tetsu yamauchi

早いもので、10月ももう終わり。11月1日は恒例【レコードの日】である。もっとも自分は、オリジナル・ヴァイナルを持っているアイテムは買わない、を原則にしているので、食指が動くものはほとんどなく…。オッ!と思うのは、カラー・ヴァイナルの色を変えての再プレスだったり、在庫処分の再エントリーがほとんど。アナログの製造ラインを持つメーカーが国内1社だった頃はともかく、現在は数社に増えているので、こういうイベントに乗る・乗らないを含め、各レコード会社の思惑も交錯している。LPの価格が上がったこともあり、新品レコード購入層の半分はインバウンド、若い人の多くはグッズ感覚でレコードを聴く環境がない、なんて状況も。個人的には、最近は国内イベントである【レコードの日】より、イベント限定で未発表ライヴやレア盤などが出る【Record Store Day】の方が、ソソられるタマが多いのが実情だ。

そんな中、目に留まったのが、日本のロック黎明期作品の復刻群。歴史ある日本コロムビア所有の音源から、ブルース・クリエイション、石間ヒデキ(フラワー・トラヴェリン・バンド)、瀬川洋、玉木宏樹などをグローバル・ブランド:NIPPONOPHONEからリイシューするもので、帯には英語のキャッチコピー、インナーの解説にもシッカリ英訳が付いている。作品としてはCD化済みで、すでに自分も持っているけれど、この時代の和製ロックやジャズは海外にマニアが多いから、半ばインバウンド向けの商品なのだろう。ロクに聴いてもらえないレコードをグッズ的に販売するのもビジネス的には大事だろうが、音楽好きとしては、こういう挑戦的なアプローチこそ応援したい。

そう思って取り上げるのが、この山内テツ『TETSU』。テツはミッキー・カーチス&サムライのメンバーとして海外で活動。その後<All Right Now>で知られるフリーに誘われ、アンディ・フレイザーの後任として加入し、エマーソン・レイク&パーマーをトリに迎えて行われたROCK EXPLOSION '72(@後楽園球場)にも出演した。しかしフリーは『HEARTBREAKER』を発表してすぐ解散。すると今度はフェイセズに請われ、ロッド・スチュワートやロン・ウッドと共演。日本武道館でのライヴにも参加した。自分が「こんな日本人ミュージシャンがいるんだ!」と知ったのも、このフェイセズ時代だった。

『TETSU』は、72年に録音・発表された山内テツ 1stソロ。フリー在籍中に一時帰国してレコーディングされ、つのだ☆ひろ (perc), サムライ時代からの友人:原田裕臣 (ds)、ザ・スパイダース〜PYGの大野克夫 (kyd) らが参加した。ヴォーカルのKENとは成田賢らしい。数曲で歌っている女性シンガー:エリノアは、当時ジンジャー・ベイカーズ・エアフォースの参加していた実力派で、テツが気に入って一緒に曲を書き、レコーディングに連れてきたようである。

サウンドはフリーやフェイセズのリズム隊らしいモノで、渋いロックン・ロールやファンク・スタイル、フォーク・ロックやブルース的な音から、レゲエへの挑戦も。この時期でレゲエを持ち込んでいるのは相当早く、さすがにロンドン仕込みと唸らされる。そしてそのベースは、華やかさこそないものの、肉厚でグルーヴィー。フレイザーほどの独創性はなくとも、グイグイとドラムを引っ張っていくノリの良さで、リズムの屋台骨を寡黙に支えるタイプ。なるほど、ポール・ロジャースやロッド・スチュワートのようなトップ・シンガーに呼ばれたのがよく分かる。

山内テツのリーダー作というと、ゲイリー・ホプキンス (vo) や桑名晴子、森園勝敏らを迎えたセッション・バンド:TETSU & THE GOOD TIMES ROLL BANDの印象が強いけれど、日本でフェイセズをやろうとしたのが明白なそれより、テツ自身の持ち味自体は 1stの方がよく伝わるな。

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