
懐かしいのに新しい!?
パリを拠点に30年以上のキャリアを持つポップン・ソウルのシンガー、
エセル・リンジーの本格的ソロ・デビュー作は、
70年代シティ・ソウルとメロウ・ディスコティークのミックスに、
ほんのり80’sフレイヴァーをまぶしたブリリアントな出来栄え。
メイクにアフロ、スーツに幅広タイ、
そしてブラック・コンテンポラリーの言葉に反応しちゃう人は、
カクテル片手に全員集合で。
続々と注目のアーティストを輩出してくるフランスFavorite Recordingsからのニュー・カマーは、謎多き実力派シンガー・ソングライター/サウンド・クリエイター、エセル・リンジー。その本格的デビュー作となる『PRETTY CLOSE』は、70'sテイスト溢れるソウルフルでファンキーなアルバムだ。
2〜3歳の頃からスティーヴィ・ワンダー、ルーファス、ドナルド・フェイゲン、ジノ・ヴァネリ、ジョージ・デュークあたりをアイドルにしていて、初めて自分で手に入れたLPが、ビル・サマーズ&サマーズ・ヒート。そしてマイケル・ジャクソンに親しみながら、ラリー・カールトンやイエロージャケッツ、ボビー・コールドウェル、ビル・ラバウンティ、アル・ジャロウ、マイケル・フランクスを聴いていたという。こんなこまっしゃくれたガキには、そうそうお目に掛かれない。絶対音感があり、12歳頃から作曲をスタート。15歳からベースを弾き始め、ルイス・ジョンソンやマーカス・ミラーに感化された。93年にベテラン・プロデューサーに見出され、デビュー準備が進められたが、諸々あって実現せず…。ひとまず学業に戻りながら、ピアノ・バーや小さいソロ・ギグ、新人コンテストなどに明け暮れた。自主制作で数枚のソロ・アルバムを作るも、本人曰く、どれもデモ・レヴェルに留まったらしい。
それでもテン年代には少し風向きが変わり始め、2015年にスパークレスfeat.エセル・リンジー名義の〈So Good〉を発表。これは信頼のレーベル、英Expansionからリリースされた。翌16年には、フランスの多才なサウンド・クリエイター:ガエル・ベンヤミンのワンマン・プロジェクト:ガイスターとコラボレイト。リード・ヴォーカルを担当した〈Easy〉は『WITH ALL DUE RESPECT』に収録され、当【Light Mellow Searches】からも発売された。筆者もこの時初めてエセルの名を知ることになる。
今回の『PRETTY CLOSE』でエセルがやろうとしたのは、ソウル、ディスコ、ファンク、ポップ、ジャズ、AORと、自身が好きな音楽をそのまま反映させること。
「私は自分が最も愛するディスコ・ファンク・サウンドを集めた、いわば最初のポストカードのような作品を作りたかった。力強くシャープであたたかい。そこにイイ感じのモーグ(シンセサイザー)を入れて、オーガニックに仕上げたかったんです。スラッピングやポッピングも入れるけど、多過ぎないよう気をつけて。プロデューサーとはAORやブルー・アイド・ソウルに対する共通認識もあって、ロバート・バーンやブランドン・バーンズについてよく話をしました」
エセルのレパートリーには、もっとAOR寄りで、TOTOやシカゴ、ジェイ・グレイドン/デヴィッド・フォスター、ホール&オーツ、レイ・パーカーJr、ビリー・ジョエルっぽい楽曲もあるそうだが、今作はディスコ路線を狙ったため、敢えて使わなかったそう。なかなか勘所を押さえている人である。バックのミュージシャンはフランスの連中なので、よく知る名はないが、唯一エセルのキーボードをサポートするフローリアン・ペリシエは、“フランスのネッド・ドヒニー” との呼び声も高いアル・サニーのパートナー。なるほどねェ…。
当人にメール取材をしたところ、楽曲ごとに飛び出してきたレファレンスのアーティストは、当ブログのお客様なら思わずワクワクしてしまう名前ばかり。マイケル・ジャクソン、クインシー・ジョーンズ、スティーヴィー・ワンダー、アース・ウインド&ファイアー、ジョージ・デューク、パトリース・ラッシェン、ルーサー・ヴァンドロス、シック、ホイットニー・ヒューストン、エルトン・ジョン、マイケル・センベロ等などは、そのホンの一例だ。SNSでもデビュー前から音楽ファンたちと交流し、アーティストである前に、自ら一人の熱心な音楽ファンであることをアピールしている。その情熱、パッションの高さがハンパない。
CDにはボーナス・トラックとして、フィーチャリング・シンガーで参加したMatoの<George Pogy>を提供してくれた。このプロジェクトは<What You Won't Do For Love (風のシルエット)>や<Baby Come Back>といったAORの人気チューンをレゲエにして歌っていて、エセルのAORラヴァーとしての一端が垣間見える。
とにかく最初は動画を見て、この人の本気度をジックリ聴き取ってほしいところ。アルバムで一番メロウな<Together Again>をリード・シングルに持ってくるところも、やっぱり相当なキャリアと自信がなければできないコトだ。セルフ・プロデュース能力も高いのだろう。注目すべき、遅れて来た新人である。
《amazon》
《Tower Records でCD購入》
《Tower Records でLP購入》
2〜3歳の頃からスティーヴィ・ワンダー、ルーファス、ドナルド・フェイゲン、ジノ・ヴァネリ、ジョージ・デュークあたりをアイドルにしていて、初めて自分で手に入れたLPが、ビル・サマーズ&サマーズ・ヒート。そしてマイケル・ジャクソンに親しみながら、ラリー・カールトンやイエロージャケッツ、ボビー・コールドウェル、ビル・ラバウンティ、アル・ジャロウ、マイケル・フランクスを聴いていたという。こんなこまっしゃくれたガキには、そうそうお目に掛かれない。絶対音感があり、12歳頃から作曲をスタート。15歳からベースを弾き始め、ルイス・ジョンソンやマーカス・ミラーに感化された。93年にベテラン・プロデューサーに見出され、デビュー準備が進められたが、諸々あって実現せず…。ひとまず学業に戻りながら、ピアノ・バーや小さいソロ・ギグ、新人コンテストなどに明け暮れた。自主制作で数枚のソロ・アルバムを作るも、本人曰く、どれもデモ・レヴェルに留まったらしい。
それでもテン年代には少し風向きが変わり始め、2015年にスパークレスfeat.エセル・リンジー名義の〈So Good〉を発表。これは信頼のレーベル、英Expansionからリリースされた。翌16年には、フランスの多才なサウンド・クリエイター:ガエル・ベンヤミンのワンマン・プロジェクト:ガイスターとコラボレイト。リード・ヴォーカルを担当した〈Easy〉は『WITH ALL DUE RESPECT』に収録され、当【Light Mellow Searches】からも発売された。筆者もこの時初めてエセルの名を知ることになる。
今回の『PRETTY CLOSE』でエセルがやろうとしたのは、ソウル、ディスコ、ファンク、ポップ、ジャズ、AORと、自身が好きな音楽をそのまま反映させること。
「私は自分が最も愛するディスコ・ファンク・サウンドを集めた、いわば最初のポストカードのような作品を作りたかった。力強くシャープであたたかい。そこにイイ感じのモーグ(シンセサイザー)を入れて、オーガニックに仕上げたかったんです。スラッピングやポッピングも入れるけど、多過ぎないよう気をつけて。プロデューサーとはAORやブルー・アイド・ソウルに対する共通認識もあって、ロバート・バーンやブランドン・バーンズについてよく話をしました」
エセルのレパートリーには、もっとAOR寄りで、TOTOやシカゴ、ジェイ・グレイドン/デヴィッド・フォスター、ホール&オーツ、レイ・パーカーJr、ビリー・ジョエルっぽい楽曲もあるそうだが、今作はディスコ路線を狙ったため、敢えて使わなかったそう。なかなか勘所を押さえている人である。バックのミュージシャンはフランスの連中なので、よく知る名はないが、唯一エセルのキーボードをサポートするフローリアン・ペリシエは、“フランスのネッド・ドヒニー” との呼び声も高いアル・サニーのパートナー。なるほどねェ…。
当人にメール取材をしたところ、楽曲ごとに飛び出してきたレファレンスのアーティストは、当ブログのお客様なら思わずワクワクしてしまう名前ばかり。マイケル・ジャクソン、クインシー・ジョーンズ、スティーヴィー・ワンダー、アース・ウインド&ファイアー、ジョージ・デューク、パトリース・ラッシェン、ルーサー・ヴァンドロス、シック、ホイットニー・ヒューストン、エルトン・ジョン、マイケル・センベロ等などは、そのホンの一例だ。SNSでもデビュー前から音楽ファンたちと交流し、アーティストである前に、自ら一人の熱心な音楽ファンであることをアピールしている。その情熱、パッションの高さがハンパない。
CDにはボーナス・トラックとして、フィーチャリング・シンガーで参加したMatoの<George Pogy>を提供してくれた。このプロジェクトは<What You Won't Do For Love (風のシルエット)>や<Baby Come Back>といったAORの人気チューンをレゲエにして歌っていて、エセルのAORラヴァーとしての一端が垣間見える。
とにかく最初は動画を見て、この人の本気度をジックリ聴き取ってほしいところ。アルバムで一番メロウな<Together Again>をリード・シングルに持ってくるところも、やっぱり相当なキャリアと自信がなければできないコトだ。セルフ・プロデュース能力も高いのだろう。注目すべき、遅れて来た新人である。
《amazon》









































