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試写会とライヴで大忙しの一日。なるべく多く執筆時間をキープするため、都心に出る時には複数の予定をこなすようスケジューリングしているが、車を止めようと算段していたエリアのパーキングがことごとく満車で、駐車場探しに四苦八苦。メトロひと駅分エリアをずらして、何とか試写会会場へ… そうしたら、近年再開発された高層オフィス・タウンの中にあるシアターで、今度は場所が全然分からない。初めてとはいえ、駅直結というから安心して来たのに、案内らしい案内は見当たらず、しばらく周辺をウロウロ。まさか、こんなヒト気のない通りにはないよな、と思って行った先に、ようやく発見。しかも最初は真ん前を通過しそうになる程、分かりにくい。実はディズニーが運営しているスペースで、試写会やファン・ミーティングなど、クローズドなイベント向けらしく。確かに内装も音響もメチャメチャ素晴らしかったが、余裕を持ってきたはずが上映時間を過ぎてしまい、アタマ数分、観られなかったよぉ… メディア向けの試写会は、11月中旬の一般公開まで何度もあるので、心当たりの方はお気をつけて。

さて、このブルース・スプリングスティーン『孤独のハイウェイ(Deliver Me From Nowhere)』は、彼の82年の問題作『NEBRASKA』の舞台裏を詳らかにするもの。2枚組大作『THE RIVER』の後続作でありながら、ドラスティックに方向転換し、ギターとハーモニカ、4トラックのカセット・レコーダーだけ作られた、ホーム・レコーディング・アルバムの草分けのような作品だ。

自分が熱心にスプリングスティーンを聴いていたのは、75年『BORN TO RUN』から87年『TUNNEL OF LOVE』くらいまで。特に80年代初頭は、AORやフュージョン、ブラック・コンテンポラリーにドップリの時期だった。だから突然の弾き語りアルバム『NEBRASKA』には戸惑ったし、暗くて好きになれなかった。彼のキャリアに於いてはとても重要で、作らずにはいられなかったアルバムという必然性は理解していたつもりだが、そもそも初期ディランが苦手な自分だから、その音楽的志向の違いは明白だった。

それでも映画を観ると、自分の過去と向かい合いながら独白的に生まれてきた『NEBRASKA』の楽曲たちは、あらかた覚えていて。内心じゃ自分の好みじゃないと感じつつ、一応は何度も聴き直して、自分との接点を探したのだな。もっとも当時のレコードの聴き方って、みんなそういうものだったけど。それがこのドキュメンタリーを通して、『NEBRASKA』への理解が深まったし、間もなくリリースされる『NEBRASKA 82 : Expanded Edition』への興味も強くなった。鑑賞前は “エレクトリック・ネブラスカ” が聴きたいだけだったけど、映画を観た今ならオリジナルの弾き語りも、以前とは違って聴こえる気がしている。ボス好きだけじゃなく、むしろ自分のような『NEBRASKA』敬遠派や、『NEBRASKA』をよく知らない音楽ファンにこそ、オススメしたい。

その後は少し時間調整して、コロナ禍以前からご無沙汰の南青山MANDALA、MIDNIGHT TUNES の東京お披露目ライヴへ。このユニットは、Neighbors ComplainのOTOこと木村音登と、大阪で活動するサックス奏者:関真哉によるスムーズ・ジャズ・プロジェクト。真哉=シンヤのMidnight、OTOからのTuneという命名で、名付け親はゴスペラーズの村上てつやだそう。サポート・メンバーはゴスペラーズのツアー・バンドから荻野”PEPU”哲史 (b)、ゴスペラーズに加えてMISIAや大黒摩季でも叩いている菅野知明 (ds)、そしてKIE (cho) という強力ラインナップ。スムーズ・ジャズなのでOTOのヴォーカルは少なめだが、TOTO<Georgie Porgy>やマーヴィン・ゲイ<What's Going On>(アレンジはダニー・ハサウェイ寄りで)、ゴスペラーズ<Get Me On>といったカヴァー曲にオリジナルを加え、何とも艶っぽいサウンドを創出していた。

スムーズ・ジャズというジャンルは、米国では少し前に一世を風靡したけど、インストに厳しい日本ではマーケットがなく…。2人と一緒に上京したプロデューサー氏もその辺は理解していて、「だからJ-POPとか日本の有名な曲をスムーズ・ジャズにアレンジして…」と話していた。最近の国内若手サックス・シーンって女性上位が続いているから、シンヤ君のような逸材は面白い存在になり得るかも。

それよりブッ飛んでしまったのは、1st Set最後にマイクを渡され、ジョセリン・ブラウン<Somebody Else's Guy>を熱唱したKIEちゃん。まだ学生で、渋谷の某ソウル系焼き鳥屋?でバイトしながら時々歌っているらしいが、華奢なボディからは思いもよらぬ爆裂パワー・ヴォーカルで しかも、ヴォーカル・スキルもさることながら、若いながら村上てつや氏(実はすぐ隣に座っていた)が認めるほどの知識を持っているそうで。ただ歌えるだけでなく、音楽/ソウル〜R&Bに向かうスタンスからして、並みのシンガーとは違う。きっと彼女、遠くない将来に頭角を現してくること間違いナシ。

いろいろ気ぜわしい一日だったけれど、足を運んでこその収穫がありました。



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2025-10-17

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