buckigham nicks

フリートウッド・マック全盛期を支えたスティーヴィー・ニックスとリンジー・バッキンガムが、マック加入前の73年にデュオで発表した唯一のアルバム『BUCKINGHAM NICKS』。それが、リリースから50余年を経て、初めてアナログ・マスターテープからのリマスター復刻された。原盤提供はどうやらリンジー自身で、リイシューは信頼のRhinoから。CD、アナログ、配信、そしてカラー・ヴァイナルや高音質LPも、と、複数のパターンで送り出されている。

60年代末〜70年初めにかけて、ベイエリアの学生フォーク・ロック・バンドとしてローカル人気を博していたフリッツなるバンドで一緒になったリンジーとスティーヴィー。バンド解散後、既に恋仲になっていた2人はデュオとして活動し、ポリドールと契約。キース・オルセンのプロデュースで作ったのが、このアルバムである。

収録曲のほとんどは2人のオリジナル or 共作曲で、マック加入直後のアルバム『FLEETWOOD MAC(ファンタスティック・マック)』や『RUMOUR(噂)』での彼らの楽曲をネイキッドにした感覚。未完成ながらも方向性は既に定まっていて、リンジーのエキセントリックなギター・ワークも、スティーヴィーの個性的な歌声も存分に楽しめる。アレンジは全体的にまだ少し野暮ったいものの、マックで再演する<Crystal>のオリジナルも収録。マック加入のキッカケとなった<Frozen Love>(オルセンがミック・フリートウッドに聴かせた)や<Long Distance Winner>でのギター・ソロは尋常ではないし、<Don't Let Me Down Again>のリズムの組み立てなんて、この時点でもうマックそのもの。アコギのインスト<Stephanie>は、まるで『RUMOUR』の<Never Going Back Again>の元ネタみたいだし…。何より、幸せなカップルだった2人の、息のあったハーモニーが微笑ましい。

バックの演奏陣にはジム・ケルトナー /ロン・タット (ds),ワディ・ワクテル (g), ジェリー・シェフ (b), ホルヘ・カルデロン (perc) など。ジャケ写を撮ったのは、ワディのお兄さん:ジミー・ワクテル。

マックの大ブレイクと共に別れを迎え、その後リンジーはマックを出たり入ったり…。そのためバンドはデイヴ・メイスンを加入させたり、リック・ヴィトーやビリー・バーネットを入れたりと、迷走した時期があった。一方スティーヴィーはマックに留まりつつ、ソロでも大成功。日本では想像できないほどの、カリスマ的存在へと登り詰めていく。結果マックは実際は分裂状態に陥りながらも、看板スティーヴィーを切ることができず、17年にリンジーとクリスティン・マクヴィーの共演アルバムを発表(ミック・フリートウッドとジョン・マクヴィーが参加し、実質的マイナス・ワン状態)。それでも翌年のマック・ツアーに際して決断を迫られ、より溝が深かったリンジーを解雇。マイク・キャンベル(元トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ)とニール・フィンを後任に迎えている。

これによってリンジーとスティーヴィーは修復不可の関係に。「もうマック再結成はない」と言われた。しかし22年のクリスティン逝去前後から、徐々に修復へ向かっていたらしく…。かくしてこの9月に本作『BUCINGHAM NICKS』が初リイシュー。今月初めのリンジーの誕生日(76歳)には、スティーヴィーが「最高の誕生日になりますように!」とコメントを送ったそうだ。

丁寧なリマスター作業によって、音は見事にリフレッシュ。条件反射的に、オリジナルと聴き比べてしまった。そして、“ダイヤの原石” なのは変わらないものの、収録曲の粒が揃っていたことを改めて認識した次第。

ちなみに手元には、US盤のゲートフォールド/ダブル・ジャケとシングル・ジャケの2種類(レコード番号は同じ)のアナログがある。当時は日本盤は出なかったが、マック人気の爆発後に発売。CDは2017年に韓国Big Pinkの紙ジャケ盤が国内仕様で発売されたが、今となってはアレがイリーガルな盤起こしだったことがバレてしまった。大量のボーナス曲が入ってて、興味深かったんだけどなぁ…

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BUCKINGHAM NICKS (2025 REMASTER)
BUCKINGHAM NICKS
RHINO
2025-09-19

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