boz scaggs_detour

ボズ・スキャッグスの7年ぶりとなるニュー・アルバムは、お久しぶりのスタンダード・ジャズ作品。03年『BUT BEATIFUL』、08年『SPEAK LOW』と、これまでにもスタンダードにトライしたアルバムがあるから、特別目新しいモノではない。けれど『MEMPHIS』などでブルーズ回帰が3作続いたあとの、実に17年ぶり3作目のジャズ・アルバムなので、結構新鮮だ。最初のジャズ作『BUT BEATIFUL』は激シブだったが、今回は非常にリラックスしていて、聴きやすい。

でもスタンダード・ジャズ・アルバムと言っても、そこはボズ。選曲にはチョッとばかりヒネリが入っている。スターター<It's Raining>は、ニューオーリンズゆかりのR&B楽曲で、62年にアーマ・トーマスが歌ったもの。作曲のナオミ・ネヴィルは、実はアラン・トゥーサンが一時使っていたペンネームで、彼の母親の名前である。また今回のタイトル曲に相当する<Detour Ahead>は、ビル・エヴァンスで有名な悲恋のバラード。トミー・ドーシー楽団に在籍したジャズ・ヴァイオリン奏者ジョニー・フリーゴが、楽団の盟友たちと共作したとされ、サラ・ヴォーンとかエラ、スタン・ゲッツなども取り上げている。そしてボズの自作<I'll Be Long Gone>は、69年にアトランティックから出した本格的デビュー作にしてブルース・アルバム『BOZ SCAGGS(ボズ・スキャッグス&デュアン・オールマン)』に入っていた書き下ろし楽曲をジャズ・リメイク。こういうのを差し込むあたりが、とってもボズらしい。

そのほか、ナット・キング・コールやエラ・フィッツジェラルド、フランク・シナトラが歌った<Angel Eyes>、アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノヴァ名曲<Once I Loved>、直近でバーブラ・ストライサンドがボブ・ディランとデュエットしていた<The Very Thought of You(君を想いて)>、シナトラ版で人気の<I Could Have Told You>、マイルス・デイヴィスが有名にした<The Meaning Of The Blues>、エルヴィス・プレスリーやボブ・ディラン、パット・ブーンなどジャズ以外の多くのシンガーが愛でてきた<Tomorrow Night>、シナトラにビリー・ホリデイ、ルイ・アームストロング、トニー・ベネットらが歌い継いで来た<We'll Be Together Again>までの全11曲。

そうした時を超越した名曲たちを、ジャケにも名があるセス・アサーナウ (pf,b, arrange), ジェイソン・ルイス (ds), ジム・コックス (pf, syn-b) のトリオを基本に、極めてシンプルに歌い上げている。しかもボズはギターも持たずで。1曲入っているアコースティック・ギターは、前回の来日メンバーで今年初めに急逝したマイク・ミラーが弾いている。ただし日本盤では、ド定番中のド定番<Body And Soul>をボーナス・トラックとして新録。この曲のみ、ジム・コックスにピーター・アースキン (ds), ディーン・パークス (g), トレイ・ヘンリー (b) という陣容になっている。

AOR系シンガーでジャズ・スタンダードというと、真っ先にボビー・コールドウェルの名が挙がるが、ひたすらシナトラ流儀のビッグ・バンド・スタイルに邁進したボビーに対し、ボズはもっと自由で、ただ気持ち良く歌いたいというスタンスのよう。ならば聴き手の我々も、素直にその艶っぽい歌声に浸るのがスジだろう。

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