strapps_complete

70年代ブリティッシュ・ハード・ロック好きには、ちょいと胸熱な箱モノをご紹介。70年代後半に活動し、故・渋谷陽一が “ポスト・ディープ・パープル” なんて持ち上げていたストラップスのコンプリート音源集で、CD4枚に当時のアルバム4枚と発掘ライヴ音源、計5枚分を丸々収録。それぞれは簡易紙ジャケで、それをまとめてクラムシェル・ボックスに入れるという、最近やたら多いスタイル。この手のハコは、ほとんどのアルバムを持っていればスルーするのだが、ポツポツ未所持があったり、初CD化が混じっていたりするので、ポチるかどうかが悩みどころ。このストラップスもリアルタイムで聴いていたので、過去作のCDが出るとゲット、初期2作と発掘ライヴ盤は手持ちがある。でも3rdと4thはこれが世界初CD化。思わず誘われ、結局オーダーしてしまったわ。

ストラップスは、ヴォーカリストでソングライターでもあるロス・タッグら若いイケメン3人と、豊富なキャリアを持つドラマー:ミック・アンダーウッドの4人組として、75年に『貴婦人たちの午後 (STRAPPS)』でデビューした。上掲ボックスのジャケは、そのまま1stのアートワークの流用だが、これが実に倒錯したSMの世界。赤いスカーフで縛られている黒いハイヒールの足は男性だ。ボンテージ・ブーツの方は当然女王様なのだろう。その音もハード・ロックを内包したグラム・ロックで、モット・ザ・フープルやコックニー・レベル、シアトリルな構成力はクイーンやスパークスにも通じている。

ところが2nd『SECRET DAMAGE』で早くも方向転換。前作でもサウンドを特徴づけていたキーボードを武器に、思い切りハード・ロック路線に舵を切った。それが渋谷氏のコメントに繋がり、日本のロック・ファンの間で評判に。高校生だった自分も、若くてイキの良いハード・ロック・バンドを求めていた時期で、日本デビューしたてのジューダス・プリーストあたりと一緒に結構聴き込んだ。ミック・アンダーウッドは、クォーターマスという鍵盤トリオで名を上げたけれど、キャリア初期にはリッチー・ブラックモアといくつかバンドを共にし、第2期パープル参加前のイラン・ギランとロジャー・グローヴァーがいたエピソード・シックスでもドラムを叩いている。そしてストラップス1stも、そのロジャー・グローヴァーのプロデュース。デカダンなロス・タッグのヴォーカルは、ハイトーンでスクリームするハード・ロック・スタイルとはかけ離れていたものの、サウンドメイクが似てくるのは当然だった。

しかしその2ndは、パンクの波が押し寄せていた英国では、ほとんど無視され…。迷走したバンドは女性コーラス隊やホーン・セクションを入れ、R&B色の強いポップ・ロックに転じる。この3作目『PRISONER OF LOVE(愛のプリズナー)』には、前作のハード・ロック路線を継承した曲もいくつかあったが、一部はローリング・ストーンズやフェイセズあたりのテイスト、更にエレキ・シタールやヴィブラフォンを生かした楽曲も。おそらく米国マーケットを目指したのだろう。しかしこの作品は全然理解されず、前作人気が高かった日本のみの発売に止まってしまった。いま聴くと、そう悪い作品ではないが、前作イメージのまま入ってしまうと、支離滅裂な印象を拭えない。かくいう自分も当時はこの3rdにガッカリし、早々にレコードを売り飛ばした記憶が。筆者にとってのストラップスは、まさにココで終了した。

でもこの失敗はバンドにも堪えたようで、サウンドメイクの看板だったKyd奏者が脱退。新たにギタリストを迎え、ロス・タッグとのツイン・ギター体制を敷く。そして作られたのが、79年の4作目『BALL OF FIRE(炎の衝撃)』。コレはどうやら日本からの依頼で制作したらしく、リリースはまたしても日本のみ。なのに日本での失地回復さえままならず、バンドは解散。ミック・アンダーウッドは旧友のバンド:ギランに加入した。でもコレが、意外にとよくできたハード・ロック・アルバムで…。自分もずいぶん後になって、友人から「ストラップスを知ってるなら、最後の4枚目まで聴かんとイカン」と薦められた。でもそれっきり、ずーっとそのまま。このボックスで初めて聴いて、「ありゃあ〜、失礼しました…」と。かなり思い切ったハード・ロック回帰が為されていて、初期の勢いを取り戻している。リフ中心のハード・シャッフルやブギー調のトラックが多いから、時節柄、シン・リジーあたりのスタイルを狙っていたか。さすがに『SECRET DAMAGE』ほどのインパクトや、<Down To You>のようなキラー・トラックはないものの、曲のバラツキがあった『SECRET DAMAGE』に比べ、アルバムとしての方向が一貫していてブレがない。もしその2作目の後、すぐにコレが出ていたら、きっと日本での人気も盛り上がっていたに違いない。元々4人中3人のルックスは良かったんだから…。

disc 4の発掘ライヴは『SECRET DAMAGE』発表後の77年、ロンドンのレインボー・シアターでのライヴ。08年に蔵出しされたものなので、音質はまぁまぁながら、編集もミックスもなくてラフな仕上がり。でもその分、当時の彼らのライヴの迫力がストレートに伝わってきて熱い熱い。ロスの卓越したシンガーっぷり、そして何よりミック・アンダーウッドの適確なドラムがバンドの礎になっており、兄貴分の彼が若いメンバーに胸を貸していたグループ構造が浮かび上がる。路線が定まらず大成しなかったけれど、このまま歴史の狭間に埋もれさせてしまうのは、チョッと惜しいと思うんだな。

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STRAPPS ストラップス
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2025-11-05

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