randy newman_trouble in paradise

今や、L.A.ドジャースの応援歌としてお馴染みの<I Love L.A.>を含む、ランディ・ニューマンの83年作『TROUBLE IN PARADISE』が、 CD2枚組のエキスパンデッド・エディションとして10月に復刻されている。ドジャース優勝の便乗を狙ったワケじゃないんだろうけど、まさにそんなタイミング。スタジアムに湧き上がる “I Love L.A.” “We Love it !” のコール&レスポンスは、MLBファンや音楽ファンはおろか、それを歌っているのが誰かさえ知らない一般ピープルにも、かなり浸透しているんじゃないか。

米国を代表するシンガー・ソングライターとして広く知られるランディー・ニューマンだけど、その歌の内容は時にひどく難解で、風刺やユーモアが満載。音楽的にもノスタルジックなアメリカン・ルーツ・ミュージックが随所に散りばめられ、ひと筋縄ではいかない。ジャケではアメ車のコンバーチブルと海辺をバックにニコヤカに笑ってるけど、タイトルは『TROUBLE IN PARADISE』なわけで。“寒くてシジメジメしたニューヨークなんてキライだ。シカゴはもうエキスモーに任せようぜ” と歌い始める<I Love L.A.>にしても、“窓を全開にして、トップを取って、ビーチ・ボーイズで騒ごうぜ。音楽を止めるなよ。行き着くトコまで行こうじゃないか。だって、いつだって太陽が降り注いでいて、みんながハッピーなんだから” と、ステレオ・タイプな西海岸のライフ・スタイルを揶揄している。“あの丘を見て。そこの樹々を見て。それからあそこで跪いてる浮浪者も。I Love L.A.(We Love it !)”

ランディのオリジナル・ソロ作としては通算7作目。78~78年にかけて、背の低い人を歌った<Short People>が全米2位のヒットになり、ラジオ各局で放送禁止になるなど喧々諤々の騒動に。…とはいえ次のアルバム『BORN AGAIN』(79年)でも皮肉とユーモアは健在。ヒットが出て少し精神的余裕が生まれたか、お遊びの要素も増えた。そこから『TROUBLE IN PARADISE』までの約3年半の間に、初の本格的サントラ『RAGTIME』を発表。その後も『TOY STORY』や『MONSTERS INC.』など、多くの映画に楽曲提供。後者のテーマ曲<You've Got a Friend in Me(君がいないと)>で、02年アカデミー歌曲賞を受賞している。これはナンと16回目のノミネートにして、ようやくの受賞だった。

プロデュースはワーナーの重鎮レニー・ワロンカーとラス・タイトルマン。演奏はジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ペイチ、スティーヴ・ルカサー、ネイザン・イースト、レニー・カストロという準TOTO勢に、ディーン・パークス、ニール・ラーセン、ワディ・ワクテル、ポウリーニョ・ダ・コスタ、ジェリー・ヘイ、アーニー・ワッツ、ジム・ホーンなど。確かに一連のランディ作品では、比較的AORテイストが漂う作品だけれど、ココはあくまでランディ楽曲にピッタリ寄り添う優秀なスタジオ・ミュージシャン集団としての招集。バック・メンバーの演奏に期待して聴くのは大間違い。強いて言えば、リッキー・リー・ジョーンズの初期作に近い演奏、と言えるかな。

それより気になるのはバック・シンガーたち。そもそもファースト・カットの<The Blues>からして、ポール・サイモンとのデュエットで、当時はちょっとした話題に。更にリンダ・ロンシュタット、ジェニファー・ウォーンズ、ウェンディ・ウォルドマン、ドン・ヘンリー、ボブ・シーガー、リンジー・バッキンガムとクリスティン・マクヴィーのフリートウッド・マック勢、レスリー・スミス&アーノ・ルーカスのクラッキン勢と、ワーナー人脈総ざらえ。あっ、リッキー・リーも参加してる。そんな豪華な一枚だった。

拡大版となったのは、オリジナル盤の最新リマスター12曲に、そのうち11曲分のピアノ・デモ音源+2曲の未発表曲をディスク1に。ディスク2には、フランスでプロモ・リリースされたスタジオ・ライヴ盤『UN SAMEDI EN DECEMBRE』をまるッと。元々はTV番組のオンエア用に収録した音源らしく、ピアノの弾き語りを中心にしつつ、曲によってフル・オーケストラが付くというゴージャスさ。こちらに入っているのは、<Sail Away>や<Short People>といった代表曲に<Ragtime>、そして『TROUBLE IN PARADISE』からは<Christmas In Capetown>。単純に言えば、収録が12月だったのでこの曲をセットに加えたのだろう。でもアパルトヘイト真っ只中だった南アフリカをテーマにしたこの曲を、当時は移民に最も寛容だったフランスで歌ったということに、何か別の意図があったのでは?と思えてしまうな。

2022年に首を手術して以降、表立った活動を控えていたらしいランディ。でも今年はジョン・バティステと1曲共演。ランディの自宅リヴィングで、レイ・チャールズの名演で知られる<Lonely Avenue>をピアノでライヴ・セッションした。かの暴君が、米国どころか世界を振り回してしまっている今、ブルース・スプリングスティーンやニール・ヤング、テイラー・スウィフトらと共に、ランディにも何かを期待せずにはいられない。けれど彼もこの11月28日で満82歳。本格的復活はなかなか難しそうだ。なので今はこの拡大エディションで、その存在を再確認したておきたい。

《amazon》
TROUBLE IN PARADISE (EXPANDED EDITION)
RANDY NEWMAN
RHINO
2025-10-17

《Tower Records はココから》

《amazon》
Trouble In Paradise [Analog]
Randy Newman
Rhino
2025-10-17

《Tower Records はココから》