSPICIOUS HEART』でのソリッドなバンド・サウンドが、89年にデビューするジャイアント結成へとダンを駆り立てたのだろう。90年代中盤からはプロデューサーに転身、いきなりメガデスを手掛けた時には度肝を抜かれたものである。その後もボン・ジョヴィ、マイケル・ボルトン、ライオネル・リッチー、マイリー・サイラス、ケリー・クラークソン、リチャード・マークス、スティーヴン・タイラーや、ポップ・カントリー系のフェイス・ヒル、キース・アーバン、リアン・ライムス、キャリー・アンダーウッド、ラスカル・フラッツ、ケニー・ロジャース、ドリー・パートンまで。近年のハイライトはやはり、テイラー・スウィフトとのコラボレイトと言えるか。

そんなダン・ハフが、キャリア初のオフィシャル・ソロ作『WHEN WORDS AREN'T ENOUGH』を発表。“言葉で物足りなきゃ…”というタイトルから察せられるように、完全なロック・ギター・インスト作品で、ダン自身このアルバムを “70年代の音楽的ルーツへのラヴ・レター” と表現している。初のオフィシャル・ソロとしたのは、かつて『SOLO』と題されたギター名演集的コンピレーションがあったから。しかしコチラは、ダン自身がまったく関知しないところで勝手に組まれたモノだそうで、ダンはすっかりオカンムリ。このアルバムの国内流通仕様盤の解説でも、“言及はまかりならん。ひと言も触れてくれるな” というキツ〜イお達しが でも、そうは言っても、ダン・ハフ好きなら知っている人が多いと思うので、公式ではないココで、こうしてひっそりコッソリ触れている。ダンの気持ちは分かるけど、CDは現に出回ってしまっているのだから、公の場で自分の立場を表明した方がイイと思うんだけどなぁ。

まぁ、それはともかく、ジャイアント再結成盤『III』(01年)以来、ダンの歌声を聴くことができないので、これがインストなのはチョイと残念。でもメロディが印象的な曲が多く、歌はなくとも歌心はタップリ。プレイは徹頭徹尾ブルージーで、ハッタリも作為的ニュアンスもなく、ごくシンプルなバンド・サウンドにギターを乗せている。でも曲調そのものは、そこそこバラエティ感があり、フィドル奏者を迎えたプログレッシヴ・カントリー風の<Southern Synchronicity>、ストリングスを加えてスケール感を表した<Runaway Gypsy>など、とても興味深く。時折ジェフ・ベックやルカサーのソロ、あるいはTOTOっぽさが覗いたりもする。だから聴いていて楽しいし、プレイヤー目線ならもっと深く掘り下げられる。ギター・インストと言ってもスムーズ・ジャズではなく、より深淵で作品力のあるアルバムだ。これはやはり、ダンのプロデュース手腕の成せる業。単なるギター・プレイヤーでは終わらない、彼のミュージシャンとしてのトータルな魅力を静かにアピールしている。

ちなみにサポート陣はナッシュヴィル拠点のセッションマン。ベースのマーク・ヒルは、ダンの古巣ホワイトハート末期(90年代中盤)のメンバーだった。

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Tower Records で購入